笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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最終章 少女と道化師の物語

背中の上の戦い

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 「これは……」



 真緒達がエジタスの背中に降り立つと、そこには暴走している超巨大なエジタスとは別の、仮面を被った道化師のエジタスが大量に待ち構えていた。



 「足下からじゃ、よく見えなかったが、まさかこんな事になっているとはな……」



 「どうする? ここで直ぐにエジタスの背中を攻撃する事も出来るが?」



 「十中八九……いや、間違いなく邪魔して来るだろうね」



 出方を伺っているのか、大量のエジタス達は特に何もせず、只真緒達の事をじっと見つめていた。



 どう動くべきか思案を巡らせている中、真緒がある事に気が付いた。



 「皆、あそこ見て!!」



 「「「!!?」」」



 真緒が指差した方向、それは大量のエジタス達よりも向こう側。超巨大なエジタスの首もとから上半身だけが生えている、超巨大なエジタスを人並みサイズにしたエジタスがいた。



 「あれって……」



 「多分、あれが本体なんだと思います……」



 「まさかあり得ない!? こんな巨大な体があるというのに、わざわざ一回り小さい本体を晒す理由など、ある訳がない!!」



 「でも冷静になって考えてみて下さい。最初、私達はこのエジタスが暴走したと思っていました」



 「まぁ、意志疎通も出来なくなっていたからな」



 「なら何故、海を渡って本土に乗り込もうとしているんですか?」



 「成る程、そういう事か」



 「どういう事だ?」



 「もし、エジタスに自我が無くなっているのなら、意味も無くあの島で暴れ回っている筈なんだ。けど、事実は違った。自我が無くなった筈のエジタスは迷う事無く、海を渡り始めた。つまりこれは……」



 「何者かがコントロールしているという訳ですか」



 サタニアの説明に納得するシーラ。しかしフォルスだけは、まだ納得する事が出来なかった。



 「いや、だとしてもやっぱり納得いかない。仮にあいつがコントロールしているとしても、わざわざ弱点を晒す理由は何処にある!?」



 「フォルスさん、発想を逆転してみて下さい」



 「逆転?」



 「弱点を晒す理由を考えるのでは無く、弱点を晒さなければならない理由を考えれば良いんです」



 「弱点を晒さなければならない理由……まさか……!!?」



 その時、フォルスの脳裏にある考えが過った。真緒のアドバイスによって、答えを導き出す事が出来た。



 「まだ完全に制御しきれていない……?」



 「はい、そうとしか考えられないんです」



 「もし完全にコントロール出来ているのだとしたら、僕達が船に乗っている間に仕留めて来る筈……」



 「けど、しなかった……いや、出来なかった……」



 「だからわざわざ弱点を晒してまで、この巨体をコントロールしようとしている。それが私の導き出した答えです」



 「まぁ、例えそうでなかったとしても、この大量のエジタスがあいつを守っている事を物語っているけどな」



 シーラの言う通り、目の前にいる大量のエジタスは、奥にいる本体を守る様に配置されている。そしてこの瞬間、真緒達の目標が決まった。



 「あの本体を倒しましょう。そうすれば少なくとも、この巨体は動きを止める筈です」



 「手前にいる大量のエジタスはどうする?」



 「はっ、そんなの最初から決まってるだろ」



 「全部薙ぎ倒す!!」



 そう言うと真緒達は一斉に走り出した。それと同時に今まで微動だにしなかった大量のエジタスも、一斉に走り出した。



 大量のエジタスが仕掛ける主な攻撃はナイフ。遠くから投げる者、直接振り下ろす者、更には転移魔法で死角から攻撃して来る者もいた。しかし……。



 「スキル“ロストブレイク”!!」



 「スキル“ブラックアウト”!!」



 「“ギガフレイム”!!」



 「“ブースト”!!」



 今の真緒達にとって敵では無かった。迫り来る大量のエジタス達を物ともせず、次々と薙ぎ倒していった。



 「もうすぐで辿り着けるぞ!!」



 「っ!! 避けて!!」



 エジタス達の数が減り始め、奥の本体の姿がハッキリと確認出来る様になったその時、真緒達目掛けて背後から真っ赤な熱々の液体が放たれる



 咄嗟に気が付いたサタニアのお陰で、全員何とか避ける事が出来た。そして液体は避けた先にいた、一人のエジタスに掛かった。すると瞬く間に溶け始めた。



 いったい何が起こったのか、振り返る真緒達。するとそこには、巨大なエジタスの背中から触手の様な管が生えており、口から赤い液体が溢れていた。



 「何だあれは!!?」



 「エジタスの血管だ!! 血管の一本を外に出して、中の血液を飛ばしているんだ!!」



 「そんなのありかよ!?」



 「ちょっと待って……よく見たら……僕達、囲まれてる!!?」



 「「「!!!」」」



 エジタス達の処理で注意力が散漫になっていた。よく見ると、そこかしこに背中から血管が飛び出していた。



 うにょうにょと、まるで生き物の様に動き、真緒達目掛けて次々と熱々の血液を飛ばして来る。真緒達は必死に避けながら、血管を斬り飛ばしていくが、その度にまた新しい血管が背中から生えて来た。



 「切りがない!! このままじゃ、不味いぞ!!?」



 「一旦、私の背中に乗って離れるか!?」



 「駄目です!! そんな事をすれば、もう二度と本体に近付く事が出来なくなります!!」



 「じゃあいったいどうするんだよ!?」



 打つ手無し。追い詰められた真緒達は、互いに背中を合わせる。そんな中でサタニアだけが終始無言であった。



 「サタニア? どうしたの?」



 「魔王様?」



 「マオ、光属性の魔法でここ一帯を明るくする事は出来る?」



 「で、出来るけど……」



 「それなら、僕の合図で魔法を放って欲しい。そして僕が良いと言うまで、目を瞑っておいて欲しいんだ」



 「サタニア……分かったよ」



 理由は聞かない。何故なら真緒達はサタニアの事を心から信じているから、三人は言われた通りに目を瞑った。するとサタニアは息を整える。



 「ふぅ……“ダークフィルター”」



 するとサタニアの目に、暗く薄い膜の様な物が張られた。



 「これでよし、後は……“シャドウロック”」



 サタニアの両手に、黒い針の様な物が大量に生成される。そしてサタニアは黒い針を空中に向かって放り投げた。



 「今だ!!」



 「“ライト”!!」



 サタニアの合図で、真緒は掌から眩い光を放つ玉を生成した。その結果、エジタス達と無数の血管達の影が伸び始め、重なり合い、一つの大きな影となった。その影にサタニアが放り投げた黒い針が全て突き刺さる。



 エジタス達と無数の血管が動けなくなった事を確認したサタニアは、真緒とフォルスの手を取って走り出した。



 「シーラ!! 僕の足音に付いて来て!!」



 「は、はい分かりました!!」



 言われるがまま、シーラは目を瞑りながらサタニアが発する足音の後を付いて行った。



 「……もう目を開けても大丈夫だよ」



 「……ここは!!?」



 サタニアに言われ、真緒達は目を開ける。するとそこはエジタス達と無数の血管を抜けた先、本体が待つ首もとであった。



 「さぁ、ここからが正念場だよ」



 遂に真緒達は、巨大なエジタスを操る本体と対峙するのであった。
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