笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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最終章 少女と道化師の物語

反撃開始

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 「スキル“ロストブレイク”!!」



 エジタスの活躍により、窮地を脱した真緒達。思う存分戦えというエジタスの言葉通りに、真緒はシーラの背中から勢い良く飛び降り、ロスト目掛けて渾身の一撃を与えようとする。



 「事を急ぎ過ぎましたね。隙だらけですよ」



 空中で完全なる無防備状態の真緒。勿論、避ける事は不可能。そんな真緒目掛けてロストが超巨大な拳を勢い良く突き出した。



 『……ほいっと~』



 「!!!」



 その時、目の前にいた真緒が一瞬でその場から姿を消した。それにより、ロストが放った拳は空を切った。



 「これは……っ!!」



 突然、真緒が消えた事に気を取られたロスト。次の瞬間、真上から真緒が現れた。咄嗟に防御しようとするが間に合わず、真緒の一撃をまともに食らってしまう。



 「ぐっ!! ですが、これで終わりです!!」



 「!!!」



 攻撃を食らってしまったロストだが、エジタスの体から無数の触手を伸ばし、その口から真っ赤な液体を真緒目掛けて噴射した。



 「溶けて無くなりなさい!!」



 『……あらよっと~』



 「!!!」



 ロストが噴射した真っ赤な液体が真緒に掛かる次の瞬間、真緒はその場から一瞬で姿を消した。



 「またしても……!!」



 そして気が付くと、真緒はシーラの背中に戻っていた。しかし、真緒は驚いておらず、こうなる事を分かっていた様子だった。



 「マオ……」



 「サタニア、大丈夫。エジタスは私達の味方だよ」



 「お前、まさかそれを証明する為に、わざと飛び込んだって言うのか!?」



 「それもあるけど……どっちかって言うと……私は、私の信じていたエジタス……ううん、“師匠”を信じて飛び込んだだけだよ」



 この時、真緒のエジタスに対する呼び方が元に戻った。それが意味する事、それは真緒が再びエジタスの事を心から想い始めたという事。



 そして一方、真緒の他にもエジタスの事を心から想い始めた者がいた。それは……。



 「うん、マオが信じるのなら僕もエジタスの事を信じるよ」



 他ならぬサタニアだった。そう言うとサタニアはシーラの背中から勢い良く飛び降り、ロスト目掛けて落下していく。



 「魔王様!!?」



 「大丈夫だから、シーラもエジタスの事を信じてあげて!!」



 「次はあなたですが、先程は油断しましたが、今度はそうは行きません。“異臭の餞別”」



 迫り来るサタニアに対して、ロストは一度両手を合わせ、離すと両手の掌から黄色い煙が吹き出し、ロストの周囲を覆った。



 「これは只の煙ではありません。即効性の超猛毒。皮膚に触れた瞬間、瞬きをする暇も無く体はどろどろに溶けるでしょう。それと安心して下さい、この煙は私には全く効きません」



 「そんな、魔王様!!」



 触れれば即死。既にサタニアは空中に飛び出してしまった。避ける事は出来ない。急いでシーラが回収に向かったとしても、今のタイミングではもう間に合わない。やがてロストの出した煙にサタニアが触れようとした次の瞬間、サタニアはエジタスの転移魔法によって、一瞬にしてその場から姿を消した。



 「やはり転移させましたか。しかし、いくら転移魔法で逃げたとしても、攻撃を仕掛ける際は私の側に現れる。そうなれば最後、一瞬であの世に旅立つ事でしょう」



 『そうですね~、これじゃあ迂闊に近付ける事が出来ませんね~。な~んちゃって』



 「!!?」



 その時、ロストの胸から剣が突き出した。剣は背中から突き刺さっており、ロストは首だけを後ろに回転させる。するとそこには……。



 「まさか!!?」



 剣は超巨大なエジタスの体から出ており、半透明な皮膚を通して、中には転移して来たサタニアがいた。



 『自分で言ってたじゃありませんか~。“この煙は私には全く効きません”って~。だからこうやって文字通り、中から攻撃させて見ました~』



 「愚かですね。わざわざ敵の懐に入り込むだなんて……」



 「!!!」



 するとロストは超巨大なエジタスの筋肉を圧縮させ、中にいるサタニアを押し潰そうとする。



 『ほほいっと~』



 が、それよりも早くエジタスの転移魔法が発動し、サタニアは一瞬にしてその場から姿を消した。



 「……本当に厄介な魔法ですね……」



 そしてサタニアは、真緒と同様にシーラの背中に戻っていた。



 「魔王様、ご無事ですか!?」



 「うん、エジタスの転移魔法のお陰で何とも無いよ。それよりも、心臓を狙って突き刺した筈だけど……」



 ロストの方を見ると、まるで何事も無かったかの様に、真緒とサタニアに付けられた傷を塞いでいた。



 「どうやら体を細切れにしないと、倒せないみたいだね」



 「ここからは三人連続で攻撃を仕掛けよう。サポートはエジタスがしてくれる」



 「魔王様が体を張ってくれたんです。私もやります」



 「行くよ!!」



 そう言うと今度は、真緒とサタニアの二人一緒にシーラの背中から勢い良く飛び降り、ロスト目掛けて攻撃を仕掛ける。また、シーラも飛び降りた二人にワンテンポ遅れて攻撃を仕掛ける。



 「三人で来ますか。ならば……スキル“分裂する細胞”」



 「「「!!!」」」



 その瞬間、超巨大なエジタスの体から次々とロストと全く同じ見た目の者が生え始めた。



 「「「「「「これでどれが本物の私か、見分けがつけられないでしょう。更に駄目押し……“盲目の嘆き”」」」」」」



 「「「!!!」」」



 すると無数のロストの体から、黒い瘴気が溢れ出し、瞬く間に周囲が暗闇に覆われてしまった。



 「これじゃあ何処にいるのかも分からない上に、例え見つけたとしてもそれが本物かどうか分からない!!」



 しかし、飛び降りてしまった真緒とサタニアには今更どうする事も出来ない。勢いのまま、ロストが待ち構える暗闇に飛び込んだ。



 「いったい何処に……」



 「ここですよ」



 「!!!」



 突然、背後から声を掛けられた真緒。慌てて振り返り、剣で斬り付けるも、それはロストが生み出した偽物だった。



 「本当はこっちですよ」



 「そこか!!」



 声のした方向に剣を振るう真緒。だが、またしても斬り付けたのは偽物だった。



 「本当の本当はこっちですよ」



 「うぉおおおおお!!!」



 三度目の正直。真緒は声のした方向に剣を振るう。するとその先にいたのはロストでは無く、同じく偽物を斬っていたサタニアだった。



 「サタニア、危ない!!」



 「!!?」



 『全く世話が掛かりますね~』



 真緒の剣がサタニアに当たる直前、エジタスの転移魔法により、サタニアは一瞬にしてその場から姿を消した。そしてその背後にいたロストをそのまま斬り付ける事に成功するが、残念ながらそれも偽物だった。



 「あ、ありがとうございます師匠」



 真緒がエジタスに礼を述べていると、隣にサタニアが転移して来た。



 「サタニア、大丈夫だった?」



 「うん、そっちは?」



 「こっちも大丈夫……だけど、これじゃあいつまで経っても埒が明かないよ」



 「せめてこの暗闇だけでも晴らす事が出来れば……そうだ!!」



 何かを閃いたサタニアは、暗闇の外にいるであろうシーラに呼び掛ける。



 「シーラ!! 今すぐ僕達に向かって“ギガフレイム”を放って!!」



 「魔王様!? で、ですが……」



 「いいからやって!!」



 「わ、分かりました。“ギガフレイム”!!」



 サタニアに言われた通り、シーラは真緒達目掛けて大きな火の玉を放った。そして目の前の暗闇の中から、シーラの火の玉が姿を現した。



 「“アクアスプラッシュ”!!」



 するとサタニアは、火の玉に掌を向けて、そこから水属性魔法を放った。無数の水の塊が掌から放たれ、シーラの火の玉とぶつかり合う。その瞬間火の玉は蒸発し、大きさに乗じた凄まじい気流が発生。周りの瘴気を吹き飛ばした。



 「やった!!」



 「でも……これは……」



 暗闇が晴れ、喜ぶ真緒達だったが既に周りはロスト達に囲まれていた。



 「転移魔法は一人しか転移させられない……」



 「つまり、どちらか一方が取り残され、この集団と戦う事になる……」



 「察しが良いですね。それでは、大人しく死んで頂きましょう」



 「魔王様!!」



 「「!!!」」



 どちらか一方は生き残れない。真緒達が覚悟を決めた次の瞬間!!



 「こ、これはいったい何の真似ですか……!!?」



 真緒達を取り囲んでいた筈のロスト達。それら全てがたった一人、同じロストに攻撃していた。裏切り。そもそもロストが生み出した偽物である為、裏切る筈が無い。にも関わらず、ロストは同じ姿の偽物に攻撃された。



 『悪いが“エジタス”は、あいつ一人だけじゃ無いんだ』
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