笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第十章 冒険編 反撃の狼煙

地獄から戻って来た男

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 カルド王が斧を振り上げると、その先端に風と雷が集まり始める。



 「“風雷神”!!」



 そのまま勢い良く振り下ろした次の瞬間、無数の風の刃と落雷が真緒達目掛けて襲い掛かって来た。



 「ここは私達に任せて下さい!!」



 するとハナコとリーマが率先して、真緒とサタニアの前に立ち、迫り来る風の刃と落雷を迎え打った。



 「“ウインドカッター”!!」



 「スキル“鋼鉄化”!!」



 迫り来る風の刃に対して、リーマは魔導書から生成した同じ風の刃で打ち消した。そして全身を鋼鉄に変化させたハナコは、人差し指を高く掲げる事によって、落雷を誘き寄せ、避雷針の役割を果たした。



 「良いじゃないか!! 最高だ!!」



 その直後、満面の笑みを浮かべるカルド王が二人との距離を一瞬で縮め、手に持った斧で斬り伏せようと振りかぶった。



 「スキル“ロストブレイク”!!」



 「マオぢゃん!!」



 「マオさん!!」



 それを真緒が受け止めるが、スキルを発動しているのにも関わらず、今にも力負けしそうになっていた。



 「ぐぐぐ…………」



 「良いぞ良いぞ、もっと俺を楽しませろ!!」



 するとその時、サタニアがこっそりと上空からカルド王目掛けて剣を振り下ろした。気付いた素振りは無かった。当たると誰もが思っていた。しかし……。



 「なっ!!?」



 何と背中の筋肉で、真剣白刃取りをやって見せた。慌てて引き抜こうとするサタニアだったが、まるで溶接されてしまったかの様に、受け止められた剣はびくともしなかった。



 「スキル“不動明王波”!!」



 「しまっ……!!」



 その瞬間、カルド王を中心に強大なエネルギーの爆発が起こった。サタニアと真緒は勿論、近くにいたハナコとリーマも一緒に吹き飛ばされた。



 「ぐがぁ……はぁ……はぁ……」



 「……あの攻撃がある限り、まともに近付く事さえ出来ない……」



 「それなら……魔法で遠くから攻撃するのみです!! “ウォーターキャノン”!!」



 リーマは魔導書を開き、巨大な水の塊を生成した。そしてカルド王目掛けて勢い良く放った。



 「まだです!! “ウインドカッター”!!」



 更に風の刃を生成し、事前に放った水の塊目掛けて放った。すると水は複数に分裂し、風属性魔法が加わった事で急激に水温が下がり、遂には氷に変化した。



 「リーマ、これって!?」



 「これが私の新しい魔法!! “コールドスプラッシュ”!!」



 無数の氷がまるで水飛沫の様に、カルド王目掛けて勢い良く飛び散った。



 「そして“ウォーターピラー”!!」



 その瞬間、カルド王の両脇と背後の三方向に太い水柱が出現した。



 「これで退路は塞ぎました!! さすがに全てを弾くのは不可能ですよ!!」



 例え何個か弾かれようとも、残った氷が必ずカルド王に突き刺さると考えていた。



 「…………」



 だが、何故かカルド王は弾き落とそうとも、ましてや避けようともしなかった。結果、リーマが放った氷全て、そのままカルド王の体に突き刺さった。



 「「「「!!?」」」」



 この予期せぬ行動に、真緒達は動揺を隠せなかった。するとカルド王は深い溜め息を漏らした。



 「違う違う違う……そうじゃない!!」



 カルド王が大声を上げた瞬間、退路を塞いでいた太い水柱が弾けた。



 「何故、そう合理化を図ろうとする!! 近距離が難しいから遠距離!? ふざけるな!! これは命を削り合う戦いなんだ!! 理性を捨てろ!! 恥じらいを捨てろ!! 足掻いて見せろ!!」



 穴だらけの体になりながらも、理想の戦いを追い求める。揺るぎない執念に、真緒達は思わずたじろぐ。



 そう思ったのも束の間、カルド王が圧倒的な速さで真緒達に迫り、斧を振り回す。



 咄嗟に真緒とサタニアの二人が剣で弾き返すが、直ぐ様攻撃し直して来る。その度に二人がかりで弾き返すが、その重たい一撃を弾いていく内、どんどん気力と体力を持っていかれる。



 「オラが相手だぁ!!」



 「!!!」



 すると全身を鋼鉄に変化させたハナコが、捨て身覚悟でカルド王目掛けて体当たりを試みる。ハナコの巨体と鋼鉄の重さによって、カルド王はその場から押し出されていく。



 その勢いのまま、ハナコはカルド王を壁にぶつけようとする。その時、カルド王が嬉しそうに笑い始めた。



 「素晴らしい!! 素晴らしいぞ!! 後先を考えない特攻!! お前の内に眠る命の輝きが見える!!」



 「余裕ぶっでるのも、今の内だぁ!!」



 「いいぞ、ますます気に入った!! さぁ、もっと見せてくれ!! その命の輝きを!!」



 ハナコがカルド王を壁にぶつけようとしたその時、カルド王は人間離れした動きで、両足を壁にくっ付け、ハナコの頭上を通り過ぎ、流れる様に背後へと回った。



 「なっ!!?」



 「どりゃああああああ!!!」



 鋼鉄と化し、重くなったハナコを軽々と持ち上げるカルド王。手元でくるくると回し、真緒達目掛けて放り投げた。



 三人はハナコを受け止めるも、あまりの重さからバランスを崩し、尻餅を付いてしまった。その隙を狙って、カルド王が勢い良く迫って来る。



 「“シャドウロック”!!」



 咄嗟にサタニアが動きを封じようとカルド王の影目掛けて黒い針を突き刺すが、一本だけでは差ほど影響が無く、どんどん近付いて来る。



 「うぉおおおおおお!!!」



 「“シャドウロック”!! “シャドウロック”!! “シャドウロック”!! “シャドウロック”!! “シャドウロック”!!」



 慌てて何本も突き刺していくが、止まる気配は無い。そして目の前まで迫ったその時、カルド王が斧を真緒達目掛けて勢い良く振り下ろそうとする。



 「危ない!!」



 それを真緒が二本の剣で受け止めるも、力に押し負けてしまい、体を斬り付けられてしまう。



 「ぐぅ……ぁあああああ!!!」



 「マオ!! この……“ブラックアウト”!!」



 まるで獣の様に素早く後ろへと跳び、サタニアの攻撃を回避した。真緒の傷はそれ程酷くは無かったが、出血が止まらなかった。



 「不味い、急いでポーションを使わないと!!」



 「それなら私が……」



 「そうはさせん!!」



 「「「!!!」」」



 真緒の回復を試みようとするが、カルド王が再び距離を詰め、斧を振り回して来た。



 「スキル“鋼鉄化(腕)”!!」



 「“シャドウ・イリュージョン”!!」



 負傷した真緒を守る為、ハナコは自身の両腕を鋼鉄に変化させ、サタニアは自身の影から分身を作り出し、対抗した。



 「今の内に回復を!!」



 「で、でも二人が……」



 「いいから早く!!」



 「リーマぢゃん!! 頼むだぁ!!」



 「は、はい!!」



 「スキル“不動明王波”!!」



 二人の事を心配し、真緒への回復が一瞬だけ遅れてしまった。その一瞬でカルドはハナコ、サタニアの二人をエネルギーの爆発で吹き飛ばした。



 「ハナコさん!! サタニアさん!!」



 「ふん、あいつらが仲間の為、命を賭けて戦っているというのに、お前は何の役にも立っていないな」



 「っ……」



 否定する事は出来なかった。事実、リーマはこの戦いで何も活躍していない。悔しさと情けなさから、下唇を噛み締める。



 「マオぢゃん!! リーマぢゃん!!」



 「駄目、間に合わない!!」



 「最低の魔法使いだな」



 「…………」



 そう言うとカルド王は、真緒とリーマ目掛けて無慈悲に斧を勢い良く振り下ろした。



 「…………あれ?」



 が、何故か痛みは全く無かった。勿論、死んだ訳でも無かった。見ると、振り下ろされた筈の斧が途中で手から離れ、床に落ちていた。



 そして肝心のカルド王だが、斧を持っていた手には一本の矢が突き刺さっていた。



 「い、いったい誰が……?」



 『俺が知る限りでは、そいつは世界最高の魔法使いだがな』



 「「「!!?」」」



 忘れる筈が無い。もう二度と会えないと思っていた。大切な仲間。慌てて声のした天井の方を見上げると、そこには……。



 「地獄から戻って来たぜ」



 「フォルスさん!!」



 死の淵から舞い戻った空の支配者。真緒達が一番会いたいと願っていた、フォルスがいた。
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