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第八章 冒険編 血の繋がり
真緒パーティー VS ノーフェイス(後編)
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「スキル“ロストブレイク”!!」
「…………」
真緒から放たれる強烈な一撃。ノーフェイスはそれを易々と持っていた刀で受け止める。
「フォルスさん!! 今です!!」
「こいつを食らいな!! “三連弓”!!」
真緒の掛け声と同時に、空中を飛んでいたフォルスが死角からノーフェイス目掛けて、三連続の矢を放った。
が、そんな攻撃も虚しく、ノーフェイスは迫り来る矢に一切目を向けず、使っていない左手だけでタイミングを合わせ、全ての矢を掴み取ってしまった。
「見ずに全部掴み取るって……人間業じゃないぞ……だが」
「えぇ、作戦通りです」
二人の目線は確かにノーフェイスへと向けられている。しかし肝心の意識は、それぞれ別の所に向けられていた。
真緒は、ノーフェイスから二時の方向にいるハナコ。そしてフォルスは、ノーフェイスから十一時の方向にいるリーマ。
二人の攻撃が上手く行った事を確認したハナコとリーマの二人は、それを合図に動き始めた。
「“ウォーターキャノン”!!」
最初に動いたのはリーマ。魔導書を開き、魔法を唱える。見る見る内にリーマの目の前で巨大な水の塊が生成される。そしてその巨大な水の塊を、ノーフェイス目掛けて勢い良く放った。
「…………」
死角からの攻撃、両手も塞がれている為、完璧に当たると思われた。しかし、ノーフェイスは地面を蹴り上げ、飛び上がると同時にあり得ない程、体を捻った。それにより放たれた巨大な水の塊は、ノーフェイスにギリギリ当たらず通り過ぎてしまった。
普通の人間であるならば、腰の骨を折っても可笑しくない動き。それを平然とやってのける事から、やはりノーフェイスは人間では無いのかもしれない。
「避けられましたか。でも、役目は確りと果たしましたよ」
避けられたのにも関わらず、全然悔しそうじゃないリーマ。それ処か、達成感に満ち溢れた表情を浮かべていた。
「…………」
巨大な水の塊を避けたノーフェイスは、放ったリーマの方に顔を向ける。
「おっと、そっちの方は行かせませんよ!! スキル“明鏡止水”」
「…………」
そんなノーフェイスの視線を遮る様に、真緒が間に立って割り込んだ。そして次の瞬間、時が止まった。真緒は静かに穏やかに剣を構え、動かないノーフェイスを斬り刻もうとする。
が、真緒の剣がノーフェイスの体に触れようとした瞬間、ノーフェイスは左腕でそれを弾いて見せた。
「“明鏡止水”が……破られた!!?」
これはさすがの真緒も驚きを隠せなかった。これまで明鏡止水の成功率は100%であり、失敗した事は一度も無かった。それが今回、初めて破られてしまったのだ。
「でもこれでハッキリした。やっぱりこいつは生き物じゃない!!」
しかしタダでは転ばない。自慢の攻撃が破られた事で、真緒はノーフェイスが生き物では無い事を確信した。
「どりゃあああああ!!!」
その直後、間髪入れずにノーフェイスの背後からハナコが攻撃を仕掛けようとしていた。更にハナコの右腕は既に鋼鉄に変化していた。
「…………」
するとノーフェイスは、自身の体を折り曲げた。比喩的な表現では無く、実際に折り曲げたのだ。自身の後頭部を自身の“尻”に付ける事で、ハナコの拳を空振りに終わらせた。
「今がチャンスだ!! 皆、一斉攻撃!!」
だがそれは逆に、チャンスとも捉える事が出来た。体を折り曲げた今のノーフェイスは、まともに動く事は出来ない筈。真緒の掛け声と共に、全員がノーフェイス目掛けて攻撃を仕掛ける。
「スキル“インパクト・ベア”!!」
「“炎の槍”!!」
「“ブースト”!!」
「スキル“ロストブレイク”!!」
四方向から放たれる渾身の一撃。ノーフェイスは直ぐ様折り曲げた体を元に戻し、避けようと試みる。
が、次の瞬間、まるで電流に打たれたかの様に痙攣し始める。
「これは!!?」
「避けようなんて野暮な事はさせないわよ」
「エレットさん!!」
そこにいたのはフェスタスとの戦いを終え、急いで駆け付けて来たエレットとゴルガの二人だった。真緒達の戦いの一部始終を見ていた二人は、ここぞというタイミングで助太刀しようと、ずっと狙っていたのだ。
「…………」
エレットの助太刀により、一瞬動きが遅れてしまったノーフェイス。遂に真緒達四人が放った一撃をまともに食らった。
爆音と共に土煙が舞い上がる。先に土煙から出て来たのは、ノーフェイスに直接攻撃を仕掛けた真緒とハナコの二人。
そして肝心のノーフェイスだが、一向に土煙から現れる様子は無かった。
「やっ……たのか?」
最早お約束とも言えるフラグ。次第に舞い上がっていた土煙が終息していく。その中には勿論ノーフェイスが立っていた。
「ちょっと!! 全然堪えてないじゃない!!」
「アレダケノコウゲキヲ、クラッテムキズトハ……ツヨイナ」
一度、真緒達と戦った事のあるゴルガは勿論、真緒達の強さをあまり知らないエレットでさえ、先程の攻撃を食らっても尚、立っている事に驚きを隠せない。
だがしかし、驚いている二人を他所に、真緒達四人は全く驚いている様子は無かった。それ処か、微かに笑みすら浮かべている様だった。
「いえ、作戦は成功しました」
「何だって?」
「私達の目的はノーフェイスを倒す事じゃありません。勿論、そのまま倒せれば最高ですが、本来の目的はノーフェイスが着ている鎧の破壊なんです」
「鎧の破壊?」
改めてよく見ると、確かにノーフェイスの着ている鎧に大きなヒビが入っていた。
「ノーフェイスは超人的な動きで、幾度も私達の攻撃を回避し続けていました。それこそ、生き物では再現不可能な動きで……だけどノーフェイス自体が超人でも、着ている鎧は別……」
「物理法則を無視した動きをし続ければし続ける程、奴の鎧には計り知れない圧が掛かる事になる」
「つまりわざと超人的な動きをさせる事で、偶発的に鎧を破壊しようとしていた訳です」
「じゃあ、さっきの同時攻撃も避けられる事が前提だった訳?」
「そう言う事です。でもエレットさんのお陰で命中し、鎧を破壊する決定打になりました。ありがとうございます」
「いやまぁ、役に立てて良かったわ」
「皆、見るだぁ!! 鎧が!!」
ハナコの叫び声に全員が反応し、ノーフェイスの方に視線を向ける。すると鎧に刻まれたヒビが、全体に広がり始めていた。
これまでの無茶な戦いが積み重なり、初めて入ったヒビを切っ掛けに、崩壊を始めたのだ。
「遂に分かるのか、ノーフェイスの姿が!!?」
「…………」
そして、ノーフェイスの鎧は見事に砕け散った。
「そ、そんな……嘘……」
それは信じられない光景だった。先程まで歓喜に満ちた真緒達の表情は一変。絶望と困惑に満ちた表情を浮かべていた。
思わず吐き気を催してしまう程の刺激臭。周囲を旋回する小さなコバエ。腐り落ちた目玉、中は空洞になっており闇が広がっていた。所々、骨が剥き出しになっており、白骨化が進んでいる証拠だった。生気の感じられない肉体はそう、紛れも無い“死体”であった。
ゾンビ……ではない。何故なら死体にまとわり付く様に黒い液体状の“何か”が、その死体を操っていたからである。そして真緒達はその黒い液体に見覚えがあった。忘れる筈が無い。それは一年前から、何度か戦った事のある存在。
「まさかあれは……“魔食”か?」
魔食。この世界における伝説的な怪物。魔力を主な食事とし、空気中に魔力が存在する限り、決して死ぬ事が無い不死身の存在。以前、ゴルド帝国に向かう際、ヴォイスがエイリスから授かった秘密兵器として真緒達の前に現れた。それとはまた別の種類の様だ。
「嘘……そんな……嘘……」
「マオ? どうした?」
皆が魔食の存在に驚いている一方、真緒だけは別の事に驚いている様子だった。
「あれは……あの人は……」
それは真緒にとって、忘れる事の出来ない人物であった。この世界に転移して来るよりずっと前、何度も顔を見掛けた。そしてこの世界に来てからも、何度も見掛け、時には剣を交えた。
その人物は真緒と同じ“勇者”と呼ばれていた。
「……聖一さん……」
如月聖一、もとい如月聖二。一年前、共に異世界から転移し、真緒の壁として何度も立ち塞がり、そして最後は安らかな最後を遂げた筈の男だった。
「…………」
真緒から放たれる強烈な一撃。ノーフェイスはそれを易々と持っていた刀で受け止める。
「フォルスさん!! 今です!!」
「こいつを食らいな!! “三連弓”!!」
真緒の掛け声と同時に、空中を飛んでいたフォルスが死角からノーフェイス目掛けて、三連続の矢を放った。
が、そんな攻撃も虚しく、ノーフェイスは迫り来る矢に一切目を向けず、使っていない左手だけでタイミングを合わせ、全ての矢を掴み取ってしまった。
「見ずに全部掴み取るって……人間業じゃないぞ……だが」
「えぇ、作戦通りです」
二人の目線は確かにノーフェイスへと向けられている。しかし肝心の意識は、それぞれ別の所に向けられていた。
真緒は、ノーフェイスから二時の方向にいるハナコ。そしてフォルスは、ノーフェイスから十一時の方向にいるリーマ。
二人の攻撃が上手く行った事を確認したハナコとリーマの二人は、それを合図に動き始めた。
「“ウォーターキャノン”!!」
最初に動いたのはリーマ。魔導書を開き、魔法を唱える。見る見る内にリーマの目の前で巨大な水の塊が生成される。そしてその巨大な水の塊を、ノーフェイス目掛けて勢い良く放った。
「…………」
死角からの攻撃、両手も塞がれている為、完璧に当たると思われた。しかし、ノーフェイスは地面を蹴り上げ、飛び上がると同時にあり得ない程、体を捻った。それにより放たれた巨大な水の塊は、ノーフェイスにギリギリ当たらず通り過ぎてしまった。
普通の人間であるならば、腰の骨を折っても可笑しくない動き。それを平然とやってのける事から、やはりノーフェイスは人間では無いのかもしれない。
「避けられましたか。でも、役目は確りと果たしましたよ」
避けられたのにも関わらず、全然悔しそうじゃないリーマ。それ処か、達成感に満ち溢れた表情を浮かべていた。
「…………」
巨大な水の塊を避けたノーフェイスは、放ったリーマの方に顔を向ける。
「おっと、そっちの方は行かせませんよ!! スキル“明鏡止水”」
「…………」
そんなノーフェイスの視線を遮る様に、真緒が間に立って割り込んだ。そして次の瞬間、時が止まった。真緒は静かに穏やかに剣を構え、動かないノーフェイスを斬り刻もうとする。
が、真緒の剣がノーフェイスの体に触れようとした瞬間、ノーフェイスは左腕でそれを弾いて見せた。
「“明鏡止水”が……破られた!!?」
これはさすがの真緒も驚きを隠せなかった。これまで明鏡止水の成功率は100%であり、失敗した事は一度も無かった。それが今回、初めて破られてしまったのだ。
「でもこれでハッキリした。やっぱりこいつは生き物じゃない!!」
しかしタダでは転ばない。自慢の攻撃が破られた事で、真緒はノーフェイスが生き物では無い事を確信した。
「どりゃあああああ!!!」
その直後、間髪入れずにノーフェイスの背後からハナコが攻撃を仕掛けようとしていた。更にハナコの右腕は既に鋼鉄に変化していた。
「…………」
するとノーフェイスは、自身の体を折り曲げた。比喩的な表現では無く、実際に折り曲げたのだ。自身の後頭部を自身の“尻”に付ける事で、ハナコの拳を空振りに終わらせた。
「今がチャンスだ!! 皆、一斉攻撃!!」
だがそれは逆に、チャンスとも捉える事が出来た。体を折り曲げた今のノーフェイスは、まともに動く事は出来ない筈。真緒の掛け声と共に、全員がノーフェイス目掛けて攻撃を仕掛ける。
「スキル“インパクト・ベア”!!」
「“炎の槍”!!」
「“ブースト”!!」
「スキル“ロストブレイク”!!」
四方向から放たれる渾身の一撃。ノーフェイスは直ぐ様折り曲げた体を元に戻し、避けようと試みる。
が、次の瞬間、まるで電流に打たれたかの様に痙攣し始める。
「これは!!?」
「避けようなんて野暮な事はさせないわよ」
「エレットさん!!」
そこにいたのはフェスタスとの戦いを終え、急いで駆け付けて来たエレットとゴルガの二人だった。真緒達の戦いの一部始終を見ていた二人は、ここぞというタイミングで助太刀しようと、ずっと狙っていたのだ。
「…………」
エレットの助太刀により、一瞬動きが遅れてしまったノーフェイス。遂に真緒達四人が放った一撃をまともに食らった。
爆音と共に土煙が舞い上がる。先に土煙から出て来たのは、ノーフェイスに直接攻撃を仕掛けた真緒とハナコの二人。
そして肝心のノーフェイスだが、一向に土煙から現れる様子は無かった。
「やっ……たのか?」
最早お約束とも言えるフラグ。次第に舞い上がっていた土煙が終息していく。その中には勿論ノーフェイスが立っていた。
「ちょっと!! 全然堪えてないじゃない!!」
「アレダケノコウゲキヲ、クラッテムキズトハ……ツヨイナ」
一度、真緒達と戦った事のあるゴルガは勿論、真緒達の強さをあまり知らないエレットでさえ、先程の攻撃を食らっても尚、立っている事に驚きを隠せない。
だがしかし、驚いている二人を他所に、真緒達四人は全く驚いている様子は無かった。それ処か、微かに笑みすら浮かべている様だった。
「いえ、作戦は成功しました」
「何だって?」
「私達の目的はノーフェイスを倒す事じゃありません。勿論、そのまま倒せれば最高ですが、本来の目的はノーフェイスが着ている鎧の破壊なんです」
「鎧の破壊?」
改めてよく見ると、確かにノーフェイスの着ている鎧に大きなヒビが入っていた。
「ノーフェイスは超人的な動きで、幾度も私達の攻撃を回避し続けていました。それこそ、生き物では再現不可能な動きで……だけどノーフェイス自体が超人でも、着ている鎧は別……」
「物理法則を無視した動きをし続ければし続ける程、奴の鎧には計り知れない圧が掛かる事になる」
「つまりわざと超人的な動きをさせる事で、偶発的に鎧を破壊しようとしていた訳です」
「じゃあ、さっきの同時攻撃も避けられる事が前提だった訳?」
「そう言う事です。でもエレットさんのお陰で命中し、鎧を破壊する決定打になりました。ありがとうございます」
「いやまぁ、役に立てて良かったわ」
「皆、見るだぁ!! 鎧が!!」
ハナコの叫び声に全員が反応し、ノーフェイスの方に視線を向ける。すると鎧に刻まれたヒビが、全体に広がり始めていた。
これまでの無茶な戦いが積み重なり、初めて入ったヒビを切っ掛けに、崩壊を始めたのだ。
「遂に分かるのか、ノーフェイスの姿が!!?」
「…………」
そして、ノーフェイスの鎧は見事に砕け散った。
「そ、そんな……嘘……」
それは信じられない光景だった。先程まで歓喜に満ちた真緒達の表情は一変。絶望と困惑に満ちた表情を浮かべていた。
思わず吐き気を催してしまう程の刺激臭。周囲を旋回する小さなコバエ。腐り落ちた目玉、中は空洞になっており闇が広がっていた。所々、骨が剥き出しになっており、白骨化が進んでいる証拠だった。生気の感じられない肉体はそう、紛れも無い“死体”であった。
ゾンビ……ではない。何故なら死体にまとわり付く様に黒い液体状の“何か”が、その死体を操っていたからである。そして真緒達はその黒い液体に見覚えがあった。忘れる筈が無い。それは一年前から、何度か戦った事のある存在。
「まさかあれは……“魔食”か?」
魔食。この世界における伝説的な怪物。魔力を主な食事とし、空気中に魔力が存在する限り、決して死ぬ事が無い不死身の存在。以前、ゴルド帝国に向かう際、ヴォイスがエイリスから授かった秘密兵器として真緒達の前に現れた。それとはまた別の種類の様だ。
「嘘……そんな……嘘……」
「マオ? どうした?」
皆が魔食の存在に驚いている一方、真緒だけは別の事に驚いている様子だった。
「あれは……あの人は……」
それは真緒にとって、忘れる事の出来ない人物であった。この世界に転移して来るよりずっと前、何度も顔を見掛けた。そしてこの世界に来てからも、何度も見掛け、時には剣を交えた。
その人物は真緒と同じ“勇者”と呼ばれていた。
「……聖一さん……」
如月聖一、もとい如月聖二。一年前、共に異世界から転移し、真緒の壁として何度も立ち塞がり、そして最後は安らかな最後を遂げた筈の男だった。
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