笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第十章 冒険編 反撃の狼煙

マジックアイテムの真髄

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 「さぁ、我が孫よ。貴様の手で勇者を葬り去るのだ」



 「…………」



 初代魔王の命令を受け、サタニアは身動きの取れない真緒に向かって、ゆっくりと歩き始める。サタニアの目からは完全に光が消えていた。



 「サタニア、目を覚まして!! そんな首輪なんかに操られる程、サタニアは弱くないでしょ!?」



 「…………」



 「私は知ってるよ。サタニアが私達を助ける為に、わざとこの屋敷について行った事……だから私達、サタニアの想いに応えようと強くなったんだよ。今なら対等な関係で一緒に戦う事が出来る。お願い、戻って来て……」



 「…………」



 真緒が必死に呼び掛けるも、サタニアの歩みは止まらない。やがてサタニアの右手から、禍々しい黒い槍が生成される。



 「サタニア……お願い……戻って来て……」



 「…………」



 悲しさのあまり涙を流す真緒。すると突然、サタニアの足が止まる。



 「「!!?」」



 この予想外の出来事に、真緒は勿論初代魔王も驚きの表情を隠せなかった。そんな全く動かないサタニアに、初代魔王が強い口調で命令する。



 「何をしている!? さっさと息の根を止めろ!!」



 「…………」



 その命令に従い、足を動かそうとするが、まるで何かに引っ張られているかの様に動けずにいた。



 そこで漸く真緒と初代魔王の二人は、サタニアの足下を見下ろした。するとそこにはサタニアの足にすがり付く二代目魔王の姿があった。



 「貴様!!!」



 それを見た初代魔王は、二代目魔王の腹を蹴り飛ばし、サタニアの足から引き離した。が、二代目魔王は負けじと直ぐ様サタニアの足にすがり付いた。



 「この出来損ないが……そこまでして我に歯向かおうというのか!?」



 「はぁ……はぁ……あなたは魔王として失格だ……」



 「何だと!?」



 「自分の家族を道具の様に使って、自分は安全な場所で見物している。そんなの魔王として……上に立つ者として……終わっている!!」



 二代目魔王に図星を突かれ、少しだけ狼狽える初代魔王。



 「……だから何だと言うのだ? 魔王は唯一無二の存在なのだ。魔族達の頂点に立つ者として、決して敗北してはならない。なれば相手の実力を道具を使って確かめるのは、当たり前の事だ」



 が、まさかの開き直った。そこには、負ける事が許されない立場だからこそ、例え家族を犠牲にしたとしても勝利をもぎ取ろうとする意志が感じられた。



 すると反撃と言わんばかりに、初代魔王は二代目魔王を貶し始める。



 「そう言う貴様はどうなのだ? 我の亡き後、二代目魔王として魔族達の頂点に君臨して、何かしようとしたか? 魔族達の為に行動したか? 貴様がしたのは、魔王という立場を利用して世界中の物珍しいマジックアイテムをかき集めさせただけ……我が魔王失格なら、貴様は魔王失格……いや、魔族失格だ!!」



 そう言うと二代目魔王の腹を蹴り飛ばし、無理矢理サタニアの足から引き離した。そして二度とすがり付けぬ様、前に立ち塞がった。



 「ぐっ………」



 「所詮は出来損ない。マジックアイテムを使わなければ、まともに戦う事も出来ない情けない奴だ!!」



 「……ふっ……」



 蹴られた痛みに堪えながら、何とか立ち上がる二代目魔王。罵倒されているというのに、その表情は何故か柔らかかった。



 「何がおかしい!?」



 「確かに僕は魔王としても、魔族としても出来損ないかもしれない。確実にあなたよりも数段劣っているでしょう。だけどサタニアの父親として、家族としては、確実にあなたよりも数段勝っている!!」



 「それがどうした? 家族など、何の役にも立たない。魔王は常に一人なのだ!!」



 「家族の為なら、どんな無茶だって出来るんだ」



 そう言うと二代目魔王は、右手を高く上げる。すると遠くから何かが近付いて来る音が聞こえ、そして高く上げた右手に二代目魔王が放り投げていた“飛行する物体”が戻って来た。



 「あなたは言った。“マジックアイテムを使わなければ、まともに戦う事も出来ない情けない奴だ”……と、悔しいけどその通りだ。僕はマジックアイテムが無ければ、一般兵士にも負けてしまうだろう」



 「よく分かっているじゃないか」



 「だけどマジックアイテムを研究していた僕だからこそ、僕だけが知っている事実がある。それを使えば、あなたにだって負けない!!」



 「何だと!?」



 「見せてあげるよ!! マジックアイテムの真髄を!!」



 そう言うと二代目魔王は、持っていた“飛行する物体”を自身の体に取り込んだ。



 「マジックアイテムを取り込んだだと!?」



 「マジックアイテムは謂わば魔力の塊……それを体内に取り込む事が出来れば、強大な力が手に入れられる」



 「理論上ではそうかもしれないが、貴様も知っているだろう。全ての生物には決められた魔力量が存在すると。そのルールを破り、魔力を無理矢理増やそうとすれば体は破裂して絶命する!!」



 「(サタニアの“魔力譲渡”と同じ原理か……)」



 真緒が考察していると、二代目魔王の体が変わり始める。まるで取り込まれた魔力に対して、体が反発するかの様に、痩せ細っていた二代目魔王の体は、ドーピングを使用した人みたく、筋肉がはち切れんばかりに膨れ上がっていた。



 「それは他人の魔力を取り込んだ場合の話。けどマジックアイテムは独立した魔力。誰の魔力にも属さない。言い換えれば何色にも染まっていない白いキャンバス。つまり、一度取り込んで自分の色に染めてしまえば、魔力量に関係無く力を手に入れられるという訳さ」



 もうそこに、ひ弱な二代目魔王は存在しなかった。血管が浮き出る程の筋肉を手に入れ、身長や体重も以前とは比べ物にならない程、増加していた。



 「驚いたな……魔力が飛躍的にアップしている。だが、所詮は出来損ないの悪足掻き!! 我に楯突いた報いを受けるが良い!! スキル“ヘルブラスト”」



 初代魔王の真っ赤に燃えた拳が、二代目魔王目掛けて勢い良く突き出される。



 「ヘラトスさん!!」



 「…………なっ!!?」



 が、そんな初代魔王の一撃は二代目魔王の厚い胸板によって、意図も簡単に受け止められてしまった。



 「懐かしいですね。昔はよくあなたに殴られました。でも今度は僕が殴り返す番です。スキル“真・ヘルブラスト”」



 「!!!」



 二代目魔王から放たれる深紅に燃え上がる拳。まともに食らった初代魔王は、勢い良く吹き飛ばされ、部屋の壁に激突する。



 「ぐぼはぁ!!!」



 絶対的な支配者であった初代魔王が口から血を吐いた。自身がダメージを負った事実に、驚きを隠せなかった。



 「す、凄い……これがマジックアイテムの真髄……」



 その時、真緒の拘束が解かれ、自由の身となった。



 「こうなったら仕方無い。二人だけで、初代魔王である父を倒そう」



 「分かりました。私も全力でお手伝いします」



 そう言うと真緒は、ここで初めて二本目のブレイブソードを取り出し、二刀流で構えた。



 すると土煙が舞い上がっている壁の方から、初代魔王が姿を見せる。



 「ここまでコケにされたのは、エジタス以来だぞ。そんなに死に急ぎたいのなら、望み通り息の根を止めてやろう。“魔力解放”」



 「「!!!」」



 その瞬間、真緒と二代目魔王の二人は、初代魔王から膨大な魔力が溢れ出るのを感じた。



 「こ、これは!!?」



 「どうやら今まで魔力を抑えて戦っていたらしい……つまりあれが父の本気という事だ。マジックアイテムを取り込んだ僕よりも魔力が上だなんて……信じられない」



 「魔力を抑えていたって……いったいどうしてそんな事を!?」



 「貴様らの様な雑魚に本気を出す程、我は優しくはないからな。魔王として当然の配慮だ。さぁ、あの世で後悔するのだな。我に本気を出させてしまった事を……」



 一瞬、見出だされた希望が一気に絶望へと変わる。真緒と二代目魔王の負けられない戦いが幕を開けるのであった。
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