笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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最終章 少女と道化師の物語

第四の人格

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 「えっと……エジタス……なの?」



 『如何にも、我らこそは生物という枠組みを越え、神の領域に足を踏み入れた存在……“エジタス”である』



 「「「「「「…………」」」」」」



 真緒達は困惑していた。突然、神と自称し始め、口調から仕草まで全て変わってしまっていた。



 『驚く事は無い、下等なる者達よ。我らは、そなた達が知るこれまでの“エジタス”とは似て非なる者。言わば、“第四の人格”なり』



 「“第四の人格”……」



 『道化師のエジタス……かの者が企てた浅はかな策略は、“エジタス”という存在の拒絶という反応を示した。故に調和を保つ為、我らが誕生したのだ』



 「そうか……つまりお前は、反発し合う人格達を纏め上げる存在という訳か」



 『鳥人の子よ……そなたの知性と博識さ、見事なり。誉めてつかわす』



 「何だか頭に来る言い方だな……」



 道化師のエジタスみたいに人をおちょくったり、化物のエジタスみたいに嫌味な言い方では無い。完全な上から目線。真緒達を底辺の存在として扱っている。これにはフォルスだけでなく、その場の全員が頭に来ていた。特にシーラは今にも飛び掛かりそうな程、頭に血管が浮き出ていた。



 「ふぅ……それで……第四の人格のお前も……人類を滅ぼそうとしている訳か?」



 真緒達は何となく分かっていた。だが聞かずにはいられなかった。もし、このエジタスが人類を滅ぼす気が無いのであれば、これ以上戦う必要は無くなる。



 『野蛮で哀れな龍の子よ。そなたの質問に答えて進ぜよう』



 「野蛮だと!!?」



 「シーラ……今だけ……今だけは落ち着いて……」



 一言余計なエジタスに、シーラは喧嘩腰で一歩踏み出そうとするが、それをサタニアに止められる。しかし、当のサタニアも仲間を侮辱され、今にも堪忍袋の緒が切れそうになっていた。



 『太古より生物達は支え合って生きて来た。奪い、奪われる生命。それによって、新たに生まれる生命。良くも悪くも世界は巡回していた。だが、悲しきかな。現在、世界の調律は失われつつある。生命維持の為、行われていた命の駆け引きは、私利私欲による下劣な殺戮へと変わり果ててしまった。最早、修正は不可能。今一度、世界を綺麗に洗い流し、新たな世界を確立する他、救いの道は無い。だが、新たに作り上げた世界には導き手が必要不可欠……そこで我らが新世界の神となり、かつての支え合って生きていた日常を取り戻さん……以上だ』



 「(や、やっと終わった……)」



 「(回りくどい言い回しを長々と喋っていたけど……話を要約すると……)」



 「(“今の世界は気に入らないから、全部壊して新しい世界を作る。ついでにそこの指導者になる”……って事か……)」



 この時、真緒達全員が思った。このエジタス……あまりにも短絡的で考えが浅い。道化師のエジタス、化物のエジタス、主人格のエジタスよりも明らかに脳ミソが足りていない。



 『野蛮で哀れな龍の子よ。知性無きそなたでも、理解する事が出来たであろう』



 「……あぁ、よーく分かったよ。お前は前のエジタス達よりも最低だって事がな!!」



 「シーラ!! 一人で先走らないで!!」



 サタニアの制止に耳を貸さず、シーラは怒りに任せ、エジタスに近付く。そして口を大きく開き、エジタス目掛けて巨大な火の玉を連続で吐き出した。



 「“ギガフレイム”!! “ギガフレイム”!! “ギガフレイム”!! “ギガフレイム”!!」



 『…………』



 エジタスは特に動く素振りを見せず、棒立ちの状態でシーラの放った巨大な火の玉を食らった。爆音が響き渡り、黒煙が勢い良く舞い上がる。



 「どうだ……?」



 一旦、吐き出すのを止め、様子を伺うシーラ。すると次の瞬間、舞い上がっている黒煙の中から、青白い光が輝き、シーラ目掛けて長細い直線の光線が放たれた。光線は直撃では無かったが、シーラの肩を貫通した。



 「ぐがはぁ!!?」



 「シーラ!!」



 「だ、大丈夫です……これ位、大した事はありません……」



 そう言いながらシーラは穴の空いた肩を抑え、出血を止める。肩から肉の焼ける音と匂いが漂って来た。



 「何なんだ今の攻撃は……?」



 『神の裁き……スキル“ジャッジメント・レイ”』



 「「「「「「!!!」」」」」」



 すると黒煙の中から、エジタスが姿を現した。四本の内、一本の腕を真緒達に向けており、その指先からは青白い光が集まっていた。



 『これでそなた達にも理解出来たであろう。我らは文字通り人智を越えた力を有している。そなた達に勝ち目などありはしない。諦めて降伏するが良い。さすれば、我らの慈悲深き恩恵により、新世界で生きる事を許可してやろう』



 「どう言う意味ですか? 私達を殺さないんですか?」



 『自惚れるでないぞ勇者の子よ。我らは神、そなたら力無き哀れな迷える子羊。力の差は歴然。面白半分に殺す事などしない。感謝するが良い』



 「……皆さん、ちょっと良いですか?」



 エジタスが慈悲を与える中、真緒は仲間達を集め、エジタスに聞こえない様、ヒソヒソと話し始める。



 「どうやらあのエジタスは私達と戦うのは、今回が初めてみたい」



 「らしいな。私の事も殺さず、ダメージの少ない肩を狙いやがった」



 「恐らくあいつは僕達の事を完全に下に見てる。わざと手を抜いて、弄んでいるんだ」



 「でもこれは逆にチャンスとも言える。あのエジタスは他の人格と違って、最初から本気では攻めて来ない」



 「道化師や化物の方だったら、即死の攻撃を連発して来そうですもんね」



 一度、化物のエジタスに変わった際に放った“ゴッドウェーブ”が良い例である。もし、あれを連発されていれば、真緒達は確実に死んでいた。



 「うん、だから油断している今がチャンス。一気に勝負を仕掛けようと思う」



 「だが、相手も追い詰められれば本気を出して来るぞ。そうなったら俺達は手も足も出ない」



 「大丈夫ですよ。私達、今までずっと無理だと思ってた戦いに勝って来たじゃないですか」



 「そうだったな。駄目で元々だ、最後まで足掻いて見せるぞ!!」



 「「「「「おぉ!!!」」」」」



 そして真緒達は決意を新たに、エジタスの方を振り向く。何がしたいのか、エジタスはその場をぐるぐると回転していた。



 『話し合いは済んだのか? と言っても、既に答えは出ている様な物でしょうがね』



 「はい、バッチリです」



 『では、そなた達の答えを聞かせなさい』



 「あなたをここで倒します!!」



 『……どうやら少々痛い目に遇わなければ、その腐った頭は直らない様ですね。良いでしょう、これも神としての役目。道を踏み外した者を正しき道へと導いて差し上げましょう。さすれば、悟る事でしょう。自分達がどれだけ愚かな事をしようとしていたのか、でもそれを悔いる必要はありません。人とは必ず間違いを犯す者。ならばやり直すチャンスも必…………っ!!』



 言い掛けた次の瞬間、エジタスの体に一本の矢が突き刺さる。放たれた方向を見ると、フォルスが矢を放っていた。



 「悪いな、話が長くて退屈だったから、弓矢で遊んでたら刺さっちまった」



 『神の言葉に耳を傾けないとは……仕方ありません。ここからは暴力に訴えかけるとしましょうか』



 遂に真緒達と、神を自称する第四の人格であるエジタスとの、最後の戦いが幕を開けるのであった。
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