笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第九章 冒険編 蘇る英雄達

大いなる一撃

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 『スキル“ヘルブラスト”』



 「くっ……!!!」



 魔王サタニアから放たれる一撃は、目の前にいるシーラを捉える。が、咄嗟に槍でガードしていた為、軽傷で済んだ。



 「“ジャイアントフレイム”」



 「スキル“獣王の一撃”」



 その直後、リーマとハナコによる連携攻撃が魔王サタニアに叩き込まれる。炎の巨人が空中から叩き落とし、地上で待ち構えていたハナコが落下と同時にスキルを打ち込んだのだ。



 魔王サタニアはされるがまま。二人の攻撃を食らって、遠くへ吹き飛ばされる。本来なら骨の二、三本は折れているだろうが、まるで何事もなかったかの様にムクリと起き上がって来る。



 「これでも駄目ですか」



 「手強いだぁ……」



 「俺に任せろ」



 そう言うとフォルスは、その場で激しく回転し始める。すると瞬く間にフォルスを中心とした巨大な竜巻が生まれた。



 その竜巻状態のまま、フォルスは魔王サタニアに接近していく。そして放たれる矢が、死角から魔王サタニアに襲い掛かる。



 が、気にしていないのか、体に矢が何本突き刺さろうとも、お構いなしに突き進んで来る。



 「くそっ、痛みも感じないのか」



 そうこうしていると、魔王サタニアの口から信じられない程、綺麗な歌声が聞こえて来る。



 その瞬間、竜巻となっていたフォルスの動きが鈍くなり、遂には動けなくなってしまった。



 「こ、これは……あの時と同じ!!?」



 必死に体を動かそうとするが、羽の一枚も動かせない。動きが止まった事で竜巻は消え、地上へと落下していくフォルス。



 「フォルスさん!!」



 そんなフォルスをキャッチする真緒。



 「す、すまないな。何度もキャッチさせて……」



 「困った時はお互い様ですよ。それよりも、あの歌声は厄介ですね」



 「あぁ、恐らく耳から脳へ直接動きを封じる類いだろう。耳を塞げば、問題は無いと思うが、そうなると仲間達との連携が取りづらくなる」



 するとリーマが自信満々に発言する。



 「それなら私に任せて下さい!!」



 「何か策があるのか?」



 「はい!!」



 「……よし、じゃあ俺はもう一度、同じ戦法を取る。それでもし奴が同じ技を使って来たら、その時は頼んだぞ」



 「分かりました!!」



 「他の皆はリーマのバックアップを頼む」



 そう言うとフォルスは、再び空中へと舞い上がり、先程と同様に激しく回転し始める。やがてフォルスを中心とした竜巻が生まれ、そのまま魔王サタニア目掛けて突っ込んだ。



 相変わらず、魔王サタニアは死角から襲い掛かる矢に対して見向きもせず、突き進んで行く。そして再び、フォルスの動きを封じるべく、歌声を発した。



 「今だ!!」



 フォルスの合図と同時にリーマは鼻から大きく息を吸い込み、口から大音量の声を叫ぶ。



 「きゃあああああああああ!!!」



 耳をつんざく程の声量と衝撃波により、魔王サタニアから発せられる歌声は聞き取れなかった。



 更に衝撃波が魔王サタニアを吹き飛ばし、歌声を強制的に終了させた。



 「そっか!! リーマには音魔法があったんだ!!」



 「ごれなら、歌声を聞ぐ心配も無いだぁ!!」



 「さすがだな、リーマ!!」



 「えへへ……」



 仲間達に褒められて照れるリーマ。しかし、それでも起き上がる魔王サタニア。



 「ちょっと!! あんたいい加減しつこいのよ!! “スコールライトニング”!!」



 エレットは上空に右手の人差し指を向けた。すると魔王サタニア目掛けて雷がピンポイントで撃ち込まれる。



 が、当たる直前に魔王サタニアは両足に力を込め、跳んだ。それにより、エレットとの距離を一瞬で縮めた。



 「ちょ、嘘でしょ!?」



 「スキル“ヘルブラスト”」



 「させるか!! スキル“ワイバーン”!!」



 エレットが絶体絶命の瞬間、上空から翼を折り畳み、急降下するシーラ。魔王サタニアの拳とシーラの槍がぶつかり合い、周囲に衝撃波を生んだ。



 「ぐぅ!!!」



 側にいたエレットは吹き飛ばされ、周りにいた真緒達も容易に近付く事が出来なかった。



 シーラと魔王サタニアが激しくぶつかり合う一方、真緒達はどうすれば魔王サタニアを倒せるのか、考えていた。



 「相手はあくまでも虚像。痛みや出血が無い分、考える頭や感じる心は存在しない。つまり、死角からの攻撃には一切対応しない。俺の矢を一方的に受けたのがいい証拠だ」



 「問題はどうやって倒すか……」



 「私とハナコさんの一撃でも堪えましたからね」



 「それなんだけど……」



 そんな中、真緒が仲間達に耳打ちする。



 「本当に出来るのか? 下手したらお前が死んでしまうかもしれないんだぞ?」



 「大丈夫です。今の私……ううん、私達ならきっと出来ます」



 「……分かった、やろう」



 「全員、配置に着いて」



 真緒の指示の下、各々が動き出す。



 「シーラさん!! 少しの間、魔王の動きを取り押さえる事は出来ますか!?」



 「何だって!? 分かった!! 但し、一分が限界だからな!!」



 そう言うとシーラは槍を捨てた。そしてみるみる内に体が変化し始め、いつか見た完全なるドラゴンの姿へと変わった。



 「グォオオオオオオ!!!」



 シーラがその巨大な手で、魔王サタニアを上から押さえ付ける。しかし魔王サタニアは潰される事は無く、寧ろ押し返そうとしていた。



 「ぐっ……よし、取り押さえたぞ!! 早くしろ!!」



 「ありがとうございます!! 皆、作戦開始!!」



 「「「おぅ!!!」」」



 「フォルスさん、お願いします!!」



 「暴れるなよ!!」



 フォルスは、真緒の両肩を鉤爪で掴み、空中へと持ち上げる。



 「行くぞ!!」



 そう言うとフォルスは、真緒ごと激しく回転し始める。そして例によって、フォルスを中心とした竜巻が生まれる。



 「次、リーマ!!」



 するとフォルスは、矢の代わりに真緒を勢い良く放った。しかし放たれた方向は魔王サタニアとは逆方向。



 外したのかと思われた次の瞬間、飛ばされた先にはリーマが炎の巨人を生み出し、待ち構えていた。



 「行きますよ、マオさん!!」



 回転力が掛かっている真緒の威力を殺さず、その勢いのまま流れる様に投げ返した。更に炎の巨人が触れた事で、真緒の全身は炎に包まれた。



 そして魔王サタニア目掛けて突っ込んで行くその道中には、ハナコが“獣王の一撃”の構えで待っていた。



 「マオぢゃん!! 行ぐだよぉ!!」



 目の前を真緒が通り過ぎるその瞬間、ハナコは真緒の両足目掛けてスキル“獣王の一撃”を放った。



 フォルスの回転力、リーマの炎、そしてハナコの加速が重なり、真緒は尋常じゃない程、速くなった。



 「(うぅ……体がバラバラになりそう……で、でもこれなら……)」



 真緒は剣を前に突き出す。



 「今だシーラ!! 離れるんだ!!」



 「!!!」



 フォルスの言葉にシーラは慌てて翼を広げ、その場を離れた。一人取り残された魔王サタニアは、離れたシーラを追い掛けようとする。しかしその時、魔王サタニアに雷が撃ち込まれる。



 「逃がさないよ」



 雷に撃たれ、数秒動けなかった魔王サタニア。その数秒が運命を決めた。弾丸と化した真緒が目の前に迫って来ていた。



 「「「行けぇえええええ!!!」」」



 「はぁああああああ!!! スキル“グロースブレイク”!!!」



 真緒達の一撃が魔王サタニアを捉え、右腕と体の殆どを吹き飛ばした。勿論、血は一滴も出なかった。しかし、魔王サタニアは崩れる様に仰向けになって倒れた。



 「や、やった!! 倒した!! 倒したぞ!!」



 「マオぢゃん!! マオぢゃん、大丈夫だがぁ!?」



 「私なら大丈夫だよ……」



 ハナコの声に反応して、真緒が顔を見せる。全身が燃えていたせいか、少々黒くなっていた。



 「マオぢゃん!! 良がっだだぁ!!」



 真緒を強く抱き締めるハナコ。



 「やりましたね、マオさん」



 「さすがだな、マオ」



 「私だけの力じゃない。皆がいてくれたから、出来たんだよ」



 「全く……驚かせてくれるね。勇者様は」



 「シーラさん、ありがとうございます。シーラさんが取り押さえてくれたお陰で当てる事が出来ました」



 「礼ならそこにいるエレットにも言ってやりな。あいつがいなかったら、ギリギリで避けられていたよ」



 「エレットさん、ありがとうございます」



 「まぁ、当然よね」



 得意気に胸を張るエレット。皆が喜びを分かち合っている中、倒した筈の魔王サタニアがゆっくりと起き上がる。



 そして音を立てずに真緒達の背後まで迫って来る。



 「!!! マオ、危ない!!」



 直前でフォルスが気が付き、真緒に呼び掛けるも、時既に遅し。魔王サタニアが真緒目掛けて拳を放とうとする。



 「!!!」



 その時、不思議な事が起こった。拳を放とうとしていた魔王サタニアが前のめりに倒れたのだ。



 そして後頭部には謎の剣が突き刺さっていた。



 「こ、この剣はいったい?」



 そう、真緒が考えるよりも先に、辺りが真っ白に包まれる。そして意識が途切れるその瞬間、何処からか声が聞こえた。



 「頑張ったね」



 「……誰……なの?」



 こうして真緒達は、無事に最終試練を突破したのであった。
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