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第十章 冒険編 反撃の狼煙
最弱から最強
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「あなたが主人格……」
「何だか、道化師のエジタスと化物のエジタスの二人を見た後だと、どうにも拍子抜けって思ってしまうな……」
「顔も全く同じですしね」
「ちょ、ちょっと皆、失礼だよ!?」
思わずヒソヒソと陰口を叩いてしまうフォルスとリーマ。その様子に真緒が注意を入れる。
「いやいや、別に構わないよ。実際、その通りだからね」
「「「「「…………」」」」」
と、素直に認める主人格のエジタス。今までに無い対応にむず痒さを覚える真緒達。化物のエジタスと同じ顔で優しくされると、どうにもやりにくくて仕方がない。
「さてと、積もる話は置いといて……さっさと始めちゃおっ……とと……」
そう言うと、徐に剣を取り出す主人格のエジタス。持ち慣れていないのか、片手で持ち上げる事が出来ず、剣の重さに体が引っ張られてしまいそうになり、慌てて両手で持ち上げるも、プルプルと剣先が震えていた。
「ふぅ、危ない危ない。それじゃあ始めようか」
すると主人格のエジタスは剣を構えながら、ふらふらと真緒達の方に歩いて来る。そして真緒達目掛けて剣を振り回すが、振る度に体が持っていかれそうになる為、剣を振り回すというよりも剣に振り回されている様子だった。そんな剣筋が真緒達に当たる筈も無く、意図も簡単に避ける事が出来た。
「はぁ……はぁ……中々やるね……」
「ま、待って下さい!!」
「えっ?」
息遣いを荒くしながら全身汗だくになっている主人格のエジタスに、ストップを掛ける真緒。すると主人格のエジタスは一旦、持ち上げるのを止めて剣先を下に落とした。
「あの……本気でやってますか?」
「勿論だよ。散々、心の中でイメージトレーニングして来たから結構自身あるよ。まぁ、実際に戦うのは生まれて初めてだけど……」
「あっ、えっと……その……戦う前に一度話しませんか?」
「うーん、僕としては今すぐにでも戦いたいんだけど……せっかくここまで来てくれた訳だし、構わないよ。少しだけなら話そうか」
「あ、ありがとうございます」
調子が狂ってしまった。というより気が抜けてしまった。端から見ても分かるが、このエジタスは弱過ぎる。これまでの相手とは比較にならない程。体から感じられる独特な気も感じられない。剣一本も満足に持てない。
恐らく、いや間違いなく、このまま剣を交わらせれば、数秒と経たずに主人格のエジタスは消し炭になるだろう。
そう思った真緒達は対話を望んだ。他の連中より幾分か物腰が柔らかいこのエジタスなら、もしかしたら戦わずに決着が付くかもしれない。
「それで? 何を話したいの?」
「えっと……単刀直入に聞きます。私達と戦うのを諦めて、大人しく降伏して貰えませんか? もうこれ以上、犠牲を出したくないんです」
「……悪いけどそれは無理だよ」
「どうしてですか? もうそちらの戦力はあなた只一人。最早、勝ち目が無いのは明白。それなのに戦うなんて意味あるんですか!?」
「…………」
「正直、あなたは弱い。弱過ぎます。一人と戦うのにも一苦労なのに、五人を一度に相手にしようとするなんて、無謀です!!」
もし、主人格のエジタスが他の八英雄や道化師のエジタス、化物のエジタスの様に強ければ話は変わって来るだろう。しかし、その辺の村人にも劣る実力である以上、真緒達としても戦うのは気が引けた。
「もう死者復活の紙も無い。例え私達を倒せたとしても、誰も蘇らせる事は出来ないんですよ!! なのに、まだ戦う理由なんてあるんですか!?」
真緒達からすれば完全な消化試合。相手は取るに足らない存在。ならば、もう戦う理由など無いに等しい。
また、エジタス側も死者復活の紙を失ってしまった以上、もう誰も蘇らせる事は出来ない。そうなればこの島の治安も長くは持たない。いずれ自然崩壊してしまうだろう。つまり、互いに戦う理由は無いと言える。にも関わらず、主人格のエジタスは戦う事を望んでいる。それが真緒達には、どうしても理解出来なかった。すると主人格のエジタスが口を開く。
「あるさ。少なくとも君達には……」
「えっ……?」
すると主人格のエジタスは、持っていた剣を手放し、懐から先程まで指に嵌めていた指輪を真緒達に見せる。
「これ、見覚えないかい?」
「「「「「…………」」」」」
一度、顔を見合わせる真緒達。仲間達は全員首を横に振った。そして真緒も首を横に振った。
「よーく見るんだ。君達はこの指輪の事をよく知っている筈だ。何せこの指輪は、姿だけじゃない。記憶も一緒に引き継げるんだから……」
「「「「「!!!」」」」」
その瞬間、真緒達の脳裏にある指輪の事が過った。
「ま、まさかそれって……?」
「思い出したかい? そう、ロストマジックアイテムの一つ“真・変化の指輪”だよ」
「そんな……あり得ない!! だってその指輪は……」
「他のロストマジックアイテムと一緒に、死者復活の紙を生成するのに生け贄として捧げられたって?」
「そうだ!! だからその指輪がここにある筈が無い!! それは普通の変化の指輪!! 騙されないぞ!!」
「疑り深いな……それならこれは?」
全否定する真緒達に対して、主人格のエジタスは指輪に続いて、一つの腕輪を取り出した。
「その腕輪は!!?」
「うん、君達が最初に手に入れた“疫病の腕輪”だよ」
「まさか本当に……?」
「まだ信じられない? それならこれは?」
更に主人格のエジタスは、一枚のコインを取り出した。
「これは?」
続けて一冊の本を取り出し……。
「これは?」
一本の杖を取り出した。
「あぁ、これも忘れちゃいけないよね」
そう言うと主人格のエジタスは、胸をはだけさせた。そしてそこには見覚えのあるペンダントが付けられていた。
「どう? これで信じてくれた?」
「そんな……いったいどうして……?」
訳が分からなかった。もう存在しないと思われていたロストマジックアイテムが、再び真緒達の目の前に現れるなど、予想だにしていなかった。
「僕は焦らすのは好きじゃないからね。答えを教えてあげるよ。これら全て……“スペア”さ」
「スペア……?」
「マオさんなら知ってるんじゃないかな? 君がその二本の剣を手に入れる時、初代勇者は何て言ってた?」
「……あっ……」
その時、真緒の脳裏に初代勇者であるサイトウコウスケの言葉が甦って来る。
“あれ? もしかして世界に一本しか無いと思った? その認識は少し間違っているね。元々、純白の剣は僕とエジタスさんの二人で作った物なんだ”
“凄いよね。あの人は正に物作りの神だよ。そんな神が教えてくれたんだ。『私はいつも物を作る時はスペアを用意しておく』ってね”
「武器だけじゃなかった……」
「その通り。マジックアイテムも含まれている。そもそも常識的に考えて。死者を蘇らせるマジックアイテムは確かに強力だ。けど、それを手に入れる為にせっかくのロストマジックアイテムを捨てるだなんて、馬鹿げてると思わない? だから両方手に入れられる様にスペアを用意しておいた訳さ」
「じゃあ初めからロストマジックアイテムは、そっちの手元にあった訳だね」
「そういう事だね」
「なら、どうして手元にあるロストマジックアイテムで死者復活の紙を作らなかったんですか!? そうしていれば、これまでの悲劇だって起こらなかったかもしれないのに!!」
「言っただろう。これはあくまでもスペアなんだ。この存在を知っているのは僕……もとい道化師としてのエジタスと化物としてのエジタスだけ……他は誰も知らなかったんだ」
「……だけど……」
いくら知らなかったとはいえ、こうもあっさりとスペアでロストマジックアイテムを全て揃えられてしまうと、これまでの出来事は何だったのかと、落ち込んでしまう。
「そう落ち込まないで。これは君達にとっても吉報な事なんだ」
「えっ……?」
「言っただろう。戦う理由、少なくとも君達にはあるって……」
そう言いながら主人格のエジタスは、一枚の紙を取り出した。
「「「「「!!!」」」」」
それは確かに真緒達にとって、これまでに無い吉報だった。最早、失ってしまった者達を取り戻す事は出来ないと思っていた。そんな考えを覆す物が目の前に現れた。
「当然、死者復活の紙もスペアがあるよ」
「そういう事でしたか……無理だとは思いますが、一応聞いておきます。それを大人しく私達に渡すつもりは……」
「無いよ」
「ですよね……分かりました。戦いましょう」
戦う目的が生まれた真緒達は、各々武器を構える。
「手加減はしません。全力でいきます!!」
「その方が良いと思う。ここからは僕も本気で相手をするから……」
「…………?」
次の瞬間、主人格のエジタスは持っていたロストマジックアイテムの一つである、真・変化の指輪を体に取り込んだ。
「「「「「!!!」」」」」
「もう知ってると思うけど、マジックアイテムの真髄は、それらを取り込む事で絶大な力として発揮される所にある。そして……」
すると主人格のエジタスは、次々とロストマジックアイテムを取り込み始めた。
「な、何をしているんですか!!?」
「只でさえ強力なロストマジックアイテムを全て取り込めば、人智を越えた力を手に入れる事が出来る」
「そんな事をすれば自我を保てなくなりますよ!! 二代目魔王は、それで生き物として意義を無くしてしまったんですから!!」
「そうだね。普通なら自我を無くして、全てを破壊し尽くす獣になっていたかもしれない……」
やがて主人格のエジタスの体が変化し始める。病的までに痩せたと思ったら、今度ははち切れんばかりに太り、今度は手足が異常に伸び始めた。
「けど、僕は生まれた時から普通じゃなかった」
まるで粘土の様に何回か体が変化を起こし、最終的には螺旋模様の完全な球体となった。そしてピクリとも動かなくなった。
「…………」
真緒が恐る恐る近付こうとした次の瞬間……!!
どくん
「!!!」
「マオ、下がれ!!」
螺旋模様の球体は、まるで心臓の鼓動の様に脈打ち始めた。鼓動が徐々に速くなり始めたと思ったその瞬間、鼓動は止まり、完全停止した。
「「「「「…………」」」」」
真緒達が様子を伺っていると、螺旋模様の球体は花が咲き開くかの様に、均等に裂けた。そして中には人型の何かがいた。
真っ白な体に黒い血管模様が浮き出ており、顔にはポッカリと楕円形な穴が空いていた。そして不思議な事に、その穴から主人格のエジタスの声が聞こえて来た。
「これで僕は最弱から最強になった」
「何だか、道化師のエジタスと化物のエジタスの二人を見た後だと、どうにも拍子抜けって思ってしまうな……」
「顔も全く同じですしね」
「ちょ、ちょっと皆、失礼だよ!?」
思わずヒソヒソと陰口を叩いてしまうフォルスとリーマ。その様子に真緒が注意を入れる。
「いやいや、別に構わないよ。実際、その通りだからね」
「「「「「…………」」」」」
と、素直に認める主人格のエジタス。今までに無い対応にむず痒さを覚える真緒達。化物のエジタスと同じ顔で優しくされると、どうにもやりにくくて仕方がない。
「さてと、積もる話は置いといて……さっさと始めちゃおっ……とと……」
そう言うと、徐に剣を取り出す主人格のエジタス。持ち慣れていないのか、片手で持ち上げる事が出来ず、剣の重さに体が引っ張られてしまいそうになり、慌てて両手で持ち上げるも、プルプルと剣先が震えていた。
「ふぅ、危ない危ない。それじゃあ始めようか」
すると主人格のエジタスは剣を構えながら、ふらふらと真緒達の方に歩いて来る。そして真緒達目掛けて剣を振り回すが、振る度に体が持っていかれそうになる為、剣を振り回すというよりも剣に振り回されている様子だった。そんな剣筋が真緒達に当たる筈も無く、意図も簡単に避ける事が出来た。
「はぁ……はぁ……中々やるね……」
「ま、待って下さい!!」
「えっ?」
息遣いを荒くしながら全身汗だくになっている主人格のエジタスに、ストップを掛ける真緒。すると主人格のエジタスは一旦、持ち上げるのを止めて剣先を下に落とした。
「あの……本気でやってますか?」
「勿論だよ。散々、心の中でイメージトレーニングして来たから結構自身あるよ。まぁ、実際に戦うのは生まれて初めてだけど……」
「あっ、えっと……その……戦う前に一度話しませんか?」
「うーん、僕としては今すぐにでも戦いたいんだけど……せっかくここまで来てくれた訳だし、構わないよ。少しだけなら話そうか」
「あ、ありがとうございます」
調子が狂ってしまった。というより気が抜けてしまった。端から見ても分かるが、このエジタスは弱過ぎる。これまでの相手とは比較にならない程。体から感じられる独特な気も感じられない。剣一本も満足に持てない。
恐らく、いや間違いなく、このまま剣を交わらせれば、数秒と経たずに主人格のエジタスは消し炭になるだろう。
そう思った真緒達は対話を望んだ。他の連中より幾分か物腰が柔らかいこのエジタスなら、もしかしたら戦わずに決着が付くかもしれない。
「それで? 何を話したいの?」
「えっと……単刀直入に聞きます。私達と戦うのを諦めて、大人しく降伏して貰えませんか? もうこれ以上、犠牲を出したくないんです」
「……悪いけどそれは無理だよ」
「どうしてですか? もうそちらの戦力はあなた只一人。最早、勝ち目が無いのは明白。それなのに戦うなんて意味あるんですか!?」
「…………」
「正直、あなたは弱い。弱過ぎます。一人と戦うのにも一苦労なのに、五人を一度に相手にしようとするなんて、無謀です!!」
もし、主人格のエジタスが他の八英雄や道化師のエジタス、化物のエジタスの様に強ければ話は変わって来るだろう。しかし、その辺の村人にも劣る実力である以上、真緒達としても戦うのは気が引けた。
「もう死者復活の紙も無い。例え私達を倒せたとしても、誰も蘇らせる事は出来ないんですよ!! なのに、まだ戦う理由なんてあるんですか!?」
真緒達からすれば完全な消化試合。相手は取るに足らない存在。ならば、もう戦う理由など無いに等しい。
また、エジタス側も死者復活の紙を失ってしまった以上、もう誰も蘇らせる事は出来ない。そうなればこの島の治安も長くは持たない。いずれ自然崩壊してしまうだろう。つまり、互いに戦う理由は無いと言える。にも関わらず、主人格のエジタスは戦う事を望んでいる。それが真緒達には、どうしても理解出来なかった。すると主人格のエジタスが口を開く。
「あるさ。少なくとも君達には……」
「えっ……?」
すると主人格のエジタスは、持っていた剣を手放し、懐から先程まで指に嵌めていた指輪を真緒達に見せる。
「これ、見覚えないかい?」
「「「「「…………」」」」」
一度、顔を見合わせる真緒達。仲間達は全員首を横に振った。そして真緒も首を横に振った。
「よーく見るんだ。君達はこの指輪の事をよく知っている筈だ。何せこの指輪は、姿だけじゃない。記憶も一緒に引き継げるんだから……」
「「「「「!!!」」」」」
その瞬間、真緒達の脳裏にある指輪の事が過った。
「ま、まさかそれって……?」
「思い出したかい? そう、ロストマジックアイテムの一つ“真・変化の指輪”だよ」
「そんな……あり得ない!! だってその指輪は……」
「他のロストマジックアイテムと一緒に、死者復活の紙を生成するのに生け贄として捧げられたって?」
「そうだ!! だからその指輪がここにある筈が無い!! それは普通の変化の指輪!! 騙されないぞ!!」
「疑り深いな……それならこれは?」
全否定する真緒達に対して、主人格のエジタスは指輪に続いて、一つの腕輪を取り出した。
「その腕輪は!!?」
「うん、君達が最初に手に入れた“疫病の腕輪”だよ」
「まさか本当に……?」
「まだ信じられない? それならこれは?」
更に主人格のエジタスは、一枚のコインを取り出した。
「これは?」
続けて一冊の本を取り出し……。
「これは?」
一本の杖を取り出した。
「あぁ、これも忘れちゃいけないよね」
そう言うと主人格のエジタスは、胸をはだけさせた。そしてそこには見覚えのあるペンダントが付けられていた。
「どう? これで信じてくれた?」
「そんな……いったいどうして……?」
訳が分からなかった。もう存在しないと思われていたロストマジックアイテムが、再び真緒達の目の前に現れるなど、予想だにしていなかった。
「僕は焦らすのは好きじゃないからね。答えを教えてあげるよ。これら全て……“スペア”さ」
「スペア……?」
「マオさんなら知ってるんじゃないかな? 君がその二本の剣を手に入れる時、初代勇者は何て言ってた?」
「……あっ……」
その時、真緒の脳裏に初代勇者であるサイトウコウスケの言葉が甦って来る。
“あれ? もしかして世界に一本しか無いと思った? その認識は少し間違っているね。元々、純白の剣は僕とエジタスさんの二人で作った物なんだ”
“凄いよね。あの人は正に物作りの神だよ。そんな神が教えてくれたんだ。『私はいつも物を作る時はスペアを用意しておく』ってね”
「武器だけじゃなかった……」
「その通り。マジックアイテムも含まれている。そもそも常識的に考えて。死者を蘇らせるマジックアイテムは確かに強力だ。けど、それを手に入れる為にせっかくのロストマジックアイテムを捨てるだなんて、馬鹿げてると思わない? だから両方手に入れられる様にスペアを用意しておいた訳さ」
「じゃあ初めからロストマジックアイテムは、そっちの手元にあった訳だね」
「そういう事だね」
「なら、どうして手元にあるロストマジックアイテムで死者復活の紙を作らなかったんですか!? そうしていれば、これまでの悲劇だって起こらなかったかもしれないのに!!」
「言っただろう。これはあくまでもスペアなんだ。この存在を知っているのは僕……もとい道化師としてのエジタスと化物としてのエジタスだけ……他は誰も知らなかったんだ」
「……だけど……」
いくら知らなかったとはいえ、こうもあっさりとスペアでロストマジックアイテムを全て揃えられてしまうと、これまでの出来事は何だったのかと、落ち込んでしまう。
「そう落ち込まないで。これは君達にとっても吉報な事なんだ」
「えっ……?」
「言っただろう。戦う理由、少なくとも君達にはあるって……」
そう言いながら主人格のエジタスは、一枚の紙を取り出した。
「「「「「!!!」」」」」
それは確かに真緒達にとって、これまでに無い吉報だった。最早、失ってしまった者達を取り戻す事は出来ないと思っていた。そんな考えを覆す物が目の前に現れた。
「当然、死者復活の紙もスペアがあるよ」
「そういう事でしたか……無理だとは思いますが、一応聞いておきます。それを大人しく私達に渡すつもりは……」
「無いよ」
「ですよね……分かりました。戦いましょう」
戦う目的が生まれた真緒達は、各々武器を構える。
「手加減はしません。全力でいきます!!」
「その方が良いと思う。ここからは僕も本気で相手をするから……」
「…………?」
次の瞬間、主人格のエジタスは持っていたロストマジックアイテムの一つである、真・変化の指輪を体に取り込んだ。
「「「「「!!!」」」」」
「もう知ってると思うけど、マジックアイテムの真髄は、それらを取り込む事で絶大な力として発揮される所にある。そして……」
すると主人格のエジタスは、次々とロストマジックアイテムを取り込み始めた。
「な、何をしているんですか!!?」
「只でさえ強力なロストマジックアイテムを全て取り込めば、人智を越えた力を手に入れる事が出来る」
「そんな事をすれば自我を保てなくなりますよ!! 二代目魔王は、それで生き物として意義を無くしてしまったんですから!!」
「そうだね。普通なら自我を無くして、全てを破壊し尽くす獣になっていたかもしれない……」
やがて主人格のエジタスの体が変化し始める。病的までに痩せたと思ったら、今度ははち切れんばかりに太り、今度は手足が異常に伸び始めた。
「けど、僕は生まれた時から普通じゃなかった」
まるで粘土の様に何回か体が変化を起こし、最終的には螺旋模様の完全な球体となった。そしてピクリとも動かなくなった。
「…………」
真緒が恐る恐る近付こうとした次の瞬間……!!
どくん
「!!!」
「マオ、下がれ!!」
螺旋模様の球体は、まるで心臓の鼓動の様に脈打ち始めた。鼓動が徐々に速くなり始めたと思ったその瞬間、鼓動は止まり、完全停止した。
「「「「「…………」」」」」
真緒達が様子を伺っていると、螺旋模様の球体は花が咲き開くかの様に、均等に裂けた。そして中には人型の何かがいた。
真っ白な体に黒い血管模様が浮き出ており、顔にはポッカリと楕円形な穴が空いていた。そして不思議な事に、その穴から主人格のエジタスの声が聞こえて来た。
「これで僕は最弱から最強になった」
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