笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第十章 冒険編 反撃の狼煙

空を制するのは

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 「まさか生きていたとはな……」



 フェニクスは、突如目の前に現れたフォルスに驚きの表情を隠せなかった。自身の手でトドメを刺した筈の存在が、よもや生きていようとは想像もしていなかった。



 「あぁ、俺も終わったと思っていたんだがな。ある人に言われたんだ、“幸せな人生を送って”……と、だから俺は幸せな人生を送る為、あの世から蘇ったんだ!!」



 「ふっ、“死者復活の紙”も無しに蘇っただと? そんな奇跡……認めない!!」



 するとフェニクスは空高く舞い上がり、またも日の光を背にし、フォルス目掛けて矢を放つ。



 「おい、避けろ!! 武器の無い今のお前じゃ、歯が立たない!!」



 「いや、武器ならあるさ……」



 「え?」



 シーラの心配を他所に、フォルスは迫り来る矢に対して、自ら突っ込んで行く。



 「血迷ったか!?」



 「フォルス!!」



 「はぁあああああ!!!」



 放たれた矢が接触する刹那、フォルスは右足を軸に回転し、左足で矢を薙ぎ払った。すると次の瞬間、矢はフォルスの横を通り過ぎ、バラバラになった。



 「「!!?」」



 弾き落とされるのならまだしも、バラバラになったのは予想外だった。まるで鋭利な刃物で斬り付けたかの様な断面が付いていた。



 「貴様、武器を持っていないなどと言いながら、刃物を隠し持っていたのか」



 「いや、隠し持ってはいない。始めから“剥き出し”の状態だ」



 「剥き出しだと……まさか!?」



 フェニクスは目を疑った。フォルスの足に付いている鉤爪が、よく似たナイフに取り換えられていた。



 「そのナイフは……」



 「あぁ、オークが俺に遺してくれた物だ。お陰で俺は戦える……オーク、お前の敵……必ず取ってやるからな!!」



 「種さえ分かってしまえば、大した事無い。今度こそ、貴様を葬り去ってくれる!!」



 するとフェニクスは弓矢を使わず、フォルスとの距離を一気に詰めて来た。



 「何だと!!?」



 たじろぐフォルス。フェニクスは、自らの鉤爪で直接フォルス目掛けて襲い掛かって来た。対してフォルスも、鉤爪代わりのナイフで受け止める。



 「まさか我が弓矢による遠距離専門かと思ったか? 残念だが、我は接近戦も長けているのだ!!」



 「くっ、このままじゃ……」



 「これならどうだ!!!」



 フェニクスの猛攻に防戦一方のフォルス。その時、フェニクス目掛けてシーラが真横から攻撃を仕掛ける。が、翼を折り畳み急降下する事で、これを回避する。



 「すまない、助かった」



 「攻撃が当たらないんじゃ、意味ないよ」



 「心配するな。俺に良い考えがある」



 「それを待ってたよ」



 フォルスがシーラに作戦を伝えている一方、フェニクスは弓を構えて二人に狙いを定めていた。



 「呑気に話とは、随分と余裕だな!!」



 「「うぉ!!?」」



 放たれた矢は、間一髪の所で二人の間を通り過ぎた。フォルスがホッと胸を撫で下ろしていると、シーラが声を上げる。



 「油断するな!! フェニクスは、放った矢を自由自在に操る事が出来る!!」



 「何!!?」



 「もう遅い!!」



 するとフォルスの背後に、物理法則を無視した動きでUターンして来た矢が迫って来ていた。



 「ちぃ、退け!!!」



 「シーラ!!!」



 間に合わないと悟ったシーラは、フォルスを無理矢理弾き飛ばし、自らが犠牲となった。結果、矢はシーラの腕に突き刺さってしまう。



 「ぐっ!!!」



 「シーラ、大丈夫か!?」



 「大した事無いよ。それよりも、ささっと作戦開始するよ」



 「わ、分かった」



 そう言うとシーラとフォルスは、二手に分かれた。



 「挟み撃ちのつもりか? だとしたら、我を甘く見過ぎているぞ!! スキル“天の恵み”!!」



 するとフェニクスは矢を真上に空高く放った。矢が最高点まで辿り着いた次の瞬間、まるで静かな水面に石を投げ入れたかの様に、矢が大量に溢れ出し、波紋状に広がって地上目掛けて降り注ぐ。



 「奴め、力を隠していたのか!?」



 「どうする!?」



 「今更、作戦を変更する事は出来ない。このまま突っ込むぞ!!」



 降り注ぐ矢の雨を避けながら、フェニクス目掛けて突撃するシーラとフォルス。



 「浅はかだな。忘れたのか? 我は放った矢を操れるのだぞ」



 「「!!?」」



 その瞬間、降り注いでいた矢はまるで生き物の様に集まり、巨大なドラゴンと同じ形に纏まった。



 「死に絶えるが良い」



 巨大なドラゴンの形をした矢の集合体が、シーラとフォルスの二人目掛けて襲い掛かって来る。



 「このままじゃ、不味いぞ!!」



 「……えぇい!! こうなったら仕方ない!!」



 そう言うとシーラは一人、矢の集合体に立ち向かって行く。



 「おい、何をするつもりだ!!? 馬鹿な真似は止めるんだ!!」



 「煩いよ。このままじゃ、共倒れだ。そうなったら誰が屋敷内のあいつらを助けに行くって言うんだ!! そして悔しいけど、それはあんたの役目だよ!!」



 「シーラ……」



 「私の分まで、あの馬鹿道化師をぶっ飛ばしてくれよ!! “龍覚醒”!!」



 そしてシーラは腕だけで無く、全身をドラゴンへと変化させた。完全なドラゴンと化したシーラは、矢の集合体である偽ドラゴンとぶつかり合う。



 「ほら!! 私が食い止めている間に、ささっと片付けな!!」



 「すまない、恩に着る!!」



 「小癪な。返り討ちにしてくれるわ!!」



 間合いに入ったフォルスは、鉤爪代わりのナイフでフェニクスを攻撃する。対してフェニクスも自身の鉤爪で反撃する。



 ぶつかり合う鉤爪代わりのナイフと鉤爪。が、所詮はナイフ。猛禽類の鉤爪には敵わず、刃が欠けてしまう。



 「くそっ!!」



 「隙あり!!」



 「しまった!!」



 刃が欠けた事に動揺してしまったフォルス。その隙を突いて、フェニクスがフォルスを蹴り上げ、更に遠くへと吹き飛ばした。



 「がはぁ!!?」



 「フォルス!!! ぐぁ!!?」



 注意力が散漫になったシーラ。その一瞬の緩みにより、矢の集合体に飲み込まれてしまった。その様子を見ながら、一人優越感に浸るフェニクス。



 「中々、しぶとい奴らだったが、最後に笑うのは我なのだ!! ふふふ、はっはっはっはっは…………っ!!?」



 高笑いするフェニクスだったが、足に何か違和感を覚える。何気無く足下を見ると、鉤爪に黒い紐が絡み付いており、片方にはナイフが付いており、もう片方は上に伸びていた。



 「こ、これは!!?」



 「引っ掛かったな……」



 「何!!?」



 その先にいたのは、フォルスだった。黒い紐はフォルスの鉤爪部分から伸びていたのだ。



 「これは貴様の仕業か!!?」



 「このナイフは只の鉤爪代わりじゃない。万が一抜けても失くさない様に、オークが紐を付けてくれていたんだ。俺はそれを利用しただけだ」



 「くそっ、こんなの直ぐに外し……」



 「おっと、そうはさせないぜ!!」



 「なっ!!?」



 そう言うとフォルスは紐を引っ張り、外そうとするフェニクスを無理矢理動かした。



 「ぐっ、だったら貴様を先に葬り去ってやる!!」



 「やれる物ならやってみろ!!」



 フェニクスは弓を構え、フォルス目掛けて放とうとする。が、フォルスが紐を振り回す事でフェニクスの体が引っ張られ、正確に狙う事が出来なくなった。



 「はぁ……はぁ……それなら……直接葬り去ってやる!!」



 遠距離での攻撃が無理だと判断し、鉤爪による直接攻撃に変える。フォルスとの間合いを詰め、攻撃しようとする。



 「そう来ると思ったよ。でも忘れて無いか? この近くには“ドラゴン”がいるんだぜ?」



 「何だと!!?」



 怒りで視野が狭まり気付かなかった。フォルスの背後に佇む、巨大なドラゴンの存在を。



 「よう、待ってたぜ」



 「まさかあの矢を全て受けきったというのか!!? いったいどうやって!!?」



 「そりゃあ……気合いだよ」



 「ふ、ふざけるな!! そんな精神論が通用する訳が無いだろう!!」



 「事実なんだからしょうがない」



 「認めない……認めないぞ!! この世は全ては力……力が全てなんだ!!」



 そう言うとフェニクスは、フォルス目掛けて鉤爪で攻撃しようとする。そんなフェニクス目掛けて、シーラが巨大な拳を勢い良く突き出した。



 「例えどんなに強かろうが、当たらなければ関係……なっ!!?」



 急降下して避けようとするフェニクス。が、フォルスが紐を引っ張り、元の場所に無理矢理戻した。



 「おいおい、何処に行くつもりだ?」



 「き、貴様!!!」



 「悪いな。空の支配者の称号、返して貰うぜ」



 「くそぉおおおおおお!!!」



 自棄糞になったフェニクスは、フォルスに襲い掛かろうとするが、その前にシーラの拳がフェニクスを捉える。



 「げはぁ!!!」



 シーラに殴り飛ばされるフェニクス。そのまま地面に激突するかと思いきや、紐が巻き付いている為、限界まで伸びきった後、再びフォルス達の前に戻って来た。



 「お帰り」



 「一発だけで済むと思ってないよな?」



 「……あぁ……く……そっ……」



 定められた死の運命に、フェニクスは静かに嘆く。そして二発目の拳が叩き込まれる。こうして英雄フェニクスは、空の上で二度目の生涯を閉じるのであった。
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