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第十章 冒険編 反撃の狼煙
真緒パーティー VS 主人格(前編)
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「こ、これは……」
その瞬間、真緒達を襲ったのは極めて純粋な恐怖だった。また、それは死んでしまうかもしれない恐怖や、怪我に対する恐怖などでは無く、逃げ出したいというシンプルで何より強い感情であった。
異様な見た目へと化した主人格のエジタス。そこから伝わるのは、言い知れぬ重圧感と緊迫感。これまで様々な相手と激戦を繰り広げて来た真緒達。何度も死にかけ、何度も絶望に落ちかけたが、それでも最終的には全て上手く行っていた。
しかし、今回ばかりは次元が違った。八英雄よりも、道化師のエジタスよりも、化物のエジタスよりも遥かに上。それこそ比較にならない程、圧倒的な存在。剣を交えずとも分かってしまう。人類はこの存在に勝つ事は出来ない。
「だけど……ここで諦める訳には……」
今すぐにでも裸足で逃げ出したい。誰もがそう思う中、真緒達は逃げ出す訳には行かなかった。
死者復活の紙。最早、二度と手に入らないと思っていた。失ってしまった人類を蘇らせる事の出来る唯一のマジックアイテム。それが相手側の手にある限り、真緒達は諦める訳には行かない。
「そう、君達は戦わなければならない。例えそれが……初めから勝敗が定められた戦いであったとしても……ね」
そう言うと主人格のエジタスは、右手を軽く挙げ、真緒達に人差し指を向ける。そして次の瞬間、人差し指から水色の光が放たれ、真緒の肩に人差し指サイズの穴が空いた。
「…………え?」
何が起こったのか、まるで分からなかった。肩に空いた小さな穴から、血が止めどなく溢れ出る。
「……ぁあああああ!!?」
真緒は悲鳴を上げ、肩に空いた穴を必死に押さえる。仲間達も慌てて真緒の下に駆け寄るが、何故真緒の肩に穴が空いたのか理解出来ず、酷く混乱していた。
「い、いったい何を……何をしたんだ!!?」
「“汗”だよ」
「あ、汗……?」
少しでも心に平常心を保とうと、何をしたのか問いただすフォルス。しかし、返って来た答えは真緒達の心を更に掻き乱す物だった。
「本来、体から排出される筈だった汗を指先に集中、限界まで圧縮させた後、勢い良く放っただけの事だよ」
「それだけで……マオの肩に穴を空けたと言うのか……!?」
人智を越えた存在。化物を軽く通り越し、神にも等しい存在へとなってしまった。自身の老廃物を飛ばしただけで、真緒は重傷を負ってしまった。
「例えそうだとしても、僕達は諦める訳にはいかないんだ!!」
するとサタニアは、真緒の仇を討たんとばかりに一人で主人格のエジタスに突撃した。
「“シャドウロック”!!」
手から数本の黒い針を生成し、主人格のエジタスから伸びる影に向かって突き刺した。
「これでしばらくは動けない!! 一気に勝負を付ける!!」
そう言うとサタニアは、堂々と真正面から主人格のエジタスに勝負を仕掛けた。
「スキル“ブラックアウト”!!」
サタニアの渾身の一撃が、主人格のエジタスの体に叩き込まれる……。
「…………っ!!?」
と、思われたが、剣は主人格のエジタスに突き刺さる事は無く、その手前……まるで見えない壁に遮られてしまっているかの様に、それ以上先には動かなかった。
「どうかな。空気中の魔力で生成した透明な壁は?」
「ぐぐぐっ……!!」
「お引き取り願うよ」
両手で押し込む様に剣を動かそうとするが、まるで変化は見られなかった。すると主人格のエジタスは、サタニアのおでこ目掛けてデコピンを放った。
「!!!」
デコピンを食らったサタニアは、数十メートル先まで吹き飛び、最終的には壁にめり込んでしまった。
「サタニア!!」
「あれれ? 軽く飛ばしたつもりだったんだけど……調整が難しいな……」
指を閉じては開いてを繰り返し、急激に変化した自身の力を確かめる主人格のエジタス。その間にハナコとフォルスが壁にめり込んだサタニアを引っ張り出す。
「おい、サタニア!! 大丈夫か!!?」
「皮膚が……消じ飛んでいるだぁ……」
よく見るとデコピンを食らったおでこの皮膚が削り取られており、中の骨が少し見えてしまっていた。また、微かに見える骨にはヒビが入っていた。
「デコピン一発でこの威力とはな……」
「……オラが行ぐだぁ……」
「っ!!? ハナコ、正気か!!?」
真緒に続いてサタニアが重傷を負わされてしまった。そんな圧倒的に不利な状況の中で、ハナコが一人で主人格のエジタスに戦いを挑もうとする。そんなハナコの腕を掴むフォルス。
「オラが死んでも足止めずるだぁ。その間にフォルスざんとリーマぢゃんで攻撃じで欲じいだぁ」
「ハナコ……お前……」
「でも後でぢゃんど蘇らぜで欲じいだぁ」
「……分かった……必ず蘇らせる……」
ハナコの覚悟にフォルスは掴んでいた手を離した。そしてハナコは真っ直ぐ主人格のエジタスへと走り出した。
「リーマ!! 今の話は聞いてたか!?」
「はい!!」
「スキル“鋼鉄化”!! おんどりゃああああああああ!!!」
ハナコは全身を鋼鉄に変化させ、そのまま主人格のエジタスを全身で拘束しようとする。しかし、ハナコの両腕は主人格のエジタスを捕らえる前に見えない壁に阻まれてしまった。
「悪いね。壁は全身に余す事無く張り巡らせているんだ。だから残念だけど君達じゃ……!!?」
「どりゃあああああああ!!!」
するとハナコは壁を破るのでは無く、壁ごと主人格のエジタスを拘束しようとし始める。サタニアの一撃でさえ歯が立たなかった壁だが、死ぬ覚悟で挑むハナコの力によって、徐々に主人格のエジタスとの距離が狭まり始めた。
「……これが火事場の馬鹿力というヤツなのかな……少し羨ましいな。あの時、僕にも君だけの覚悟があれば……こんな事にはなっていなかったのかもしれない……」
「うぉおおおおおおおお!!!」
主人格のエジタスが感傷に浸っていると、遂にハナコが壁ごと主人格のエジタスを拘束する事に成功した。
「今だぁ!! オラごと、殺っでぐれだぁ!!」
「行くぞリーマ!!」
「分かりました!!」
ハナコの合図と同時に、リーマとフォルスの二人が動き出した。フォルスは翼を広げて空中へと舞い上がり、リーマは背後に炎の巨人を生成し、更に魔導書を開く。
「貫け!! “ブースト”!!」
「“炎の槍”!!」
フォルスが風属性魔法を付与した矢を放つ一方、リーマは炎の巨人に生成した炎の槍を持たせ、巨人の力を使って槍を勢い良く投げ飛ばした。
「…………」
リーマとフォルスの一撃は、ハナコもろとも主人格のエジタスに当たった。衝撃で辺りに土煙が舞い上がる。
「やったか……?」
次第に土煙が収まり、二つの人影が目に入る。そこに立っていたのは、ぐったりとしたハナコの首を片手で掴む主人格のエジタスの姿だった。
「そんな!!!」
「ハナコ!!!」
「ハナちゃん……」
そして主人格のエジタスは、ハナコの首を“ゴキッ”とへし折り、その場に投げ捨てる。
「これで分かっただろう。君達にはもう勝ち目は無いんだ。諦めてくれ」
目の前で大切な仲間を失った真緒達。主人格のエジタスによる無慈悲な行動に、一同は絶望と悲しみに襲われるのであった。
その瞬間、真緒達を襲ったのは極めて純粋な恐怖だった。また、それは死んでしまうかもしれない恐怖や、怪我に対する恐怖などでは無く、逃げ出したいというシンプルで何より強い感情であった。
異様な見た目へと化した主人格のエジタス。そこから伝わるのは、言い知れぬ重圧感と緊迫感。これまで様々な相手と激戦を繰り広げて来た真緒達。何度も死にかけ、何度も絶望に落ちかけたが、それでも最終的には全て上手く行っていた。
しかし、今回ばかりは次元が違った。八英雄よりも、道化師のエジタスよりも、化物のエジタスよりも遥かに上。それこそ比較にならない程、圧倒的な存在。剣を交えずとも分かってしまう。人類はこの存在に勝つ事は出来ない。
「だけど……ここで諦める訳には……」
今すぐにでも裸足で逃げ出したい。誰もがそう思う中、真緒達は逃げ出す訳には行かなかった。
死者復活の紙。最早、二度と手に入らないと思っていた。失ってしまった人類を蘇らせる事の出来る唯一のマジックアイテム。それが相手側の手にある限り、真緒達は諦める訳には行かない。
「そう、君達は戦わなければならない。例えそれが……初めから勝敗が定められた戦いであったとしても……ね」
そう言うと主人格のエジタスは、右手を軽く挙げ、真緒達に人差し指を向ける。そして次の瞬間、人差し指から水色の光が放たれ、真緒の肩に人差し指サイズの穴が空いた。
「…………え?」
何が起こったのか、まるで分からなかった。肩に空いた小さな穴から、血が止めどなく溢れ出る。
「……ぁあああああ!!?」
真緒は悲鳴を上げ、肩に空いた穴を必死に押さえる。仲間達も慌てて真緒の下に駆け寄るが、何故真緒の肩に穴が空いたのか理解出来ず、酷く混乱していた。
「い、いったい何を……何をしたんだ!!?」
「“汗”だよ」
「あ、汗……?」
少しでも心に平常心を保とうと、何をしたのか問いただすフォルス。しかし、返って来た答えは真緒達の心を更に掻き乱す物だった。
「本来、体から排出される筈だった汗を指先に集中、限界まで圧縮させた後、勢い良く放っただけの事だよ」
「それだけで……マオの肩に穴を空けたと言うのか……!?」
人智を越えた存在。化物を軽く通り越し、神にも等しい存在へとなってしまった。自身の老廃物を飛ばしただけで、真緒は重傷を負ってしまった。
「例えそうだとしても、僕達は諦める訳にはいかないんだ!!」
するとサタニアは、真緒の仇を討たんとばかりに一人で主人格のエジタスに突撃した。
「“シャドウロック”!!」
手から数本の黒い針を生成し、主人格のエジタスから伸びる影に向かって突き刺した。
「これでしばらくは動けない!! 一気に勝負を付ける!!」
そう言うとサタニアは、堂々と真正面から主人格のエジタスに勝負を仕掛けた。
「スキル“ブラックアウト”!!」
サタニアの渾身の一撃が、主人格のエジタスの体に叩き込まれる……。
「…………っ!!?」
と、思われたが、剣は主人格のエジタスに突き刺さる事は無く、その手前……まるで見えない壁に遮られてしまっているかの様に、それ以上先には動かなかった。
「どうかな。空気中の魔力で生成した透明な壁は?」
「ぐぐぐっ……!!」
「お引き取り願うよ」
両手で押し込む様に剣を動かそうとするが、まるで変化は見られなかった。すると主人格のエジタスは、サタニアのおでこ目掛けてデコピンを放った。
「!!!」
デコピンを食らったサタニアは、数十メートル先まで吹き飛び、最終的には壁にめり込んでしまった。
「サタニア!!」
「あれれ? 軽く飛ばしたつもりだったんだけど……調整が難しいな……」
指を閉じては開いてを繰り返し、急激に変化した自身の力を確かめる主人格のエジタス。その間にハナコとフォルスが壁にめり込んだサタニアを引っ張り出す。
「おい、サタニア!! 大丈夫か!!?」
「皮膚が……消じ飛んでいるだぁ……」
よく見るとデコピンを食らったおでこの皮膚が削り取られており、中の骨が少し見えてしまっていた。また、微かに見える骨にはヒビが入っていた。
「デコピン一発でこの威力とはな……」
「……オラが行ぐだぁ……」
「っ!!? ハナコ、正気か!!?」
真緒に続いてサタニアが重傷を負わされてしまった。そんな圧倒的に不利な状況の中で、ハナコが一人で主人格のエジタスに戦いを挑もうとする。そんなハナコの腕を掴むフォルス。
「オラが死んでも足止めずるだぁ。その間にフォルスざんとリーマぢゃんで攻撃じで欲じいだぁ」
「ハナコ……お前……」
「でも後でぢゃんど蘇らぜで欲じいだぁ」
「……分かった……必ず蘇らせる……」
ハナコの覚悟にフォルスは掴んでいた手を離した。そしてハナコは真っ直ぐ主人格のエジタスへと走り出した。
「リーマ!! 今の話は聞いてたか!?」
「はい!!」
「スキル“鋼鉄化”!! おんどりゃああああああああ!!!」
ハナコは全身を鋼鉄に変化させ、そのまま主人格のエジタスを全身で拘束しようとする。しかし、ハナコの両腕は主人格のエジタスを捕らえる前に見えない壁に阻まれてしまった。
「悪いね。壁は全身に余す事無く張り巡らせているんだ。だから残念だけど君達じゃ……!!?」
「どりゃあああああああ!!!」
するとハナコは壁を破るのでは無く、壁ごと主人格のエジタスを拘束しようとし始める。サタニアの一撃でさえ歯が立たなかった壁だが、死ぬ覚悟で挑むハナコの力によって、徐々に主人格のエジタスとの距離が狭まり始めた。
「……これが火事場の馬鹿力というヤツなのかな……少し羨ましいな。あの時、僕にも君だけの覚悟があれば……こんな事にはなっていなかったのかもしれない……」
「うぉおおおおおおおお!!!」
主人格のエジタスが感傷に浸っていると、遂にハナコが壁ごと主人格のエジタスを拘束する事に成功した。
「今だぁ!! オラごと、殺っでぐれだぁ!!」
「行くぞリーマ!!」
「分かりました!!」
ハナコの合図と同時に、リーマとフォルスの二人が動き出した。フォルスは翼を広げて空中へと舞い上がり、リーマは背後に炎の巨人を生成し、更に魔導書を開く。
「貫け!! “ブースト”!!」
「“炎の槍”!!」
フォルスが風属性魔法を付与した矢を放つ一方、リーマは炎の巨人に生成した炎の槍を持たせ、巨人の力を使って槍を勢い良く投げ飛ばした。
「…………」
リーマとフォルスの一撃は、ハナコもろとも主人格のエジタスに当たった。衝撃で辺りに土煙が舞い上がる。
「やったか……?」
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