笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第九章 冒険編 蘇る英雄達

魔王誕生

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 「魔王様だと? 嘘を付くな、貴様など一度も見た事無いわ」



 「お前の事じゃない!! 現魔王、三代目魔王様の事を言っているんだ!!」



 「三代目? そう言えば、エジタスがその様な事を言っていた様な……ふっ、まさかあの出来損ないの愚息が、跡取りを残しているとはな」



 自身の息子である二代目を愚息と評価し、鼻で笑って見せる魔王サタニア。



 「しかし蛙の子は蛙……例え偉大なる我の血を受け継いでいたとしても、あの非力で役立たずの血も受け継いでしまっているのだ。統率者としては、期待出来ないだろうな」



 「…………」



 魔王サタニアの言葉に対して、眉間にシワを寄せるシーラ。歯を強く噛んで、怒りを露にする。



 「お前が……お前がそんなんだから、子孫である魔王様が苦労しているんだ」



 「あ?」



 「力と恐怖で国を支配していたお前と比べて、魔王様は話し合いで国を治めようとしている。けど、お前の生前の行いが影響して、中々国民の信用を得られない……更に古参の連中には、魔王軍の恥晒しと馬鹿にされる始末……」



 「ふん、そんなの我の知った事ではない。全てはそいつの弱さが原因だ。強ければ、自然と信用は得られる。また強ければ、馬鹿にする者もいなくなる。強さこそが、己の存在価値を高めるのだ」



 「それは違う!! 強いだけじゃ、本当の意味で認められる事はない!! 私は知っている、本当の意味で認められる為には、優しい心も必要だという事を!!」



 「否、優しさなど上に立つ者にとっては不必要な物だ。奴らは直ぐに付け上がる。少しでも隙を見せれば、瞬く間に引きずり下ろされる。現にその魔王は、民衆を纏め上げられていないのだろう?」



 「ぐっ……」



 最もらしい事を口にしても、結局最後に物を言うのは結果である。初代魔王と三代目魔王の決定的な違い、それは下の者を従わせているかどうか。



 初代魔王は、その圧倒的な力と想像絶する恐怖で纏め上げた。一方、三代目は無闇に力を振りかざしたりはせずに、平和的なやり方で纏め上げようとしている。しかし、血の気の多い魔族達は素直に従おうとはしない。



 民衆を従わせた魔王と、従わせられない魔王。どちらが統率者として優秀なのかは、自明の理。シーラは何も言い返す事が出来なかった。



 「サタニアが……三代目魔王が目指しているのは、平和で幸せに満ちた国。だけどそうした理想的な国を作るのは、凄く時間が掛かる。あなたの様に力だけで手っ取り早く支配しても、国としては何の意味も無い!!」



 「マオ……」



 ここで真緒による援護。早さでは無く、どれだけ幸せな国として成立しているか。そうした意味では、初代魔王が治めていた時代、幸せには程遠かった。一方、三代目魔王である現代では幸せとは言い難いが、平和な国なのは間違い無かった。



 真緒の言う様に、国として成り立っているかどうかという点を見れば、三代目の方が国としては成り立っているのかもしれない。



 「平和で幸せに満ちた国か……そんなのに何の意味がある?」



 「何の意味がって……上に立つ者として下の幸せを考えるのは当然じゃないですか!?」



 「何故考える必要がある? そんなの、我だけが幸せであれば問題は無い」



 「!!! 本気で言っているんですか……!?」



 「まず貴様らは根底から間違えている。我が奴らを纏め上げたのではない。只、我のする事を邪魔する奴らを片っ端から捩じ伏せただけだ。そうすると奴らは、勝手に我をトップの座に座らせたのだ。だから奴らをどうしようが我の勝手。何故なら我を魔王にしたのは、奴ら民衆なのだからな」



 初代魔王の口から知らされる衝撃の事実。魔王という存在が生み出された原点が、こんな浅い物だったとは思いもしなかった。



 「さて……長話もそろそろ終いとしよう。我がここに赴いた理由、分かっているのだろう?」



 「「「「「「!!!」」」」」」



 その瞬間、魔王サタニアから強い殺気を感じ、真緒達は慌てて武器を構える。



 「“シャドウバインド”」



 「皆、自分の影に注意して!!」



 その忠告と同時に真緒達の影が動き出し、捕らえようとして来る。が、事前に注意していたお陰で、捕まる事無く回避する事が出来た。



 「ほぅ、この攻撃を初見で避けるとは……いや、もしかして見た事があったか?」



 「えぇ、あなたが“死体”として師匠……いえ、エジタスに操られていた時に一度味わった事があります」



 「“死体”だと? いったいどう言う……っ!!?」



 聞き返そうとしたその時、上空から矢が撃ち込まれる。咄嗟に気が付いた魔王サタニアは、片腕を振るって迫り来る矢を弾き飛ばす。そして矢が放たれた上空に顔を向けると、そこには弓矢を構えるフォルスの姿があった。



 「余所見は禁物だぞ」



 「鳥風情が……調子に乗る……っ!!?」



 「スキル“ヤマタノオロチ”」



 「スキル“獣王の一撃”」



 魔王サタニアが視線を上に向けたその瞬間、シーラとハナコが懐に潜り込み、渾身の一撃を叩き込んだ。



 「ぐふっ!!!」



 シーラから放たれる八回連続攻撃、そしてハナコは両手を縦に合わせ、まるで獣が牙を剥く様な構えで勢い良く突き出した。これにはさすがの魔王サタニアも後方へと吹き飛ばされ、仰向けになって倒れた。



 「二人供、凄い!! 特にハナちゃん、今のって新しい技だよね!!?」



 「オラだっでごの一ヶ月、だらだらど過ごじでいだ訳じゃないだぁ。ごの山に棲む獣達と供にずっど修行じでいだだぁ」



 「これはうかうかしてられないな。俺達も修行の成果を見せよう」



 「そうですね」



 一同がハナコの成長に驚きを隠せないでいると、倒れていた魔王サタニアがゆっくりと起き上がる。



 「久方ぶりだ……ダメージを負うのは、痛みを感じるのは……ふっ、ふははははは!!!」



 傷を負ったのにも関わらず、笑みを浮かべる魔王サタニア。その異様な光景に真緒達は不気味さを感じていた。



 「合格だ。ここからは我も本気で貴様らの相手をしてやろう。さぁ、掛かって来るが良い」



 そう言いながら両手を大きく広げ、真緒達を迎え撃とうとする魔王サタニア。



 「余裕ぶりやがって……後悔すると良い!!」



 「シーラさん!! 一人では危険ですよ!!」



 魔王サタニアの挑発に乗ったシーラは、単騎で突っ走る。真緒が制止するも、聞く耳を持たずそのまま突撃した。



 「この一撃で終わらせてやる!! スキル“バハムート”」



 シーラが放つ最上級の一撃。避ける様子は無い。このまま行けば、確実に当たる。が、しかし……。



 「“闇の壁”」



 「!!?」



 突如、魔王サタニアの目の前に真っ黒な壁が出現した。そしてそのままシーラの攻撃が壁にぶつかる。激しく火花を散らせるが、壁は傷一つ付かない。



 「そ、そんな馬鹿な!!? 私の最強の攻撃が!!?」



 「スキル“ヘルブラスト”」



 「っ!!!」



 魔王サタニアは拳を壁に向かって勢い良く突き出した。すると壁は脆くも崩れ去り、向かい側にいたシーラも一緒に吹き飛ばされた。



 「シーラさん、大丈夫ですか!!?」



 「他人の心配をしている場合か? スキル“死霊編成”」



 地面から呻き声が聞こえる。そして次の瞬間、地面から五体の死体が這い出して来る。更に死体それぞれには、鋭利な武器と強固な鎧と盾が装備されていた。



 「まぁ、こんな物か……」



 「これは……思った以上に不味いかもしれません」



 無事に修行を終えた真緒達だったが、早くも難所が待ち構えていた。真緒達の額から緊張の汗が流れる。
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