笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第七章 冒険編 大戦争

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 「エジタスが蘇る……?」



 クイト一族との一件を終えた真緒は、急いで城へと戻った。感覚的には一時間だと思っていたのが、あちらとこちらの時間の流れは異なる為か、実際は八時間も経過していた。



 何処に行っていたのかと、安否を確認する仲間達。真緒はこれまでの出来事を事細かに説明した。殆どの者が信じられないという表情を浮かべた。



 「……その話、本当に信用出来るのか?」



 死者を甦らせる。あまりに突拍子も無い話にサタニア以外の人達は、未だに半信半疑であった。



 「信用出来る……とは言い切れませんが、信用に値すると言えます」



 「根拠は?」



 「亡くなって尚、伝えようとする強い意思。自分達の過去の過ちを晒してまで、一族の無念を晴らして欲しいと頼む覚悟。そして私自身の勘です」



 彼らが嘘を付いているとは、どうしても思えなかった。だからこそ真緒は、今まで戦いの中でも培ってきた己の勘を信じた。



 「そうか……なら、信じよう」



 「フォルスさん!?」



 あまりにあっさりと信じる発言をしたフォルスに、リーマが驚きの声を上げる。



 「あまりに軽率じゃありませんか? もっと情報を集めてからでも……」



 「そうしたいのは山々だが、あれからもう三日以上経過している。只でさえ、俺達は二手三手遅れているんだ。これ以上遅れれば、取り返しの付かない事になるだろう」



 「そ、それは……確かにそうですけど……」



 「リーマ、お前の心配は最もだ。だがそうやっていつまでも怯えていては、何も始まらない。今ここで行動に移すしか無いんだ」



 「……分かりました。私、覚悟を決めます!!」



 罠かもしれない。そんな不安を抱きつつも、フォルスとリーマは真緒の言葉を信じる事に決めた。その様子を見ながら頷く真緒。



 「ハナちゃんは?」



 「オラは始めがらマオぢゃんの事を信じでいるだよぉ」



 どうやら心配の必要すら無かった様だ。あまり疑う事を知らないハナコにとっては、ここまでの流れその物が無意味な物であった。



 「サタニアは……サタニア?」



 サタニアにも確認を入れようとするが、当の本人は俯きながら体をプルプルと震わせていた。



 「サタニア……?」



 「い……」



 「い?」



 「いやったぁあああああ!!!」



 突然大声を上げるサタニア。無邪気な笑みを浮かべ、跳び跳ねる程喜ぶその姿は、完全にアウェイだった。



 「あれ? 皆、どうしたの? 嬉しくないの?」



 自分だけ喜んでいる事に気が付き、思わず首を傾げるサタニア。嬉しくないのかと問われ、真緒達は困った様な表情を浮かべる。



 どうやらサタニアにとっては、話の信憑性よりもエジタスが蘇るかもしれないという事実の方に興味がある様だ。



 「いや……その……逆にサタニアは嬉しいの?」



 先程の反応を見るに、聞くのは野暮に思えるかもしれない。だがそれでも、真緒は聞かずにはいられなかった。同じ人物を愛した者同士。



 「うん、凄く嬉しい」



 即答だった。悩む素振りも一切見せなかった。そんなサタニアの反応に対して、自分は一瞬とはいえ悩んでしまった事に、何処か負い目を感じてしまった。



 「確かにエジタスのせいで大勢の人が不幸になったかもしれない。けどね、それと同じ位幸せになった人達だって沢山いるんだよ。僕もその一人……」



 「!!!」



 忘れてはならないのが、エジタスのお陰で幸福になった人達もいる。その代表的な例が真緒とサタニアの二人。エジタスがいなければ、今頃は惨めな人生を送っていただろう。



 「でも……それは……」



 そもそも二人が危険な目に合ったのは、エジタスが裏から根回ししたからだ。つまり完全なる自作自演。本当にエジタスのお陰で幸せになったのかと聞かれれば、一概にその通りだとは言えない。



 「マオだって本当は嬉しいんでしょ?」



 「……嬉しくないって言ったら嘘になる……でも、師匠が行って来た事は決して許される事じゃない……だけど私自身、師匠に助けられている……でもそれは全て芝居だった訳で……」



 「マオ?」



 「……分からないの……もう二度と会えないと思っていた人に、もう一度会う事が出来るのは嬉しい筈なのに……どうしてか、素直に喜ぶ事が出来ない……」



 胸に両手を乗せ、思い悩む真緒。顔も自然と俯いてしまう。一年前、騙されていたと知った後も、エジタスの事を愛していると誓った筈なのに、いざ蘇るかもしれないと分かると、何故か素直に喜ぶ事が出来ない。



 「……それで良いと思う」



 「え?」



 そんな真緒にサタニアが言葉を送る。その言葉にずっと俯いていた真緒は、顔を上げてサタニアを見つめる。



 「僕だってエジタスの全てが好きな訳じゃない。それでも大切な人にもう一度会えるかもしれないと思うと、やっぱり凄く嬉しい。でもマオの言う通り、本当に蘇っても良いのかと思う時もある。だからさ、今すぐ答えを出す必要無いんじゃないかな? まだエジタスが蘇った訳じゃ無いんだしさ」



 「サタニア……そうだね、私ちょっと悩み過ぎたのかもしれない。お陰で今やるべき事が見えたよ」



 「いや、元はと言えば僕が先走っちゃったせいだから……」



 真緒とサタニア。立場は違えども、愛する人に対する気持ちは同じである。するとフォルスが咳払いをし、話を元の流れに戻した。



 「それじゃあマオ、早速本題に入りたいんだが……ヘッラアーデは今何処にいる?」



 「場所はここから北に数百キロ離れた所、ある小さな村にいる」



 「小さな村だと?」



 大勢の人間が身を隠せる場所となれば、何処かの国や洞窟だと思われていたが、返って来た答えは“小さな村”だった。その事に疑問を浮かべるフォルス。



 「無論、只の村じゃない。そこは転移魔法によって空間その物がねじ曲げられていて、行く為には同じ転移魔法を扱うか、空間を切り裂く程の威力を放つしか無い」



 真緒が飲んだロストマジックアイテムの効果により、場所のみならず行く方法までの情報を手に入れていた。



 「成る程……だからいくら探しても見つからない訳か」



 「恐らくその村の空間をねじ曲げたのはエジタス。そしてヘッラアーデの大司教は同じ転移魔法を扱える。行く為の条件は揃っているという事だね」



 ヘッラアーデの大司教エイリス。彼女はエジタスと同じ転移魔法の使い手。その為、他の団員を連れて行くのは朝飯前であろう。



 「でも、何故エジタスさんはそんな場所を選んだんでしょうか?」



 「詳しい事は分からない。でも師匠の事だから、きっと意味があるんだと思う……」



 真緒が分かったのはあくまで、村の正確な場所と行く方法のみ。その村とエジタスにどういう繋がりがあるのか等は、全く得られなかった。



 「うーん……考えても埒が明かない!! 取り敢えず、その村に向かおうよ!!」



 「焦るな、行くにしたってそれなりの準備が必要だ。それに村に入る為に必要な、空間を切り裂く程の威力をいったいどうやって作り出すつもりだ?」



 「それについては私に考えが……取り敢えず各々準備が整い次第、急いで向かおう。恐らくあまり時間は残されていない……」



 最終局面。真緒達はヘッラアーデとの全面戦争に準備を整えるのであった。

































 名も無き村。民家は既にボロボロで、火でも放たれたのか、真っ黒に全焼していた。その上をヘッラアーデの団員達が容赦無く踏み荒らしていく。



 忙しなく動き回る彼らは、物資か何かを運び込んでいる様であった。そんな彼らに指示を送っているのは他でも無い“エイリス”本人だった。



 「全て運び終えたら第3支部と第6支部はA区画、第2支部と第4支部はB区画、第5支部と第7支部はC区画、残りはD区画に移動した後、警備に当たりなさい」



 それぞれの支部に的確な指示を送る。ある程度、指示を出し終えると村を今一度見回した。そして深い溜め息を漏らした。



 「まさか……“再び”この村を訪れる事になろうとはね……」



 そう呟くエイリスの瞳には、何の感情も宿ってはいなかった。
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