笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第九章 冒険編 蘇る英雄達

レーツェル山での再会

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 エジタスの屋敷。その中であまり使う事が想定されていない来客用の部屋。内装も簡素で机と椅子、ベッドの三つしか置かれていない。そんなベッドに横たわるマントン。



 「……」



 ゆっくりと目を開け、意識を覚醒させていく。そんなマントンの顔を覗き込むエジタス。



 「目が覚めましたか」



 「!!?」



 視界に突然、エジタスの仮面がドアップで映り込んだ為、マントンは慌ててベッドから起き上がる。



 「あぁ、そうか……俺は死んでたのか……」



 辺りを見回し、現在の状況を整理したマントンは片手で頭を抑え、最後の記憶を思い出し、自分が死んでいた事を悟った。



 「えぇ、二世さんから聞いた話によりますと、頭を吹き飛ばされたみたいですね~」



 視線を横に移すと、二代目魔王がこちらに手を振っていた。



 「見てたのか……」



 「エジタス君に頼まれていたからね。例え君が殺されたとしても、死者復活の紙で何度でも蘇れるけど、持っている特殊な武器はそうはいかないからね……はい」



 そう言うと二代目魔王は、マントンに回収した槍を手渡した。



 「今度は殺られない様にして下さい」



 「勿論だ……今度は油断しない」



 手渡された槍をぎゅっと握り締め、復讐を誓うマントン。



 「そうそう、実は八英雄に新しいメンバーが加入する事になったんですよ~」



 「新しいメンバー?」



 「入って良いですよ~」



 エジタスの合図と共に、部屋の扉が開かれる。そこから現れたのは、自身の死の元凶であるサタニアであった。



 「お、お前は!!?」



 「彼が新たな英雄の一人となる人物。“サタニア・クラウン・ヘラトス三世”です。サタニアさん、挨拶をお願いしますね~」



 「分かったよエジタス。会うのは二回目だよね。改めて自己紹介するけど、君には三代目魔王と言った方が分かりやすいかな?」



 「野郎、ぶっ殺してやる!!!」



 マントンが槍を片手に、サタニア目掛けて襲い掛かろうとしたその瞬間、視界が歪み始め、心なしか吐き気まで感じ、思わず床に両手を付いてしまった。



 「な、何だこれ……?」



 「あぁ、やっぱりこうなりましたか……」



 まるでこうなる事を予測していたエジタスは、マントンの視線に合わせ、その場にしゃがみこんだ。



 「いったい何がどうなってる!? 説明しろ!!」



 「いやね、この死者復活には殆どデメリットは存在しないんですけど……どうやら何回も復活させると、体に何らかの悪影響が出るみたいなんですね」



 「あ、悪影響だと……!?」



 「でも安心して下さい。そんなに酷い症状じゃありませんから。軽い目眩と吐き気に襲われる程度で、数日横になっていれば治っちゃいますよ」



 「それでも数日は動けないって事だろう!?」



 「まぁ……そうなりますかね……」



 「くそっ……その目障りな三代目魔王をぶっ殺したら、次はあの勇者達をぶっ殺す予定だったのに……」



 「こうなっては仕方ないですね。しばらく横になっていて下さい。私はお腹に優しい物でも作って来ますから」



 そう言うとエジタスは部屋から出ようと、サタニアの真横を通り過ぎる。その時、エジタスは小声でサタニアだけに聞こえる様、話し掛ける。



 「今の話……マオさん達に流したら……どうなるか分かっていますよね~?」



 「…………」



 そしてエジタスは、サタニアの返答を待たずに部屋を後にするのであった。



 「(何だろうこの感じ……以前会ったエジタスとは違う……何かが欠けている……気のせいかな)」



 「サタニア、もう行こう。他の英雄さん達にも挨拶をしないといけないからね」



 「う、うん……分かった……」



 再会を果たしたエジタスに違和感を覚えるサタニアだが、単なる杞憂だと思い、父親である二代目の後を追い掛け、部屋を後にする。



 「(マオ……皆……頑張って)」



 そして修行に打ち込んでいるであろう真緒達の事を、心の中で密かに応援するのであった。







***







 レーツェル山。それは魔族達にとって神聖な山。その昔、一人の魔族がこの山で山籠りをした。食べ物や水などは一切口にせず、只ひたすらに精神だけを統一させた。そんな生活が百年続いたある日、その魔族は大いなる力を手にした。



 その圧倒的な力で魔族達を従わせ、彼は一代にして魔族のトップに君臨する事となった。それからこのレーツェル山は、魔族にとって神聖な山とされ、力を欲する多くの魔族達の修行場とされてきた。



 しかしその過酷さ故に、殆どの魔族が途中で諦め、いつしか誰も寄り付かない場所となってしまった。



 そんな恐ろしくも神聖な山に今、真緒達は足を踏み入れていた。



 「はぁ……はぁ……疲れだだぁ……ぢょっど休憩ずるだぁ……」



 「あ、あたしも……疲れちゃった……もう一歩も歩けない……」



 そんな中、ハナコとエレットの二人は疲労からその場に座り込んでしまった。



 「ちょっと二人とも、まだ山に入ってから一時間も経ってないよ」



 「調べによると、この先に魔族達が開拓した専用の修行場があるらしい」



 「もう少しの辛抱です。頑張りましょう」



 「とは言ってもね……足がもう棒の様になっていて……動かせないのよ……」



 「オラの場合、足よりも……お腹が空いで……動げないだぁ」



 するとタイミングよく、ハナコのお腹からグゥーという音が聞こえて来た。



 「何が口にじないど……飢え死にじでじまうだぁ……」



 「そんな大袈裟な……」



 「というか、この山を登る前に街で食事したじゃないか。特にハナコ、お前なんか三十人前を頼んでいたよな!? どうしてそれで腹が減るんだ!?」



 「ハナコさんの食事のせいで、手持ちのお金が底を付いてしまいました。回復系のポーションを買う予定だったのに……」



 「うぅ……」



 ぐうの音も出ない。しかし、グゥーの音は出る。お腹が減ったから動けないという言い訳では、皆の納得は得られそうに無い。



 「エレットさんも、もう少しですから頑張って下さい」



 「もう少し、もう少しって……具体的にどれ位な訳?」



 「それは……分かりません……でもきっともうすぐ……」



 「根拠の無い説得は無意味!! もうあたしはここを一歩も動かないからね!! 例え、あんた達が置いてけぼりにしようとも、絶対に動かないから!!」



 「「「…………」」」



 頑なに動こうとしないエレット。三人は困り果てた様子で、どうするべきかと頭を悩ませる。



 「……うん?」



 その時、ハナコの鼻がひくひくと動いた。それは鼻が効く熊族であるのと、その中でも一二を争う程、ハナコが食いしん坊だからこそ嗅ぎ付ける事が出来た。



 もう動けないと言ったハナコだが、ふらふらと立ち上がり、真緒達を追い抜く。



 「ハナちゃん……?」



 「良い匂い……あっぢがら美味じい匂いがずるだぁ!!」



 そう言うとハナコは、今まで見た事が無い様なスピードで山を駆け上がって行く。



 「ハナちゃん、待って!!!」



 「一人で行くのは危険だ!!!」



 「ハナコさん、止まって下さい!!!」



 一人で猪突猛進するハナコの後を慌てて追い掛ける真緒達。



 「ちょ、ちょっと!!? 本当に置いてけぼりにするつもり!!? 待ちなさいよ!!!」



 一人取り残されてしまうと、慌てて立ち上がり、真緒達の後を追い掛けるエレット。







***







 「はぁ……はぁ……はぁ……」



 走り続けて数分。狭いでこぼこな山道から、人の手によって手入れされている開けた場所に出た一同。



 「ここは……?」



 地面はそれまでの土とは異なり、加工され形が均一となっている石が巨大な円上に敷き詰められていた。また、石のそれぞれには奇妙な模様が描かれていた。



 「太陽が……眩しい……」



 ここだけ木々が一切生えていない事から、太陽の光を直に受けていた。



 「ちょっと……待ちなさいよ……ひぃ……ふぅ……はぁ……」



 真緒達の到着に少し遅れて、エレットも到着を果たす。



 「そう言えば、ハナコさんは?」



 不思議な空間に気を取られ、ハナコを見失ってしまった真緒達。



 「……あっ、いた!!!」



 必死に辺りを見回していると、少し離れた場所で獣の肉を頬張っていた。



 「待て、側に誰かいるぞ!?」



 「えっ!?」



 フォルスの言う通り、ハナコの隣には見知らぬ女性がいた。美しく整った顔立ちに、まるで雪の様に真っ白なロングヘアーに、目はルビーの様に真っ赤だった。



 「ん? やっぱりお前達か。この食いしん坊が来たから、もしやと思っていたが……久し振りだな」



 そう言いながらまるで古い友人であるかの様な振る舞いをしながら、近付いて来る謎の女性。



 「止まれ!! いったいどういうつもりだか知らないが、俺達はお前の事など知らないぞ!!」



 「何を言って……あぁ、そっか。この“姿”を見るのは初めてだもんな。分からないのも無理はない。だったら……」



 すると突然、謎の女性の体が変化し始める。鼻と口が伸び始め、髪はどんどん短くなっていき、角が生えて来た。そして極めつけは、全身の皮膚が“鱗”へと変化し始めた。



 「ほら、この“姿”だったら見覚えがあるんじゃないか?」



 「お、お前は……まさか……!?」



 真緒達はその姿に見覚えがあった。一年前、敵として激しい戦闘を繰り広げ、最後は仲間としてエジタスに立ち向かった魔王軍四天王が一人にして、“黒白”の二つ名を持つ存在。その名を……。



 「「「“シーラ”!!!」」」



 「改めて、久し振りだな。元気にしてたか?」
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