笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第八章 冒険編 血の繋がり

大進撃

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 「スキル“ロストブレイク!!”」



 真緒の放った強烈な一撃は、周りのヘッラアーデ団員を一気に吹き飛ばす。しかし直ぐ様、代わりの団員が補充される。



 本来ならキリが無いと口にする所だが、今回はそうでも無かった。何故なら襲い掛かる者達に覇気が全く感じられなかったからだ。



 数え切れない程の人数を相手に真緒達、サタニア達は各々が四方八方に分かれる事で全体的に数を減らそうと考えた。



 突然の襲撃に団員達はどうして良いか分からず、あたふたしている間に吹き飛ばされてしまう。その度に代わりの団員が前に歩み出て、取り敢えず武器を構えるが、扱い切れていないのか持ち手は震えていた。



 「今すぐ武器を捨てて下さい!! そうすれば命までは取りません!!」



 真緒も戦意の無い者達を切り伏せるのは本意では無かった。出来れば話し合いで、なるべく戦闘を避けたい所だった。



 「う、うるさい!! ヘッラアーデは惨めだった俺達にとって、唯一の心の拠り所なんだ!!」



 「生きる意味を見出だしてくれたヘッラアーデ……ここを失ったら、もう何処にも居場所が無いんだ!!」



 勝ち目の無い戦いに、尚も彼らを駆り立てるのは“依存”であった。仕事に疲れた、人間関係に疲れた、人生に疲れた。そんな偏ってしまった心のバランスを保つ為に、人々は安心を求めて頼れる存在に身を任せる。



 ヘッラアーデはそんな者達ばかりが集まった組織だった。最もそうした者達を中心的に集めさせたのは他でもない、エイリス本人の意思である。



 「心の拠り所って……生きる意味って……皆さん今のままで本当に良いと思っているんですか!? 命令に盲目的に従うだけなんて……そんなの生きているなんて言いません!!」



 「「っ!!」」



 何かに依存する者達は、それらが崩れ去らない様に必死になる。薬然り、ギャンブル然り、その日常を永遠と続かせようと無我夢中になる。しかし客観的に見ればそれは薬に……ギャンブルに……ヘッラアーデに動かされているだけなのでは無いのだろうか。



 そこに最早、自分自身の意思は存在しない。それを果たして“生きている”と言えるのか。勿論、本人が満足しているのならば話は別だ。



 しかし、目の前の団員達の反応を見る限り、どうやら違う様だ。少なくとも、本人達は何処か思う所があるらしい。



 「分かってる……所詮、俺達は捨て駒だって事は……だけど……」



 「あんた達の時間稼ぎ程度にしか思われていない事は……それでも……」



 だが、例え素直に“認めた”としても素直に“受け入れる”事は出来ない。気付いた時には、もう取り返しが付かない所まで足を踏み込んでしまっていた。後戻りしたくても出来ない。



 「……そう……ですね……ごめんなさい。身勝手な事を言ってしまって……皆さんだって好きで戦っている訳じゃないですよね……」



 「あっ、いや……俺達も少し強く言い過ぎっ……「でも、今の話と武器を手離す話は別ですね?」……!!?」



 団員達が気を緩めたその瞬間、真緒は剣で一気に切り伏せた。バタバタと倒れていく団員達だが息はしており、どうやら死んではいない様だ。



 「き、貴様……」



 「峰打ちなので安心して下さい。本当は話し合いの方が無駄な抵抗されない分、楽に行けるかなと思ったんですけど、こう長々と話されては意味がありません。なので切り伏せた方が早いと思い、やっちゃいました」



 「……ぐふっ」



 全員気絶したのを確認すると、真緒は急いでその場を離れ、中央の祭壇へと向かった。



 「おーい、マオ!!」



 「マオぢゃん!!」



 「マオさん、無事ですか!?」



 その道中、仲間三人と合流した。見た所、三人とも目立った外傷は無く、ピンピンしていた。



 「皆!! 皆こそ大丈夫だった?」



 「オラは大丈夫だよぉ」



 「見損なうなよ。これまでどれだけの修羅場を潜り抜けて来たと思ってる。この程度の相手、余裕だ」



 「いくら過激な宗教団体と言っても、まともな戦闘をした事が無い相手に負けたりなんかしません」



 「良かった。でも、ここからが本番だよ。気を引き締めて行こう」



 「「「おぅ!!」」」



 団員達の戦いを退けた真緒達は、四人揃って中央の祭壇へと向かう。



 「所で魔王達の方は大丈夫なのか?」



 「サタニア? 心配しなくても、大丈夫だよ」







***







 真緒達が祭壇に向かっている中、サタニアは団員達に周囲を取り囲まれていた。しかしこちらも突然の襲撃に未だ困惑しているのか、中々手を出せずに様子を伺うだけに留まっていた。



 「……ん? お、おい、こいつもしかして“魔王”じゃないか!?」



 すると団員の一人がサタニアの顔をじっと見つめ、魔王である事に気が付いた。



 その事実を知った団員達は、信じられない様な表情を浮かべる。そして口々に『魔族の長がどうしてこんな所に』と疑問を投げ掛ける。



 「そんなの決まってるよ。エジタスに会いに来たんだよ」



 「か、神に!!? つまりあなたは我々の同士という事ですか!!」



 「おぉ、何とも心強い。今現在、大罪人である勇者一味が乗り込んで来ているのです。どうか力を貸して頂きたい」



 「うーん、それは無理かな」



 「な、何故ですか!?」



 「だってマオとは友達だし……それに……」



 その瞬間、団員の体が膨張し、破裂した。



 「な、何だ!? 何が起こった!!?」



 「と、突然爆発したぞ!!? 何がどうなってるんだ!!?」



 「エジタスに会うのに君達は邪魔だよ……」



 魔力譲渡。膨大なMPを保有するサタニアだからこそ出来る荒業。団員を睨み付け、過度なMPを勝手に譲渡する。容量がオーバーした団員はやがて膨張し、全身が破裂する。



 次々と破裂していく仲間達を目の前に、他の団員達は恐怖で震え上がる。腰が抜け、立ち上がれなくなってしまった団員も必死に足を引きずりながら、その場を離れようとする。



 「がはっ!!!」



 「?」



 するとそんな団員の背中に剣を突き刺し、息の根を止めた者がいた。それは……。



 「敵を目の前にして逃げ出すとは……軟弱者が……恥を知れ」



 ヘッラアーデ幹部の“ロージェ”だった。現れたロージェにサタニアは驚く処か、少し笑みを浮かべていた。



 「殺しちゃっても良いの? 一応、仲間なんでしょ?」



 「こんな奴ら、仲間なんて思った事は一度もありま……無い」



 「そっか……それで? これからどうするつもり?」



 「決まっているだろう……戦う」



 そう言いながらロージェは、団員の背中から剣を引き抜き、サタニアの方に構える。対してサタニアはそれに応える様に、ティルスレイブを構えた。



 「手加減しな……するなよ」



 「……行くよ!!」



 サタニアの声と同時に、二人の剣がぶつかり合い、周囲に強烈な衝撃波を生み出す。少しでも近づこうとすれば、バラバラになってしまうだろう。







***







 サタニアとロージェが激しい戦闘を繰り広げる中、中央の祭壇へと向かっていた真緒達はある相手と対峙していた。



 「ジョージおじさん……マクラノおばさん……」



 誰であろう、かつて真緒の保護者であったジョージとマクラノの二人である。他の団員とは異なり、鎧では無くバーで働いていた時と同じタキシードとエプロン姿だった。



 その姿が余計に真緒を悲しい気持ちにさせる。あの楽しかった思い出が全て偽りだという事実を突き付けられる。



 「悪いけど、ここから先は一歩も行かせないよ」



 「ごめんねマオちゃん、これが私達の仕事なんだ」



 「どうしても通りたいと言うのなら、あたし達を殺すしか無いよ」



 「私は……私は……」



 一年という短い間だったが、親代わりとして愛情を注いでくれていた二人を殺す事など、本当に出来るのだろうか。
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