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最終章 少女と道化師の物語
勇者 VS 魔王(後編)
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「(どうしよう……目が霞んで来た……)」
ロストに背中を刺された真緒。何とか止血する事は出来たが、それまでに血を流し過ぎたのか、目の前がボヤけ始めていた。
「(……いよいよ本格的に危なくなって来たな……だけど……ここで諦める訳にはいかない!!)」
目を擦り、息を整え、飛びそうになる意識を抑えながら剣を構える。
「どうやら大人しく殺されるつもりは無いみたいですね」
「こちらは生憎、“諦める”という選択肢は持ち合わせていないんですよ」
「理解出来ません。この絶望的な状況に立たされて尚、戦おうとする意思を見せるなど……」
「理屈じゃないんだよ。ここで私が倒れてしまったら、今まで紡いで来た絆や想いが壊れてしまう……そんな気がする。それに……」
「?」
「あなたを倒さないと、あの世にいる皆に顔向け出来ない」
そう言うと真緒は走り出した。目の前のロスト目掛けて一気に距離を詰めていく。しかし怪我を負っている影響で、その動きは遅く、ロストからすれば欠伸が出る程であった。
「愚かですね。大人しく殺されれば、それ以上の苦痛を感じる事は無かったでしょうに……」
呆れた表情を浮かべながら、迫り来る真緒に合わせて剣を振るう。それに対して真緒は剣で弾こうとする。
「……っ!!!」
が、その直後刺された背中の傷が急激に痛み、思わず真緒は硬直してしまった。
「(しまった!! 殺られる!!)」
弾こうにも剣が間に合わない。避けようにもそんな時間は無い。今度こそ、真緒の命運は尽きた。ロストの剣が真緒の首筋に触れる。
「……!!?」
次の瞬間、何故かロストの剣が動きを止めた。いったい何故という疑問を浮かべる前に、真緒は素早くロストの体を剣で斬り付け、その場から急いで離れ、ロストから距離を取った。
「…………?」
そんな中、当のロストは付けられた傷など気にも止めず、自身の右腕をじっと見つめながら動作を確認する様に、手首を動かしていた。
「(体に違和感を感じた気がしたけど……今は何も感じない。気のせいだった……? それとも右腕は付けたばかりだから、まだ修復しきれていなかった?)」
あれこれ可能性を考えるが、明確な答えが出る事は無かった。やがて、今は考えるべき時じゃないと結論付けた。
「はぁ……はぁ……相手が躊躇してくれたお陰でギリギリ助かったけど……そう何度も同じ奇跡が起こる訳が無い。次からはもっと慎重に行動しないと……」
真緒は一定の距離を保ちながら、その周囲を歩き始める。対してロストは目線で追いながらも、決して体は動かさないでいた。そして真緒がロストの目が届かない背後に回ったその時!!
「はぁあああああ!!!」
真緒は走り出し、ロストとの距離を一気に詰め始めた。
「またそれですか、ワンパターンですね。同じ手が二度通じると思っているのなら大間違いです」
そう言うとロストは、背後に近付いて来る真緒の気配を感じ取りながら、間合いに入ったその瞬間、百八十度回転し、真緒目掛けて剣を薙ぎ払った。
今度は直前で止まる事無く、真緒の体を捉えた。ロストの剣に斬られ、真緒の体は真っ二つになった。しかし、ここでロストはまたしても違和感を感じた。但し今度は自分の体では無く、“真緒”の体に対してだった。
「(手応えがまるで無い……これはまさか……)」
ロストの予想通り、真っ二つになった真緒の体は次第に歪み始め、まるで“幻”の様に消え去った。すると呆気に取られているロストの背後に、本物の真緒が姿を現した。
「“サン・ミラージュ”……周囲を歩いていたのは、何も背後を取る為だけじゃない。太陽を背にして幻を作り出す為でもあった。そしてこれで終わりです!!」
完全に背後を取った。急いでロストが振り返ったとしても間に合わない。真緒は両手で確りと剣を握り締め、ロスト目掛けて渾身の一撃を叩き込む。
「スキル“ロストブレイク”!!」
「少しは頭を使ったみたいですが、まだまだですね」
「!!!」
しかし、真緒の剣がロストに当たる事は無かった。何故なら、ロストの斬られた翼から生えて来た黒い二本の手が、真緒の剣を掴んでいたからだ。
「ぐぐぐっ!!!」
何とか無理矢理押し込もうとするが、剣はびくともしなかった。そしてロストはゆっくりとこちら側に振り返った。
「残念ですが、これで終わりです」
そう言うとロストは左腕を肥大化させた。
「あなたとの戦いは、中々楽しかったですよ」
「!!!」
「スキル“サタンインパクト”」
ロストの左腕が真緒目掛けて勢い良く振り下ろされた。真緒は避ける事が出来ず、そのまま叩き潰されてしまった。更に追い討ちを掛ける様に叩き付けた足場周辺が大爆発を起こした。
「…………」
黒煙が舞い上がる中、ロストは真緒の死を確認するべく拳を振り下ろしたまま、収まるのを待った。やがて黒煙は収まり、状況を確認する事が出来た。そしてそこには……焼け焦げた右足と真緒の剣だけが残されていた。
「今度こそ、死にましたか……」
「いや~、漸く終わりましたか~。長かったですね~」
「…………」
無事に真緒が死んだ事に安堵していると、超巨大な体のエジタスがやって来た。口調から察するに道化師のエジタスだった。
「お疲れ様でした~、大変でしたね~。それでは早速私と戦って頂きましょうか~」
「次はあなたですか……別に問題はありません。例えこの体が殺られようとも、再びあなたの体を乗っ取ればいい話ですからね」
「でも、もうちょっと格好いい倒し方は出来なかったんですか~。最後の戦いにしては、何だか盛り上がりに欠けましたよ~」
ロストの話を無視する道化師のエジタス。それどころか、目線すら合っていなかった。さすがのロストも無視されるとは思っていなかったのか、今度は強く言葉を掛けた。
「何処を見て話をしているんですか。私はこっちですよ」
「え~? あぁ、何を言ってるんですか~。私はこの戦いの勝者に話し掛けているんですよ~。どうして敗者に話し掛けないといけないんですか~?」
「何を言ってるんですか? 見ていなかったんですか? 勝ったのは私ですよ?」
道化師のエジタスが何を言っているのか、訳が分からなかった。そんなロストの様子を見て、道化師のエジタスが深い溜め息を漏らす。
「はぁ~、まさか気が付いていないとは……そもそもあの爆発で右足だけが残るなんて事が、本当にあると思っているんですか~?」
「え?」
「よく見て下さいよ~、あの“右足”……見覚えありませんか~?」
そう言う道化師のエジタスに従い、ロストは焼け焦げた右足を今一度見つめる。その時、ロストの脳裏にある出来事が過る。それは真緒に斬り飛ばされた自分の“右足”。
「ま、まさかそんな……」
真緒の剣が落ちていた為、てっきり真緒の右足だと思い込んでしまった。まさかあの土壇場で、唯一の武器を手放す選択をする者などいるだろうか。
そんなあり得ない可能性を視野に入れていなかった事もあり、ロストはすっかり真緒が死んだと思い込んでいた。しかし、事実は違った。
そして更に気が付く。先程まで落ちていた筈の剣が無くなっている事に……。
「“サン・ミラージュ”」
「!!!」
背後から声が聞こえる。慌てて振り返ろうとするロストだったが、既に遅かった。背後からまるで霧の様に姿を現した真緒が、ロスト目掛けて今度こそ渾身の一撃を叩き込む。
「スキル“フィーリングストライク”!!」
「ぐぼはぁ!!!」
これまでの感情を込めた正真正銘最後の一撃はロストを完全に捉え、衝撃によって遠くまで吹き飛ばした。そしてそのまま仰向けになって倒れ、動かなくなった。
「はぁ……はぁ……やった……勝った……」
勝てた事に安堵したのか、急に足腰に力が入らなくなり、剣を杖代わりにする事でやっと立つ事が出来た。
「う~ん、喜んでいる所悪いですが、次は私と戦って頂きますよ~」
「……分かって……いますよ」
喜ぶのも束の間、今度はエジタスとの戦いが始まろうとしていた。しかし真緒はボロボロなのに対して、エジタスはピンピンしている。最早、勝敗は目に見えていた。今にも二人の戦いが始まろうとしたその時!!
「がぁああああああああああ!!!」
「「!!?」」
倒したと思われたロストが突然起き上がった。しかし、先程までのクールな雰囲気とは裏腹に息遣いを荒くしながら、血走った目でこちらを睨んでいた。
「ふぅ!! ふぅ!! ふぅ!!」
「おやおや~、どうやらまだ戦いは続く様ですよ~。頑張って下さいね~」
「そんな……」
全てを出し切った。それでも届かなかった。真緒にはもう戦う気力すら残されていなかった。
「この糞生命体がぁああああ!! 今すぐこの手で捻り潰してやる!!」
一歩も動けない真緒を尻目に、ロストはどんどん近付いて来る。何とか剣を持ち上げて抵抗しようとするが、両手が震えて持ち上げる事すらままならなかった。そして遂にロストが真緒の目の前まで来た。
「死ねぇええええええええ!!!」
「ハナちゃん……リーマ……フォルスさん……サタニア……ごめん……」
振り上げられるロストの剣。悔しさと後悔から真緒は目を瞑り、涙を流しながら仲間達に謝罪した。そしてロストの剣が遂に真緒目掛けて勢い良く振り下ろされた。
「…………?」
いつまで経っても痛みが襲って来ない。もしかしてもう死んだのか。いや、刺された背中はまだ痛む。つまりまだ生きている。しかし、いったいどうして。そんな疑問を抱く真緒はそっと目を開ける。するとそこには……。
「………」
剣を振り下ろすモーションで白目を向いて固まっているロストの姿があった。
「これは!!?」
真緒が困惑していると、ロストの目に正気が戻る。しかし、何故かロストは剣を振り下ろさず、真緒の肩に手を置いた。そしてその表情はこれまでに感じた事の無い程、優しさに満ちていた。
「待たせたね、マオ」
「え……?」
その声には聞き覚えがあった。ずっと待っていた。必ず戻って来ると信じていた。真緒のライバルにして、唯一無二の親友。
「……サタニア……?」
そう問い掛ける真緒にサタニアは頷き、微笑み返すのであった。
ロストに背中を刺された真緒。何とか止血する事は出来たが、それまでに血を流し過ぎたのか、目の前がボヤけ始めていた。
「(……いよいよ本格的に危なくなって来たな……だけど……ここで諦める訳にはいかない!!)」
目を擦り、息を整え、飛びそうになる意識を抑えながら剣を構える。
「どうやら大人しく殺されるつもりは無いみたいですね」
「こちらは生憎、“諦める”という選択肢は持ち合わせていないんですよ」
「理解出来ません。この絶望的な状況に立たされて尚、戦おうとする意思を見せるなど……」
「理屈じゃないんだよ。ここで私が倒れてしまったら、今まで紡いで来た絆や想いが壊れてしまう……そんな気がする。それに……」
「?」
「あなたを倒さないと、あの世にいる皆に顔向け出来ない」
そう言うと真緒は走り出した。目の前のロスト目掛けて一気に距離を詰めていく。しかし怪我を負っている影響で、その動きは遅く、ロストからすれば欠伸が出る程であった。
「愚かですね。大人しく殺されれば、それ以上の苦痛を感じる事は無かったでしょうに……」
呆れた表情を浮かべながら、迫り来る真緒に合わせて剣を振るう。それに対して真緒は剣で弾こうとする。
「……っ!!!」
が、その直後刺された背中の傷が急激に痛み、思わず真緒は硬直してしまった。
「(しまった!! 殺られる!!)」
弾こうにも剣が間に合わない。避けようにもそんな時間は無い。今度こそ、真緒の命運は尽きた。ロストの剣が真緒の首筋に触れる。
「……!!?」
次の瞬間、何故かロストの剣が動きを止めた。いったい何故という疑問を浮かべる前に、真緒は素早くロストの体を剣で斬り付け、その場から急いで離れ、ロストから距離を取った。
「…………?」
そんな中、当のロストは付けられた傷など気にも止めず、自身の右腕をじっと見つめながら動作を確認する様に、手首を動かしていた。
「(体に違和感を感じた気がしたけど……今は何も感じない。気のせいだった……? それとも右腕は付けたばかりだから、まだ修復しきれていなかった?)」
あれこれ可能性を考えるが、明確な答えが出る事は無かった。やがて、今は考えるべき時じゃないと結論付けた。
「はぁ……はぁ……相手が躊躇してくれたお陰でギリギリ助かったけど……そう何度も同じ奇跡が起こる訳が無い。次からはもっと慎重に行動しないと……」
真緒は一定の距離を保ちながら、その周囲を歩き始める。対してロストは目線で追いながらも、決して体は動かさないでいた。そして真緒がロストの目が届かない背後に回ったその時!!
「はぁあああああ!!!」
真緒は走り出し、ロストとの距離を一気に詰め始めた。
「またそれですか、ワンパターンですね。同じ手が二度通じると思っているのなら大間違いです」
そう言うとロストは、背後に近付いて来る真緒の気配を感じ取りながら、間合いに入ったその瞬間、百八十度回転し、真緒目掛けて剣を薙ぎ払った。
今度は直前で止まる事無く、真緒の体を捉えた。ロストの剣に斬られ、真緒の体は真っ二つになった。しかし、ここでロストはまたしても違和感を感じた。但し今度は自分の体では無く、“真緒”の体に対してだった。
「(手応えがまるで無い……これはまさか……)」
ロストの予想通り、真っ二つになった真緒の体は次第に歪み始め、まるで“幻”の様に消え去った。すると呆気に取られているロストの背後に、本物の真緒が姿を現した。
「“サン・ミラージュ”……周囲を歩いていたのは、何も背後を取る為だけじゃない。太陽を背にして幻を作り出す為でもあった。そしてこれで終わりです!!」
完全に背後を取った。急いでロストが振り返ったとしても間に合わない。真緒は両手で確りと剣を握り締め、ロスト目掛けて渾身の一撃を叩き込む。
「スキル“ロストブレイク”!!」
「少しは頭を使ったみたいですが、まだまだですね」
「!!!」
しかし、真緒の剣がロストに当たる事は無かった。何故なら、ロストの斬られた翼から生えて来た黒い二本の手が、真緒の剣を掴んでいたからだ。
「ぐぐぐっ!!!」
何とか無理矢理押し込もうとするが、剣はびくともしなかった。そしてロストはゆっくりとこちら側に振り返った。
「残念ですが、これで終わりです」
そう言うとロストは左腕を肥大化させた。
「あなたとの戦いは、中々楽しかったですよ」
「!!!」
「スキル“サタンインパクト”」
ロストの左腕が真緒目掛けて勢い良く振り下ろされた。真緒は避ける事が出来ず、そのまま叩き潰されてしまった。更に追い討ちを掛ける様に叩き付けた足場周辺が大爆発を起こした。
「…………」
黒煙が舞い上がる中、ロストは真緒の死を確認するべく拳を振り下ろしたまま、収まるのを待った。やがて黒煙は収まり、状況を確認する事が出来た。そしてそこには……焼け焦げた右足と真緒の剣だけが残されていた。
「今度こそ、死にましたか……」
「いや~、漸く終わりましたか~。長かったですね~」
「…………」
無事に真緒が死んだ事に安堵していると、超巨大な体のエジタスがやって来た。口調から察するに道化師のエジタスだった。
「お疲れ様でした~、大変でしたね~。それでは早速私と戦って頂きましょうか~」
「次はあなたですか……別に問題はありません。例えこの体が殺られようとも、再びあなたの体を乗っ取ればいい話ですからね」
「でも、もうちょっと格好いい倒し方は出来なかったんですか~。最後の戦いにしては、何だか盛り上がりに欠けましたよ~」
ロストの話を無視する道化師のエジタス。それどころか、目線すら合っていなかった。さすがのロストも無視されるとは思っていなかったのか、今度は強く言葉を掛けた。
「何処を見て話をしているんですか。私はこっちですよ」
「え~? あぁ、何を言ってるんですか~。私はこの戦いの勝者に話し掛けているんですよ~。どうして敗者に話し掛けないといけないんですか~?」
「何を言ってるんですか? 見ていなかったんですか? 勝ったのは私ですよ?」
道化師のエジタスが何を言っているのか、訳が分からなかった。そんなロストの様子を見て、道化師のエジタスが深い溜め息を漏らす。
「はぁ~、まさか気が付いていないとは……そもそもあの爆発で右足だけが残るなんて事が、本当にあると思っているんですか~?」
「え?」
「よく見て下さいよ~、あの“右足”……見覚えありませんか~?」
そう言う道化師のエジタスに従い、ロストは焼け焦げた右足を今一度見つめる。その時、ロストの脳裏にある出来事が過る。それは真緒に斬り飛ばされた自分の“右足”。
「ま、まさかそんな……」
真緒の剣が落ちていた為、てっきり真緒の右足だと思い込んでしまった。まさかあの土壇場で、唯一の武器を手放す選択をする者などいるだろうか。
そんなあり得ない可能性を視野に入れていなかった事もあり、ロストはすっかり真緒が死んだと思い込んでいた。しかし、事実は違った。
そして更に気が付く。先程まで落ちていた筈の剣が無くなっている事に……。
「“サン・ミラージュ”」
「!!!」
背後から声が聞こえる。慌てて振り返ろうとするロストだったが、既に遅かった。背後からまるで霧の様に姿を現した真緒が、ロスト目掛けて今度こそ渾身の一撃を叩き込む。
「スキル“フィーリングストライク”!!」
「ぐぼはぁ!!!」
これまでの感情を込めた正真正銘最後の一撃はロストを完全に捉え、衝撃によって遠くまで吹き飛ばした。そしてそのまま仰向けになって倒れ、動かなくなった。
「はぁ……はぁ……やった……勝った……」
勝てた事に安堵したのか、急に足腰に力が入らなくなり、剣を杖代わりにする事でやっと立つ事が出来た。
「う~ん、喜んでいる所悪いですが、次は私と戦って頂きますよ~」
「……分かって……いますよ」
喜ぶのも束の間、今度はエジタスとの戦いが始まろうとしていた。しかし真緒はボロボロなのに対して、エジタスはピンピンしている。最早、勝敗は目に見えていた。今にも二人の戦いが始まろうとしたその時!!
「がぁああああああああああ!!!」
「「!!?」」
倒したと思われたロストが突然起き上がった。しかし、先程までのクールな雰囲気とは裏腹に息遣いを荒くしながら、血走った目でこちらを睨んでいた。
「ふぅ!! ふぅ!! ふぅ!!」
「おやおや~、どうやらまだ戦いは続く様ですよ~。頑張って下さいね~」
「そんな……」
全てを出し切った。それでも届かなかった。真緒にはもう戦う気力すら残されていなかった。
「この糞生命体がぁああああ!! 今すぐこの手で捻り潰してやる!!」
一歩も動けない真緒を尻目に、ロストはどんどん近付いて来る。何とか剣を持ち上げて抵抗しようとするが、両手が震えて持ち上げる事すらままならなかった。そして遂にロストが真緒の目の前まで来た。
「死ねぇええええええええ!!!」
「ハナちゃん……リーマ……フォルスさん……サタニア……ごめん……」
振り上げられるロストの剣。悔しさと後悔から真緒は目を瞑り、涙を流しながら仲間達に謝罪した。そしてロストの剣が遂に真緒目掛けて勢い良く振り下ろされた。
「…………?」
いつまで経っても痛みが襲って来ない。もしかしてもう死んだのか。いや、刺された背中はまだ痛む。つまりまだ生きている。しかし、いったいどうして。そんな疑問を抱く真緒はそっと目を開ける。するとそこには……。
「………」
剣を振り下ろすモーションで白目を向いて固まっているロストの姿があった。
「これは!!?」
真緒が困惑していると、ロストの目に正気が戻る。しかし、何故かロストは剣を振り下ろさず、真緒の肩に手を置いた。そしてその表情はこれまでに感じた事の無い程、優しさに満ちていた。
「待たせたね、マオ」
「え……?」
その声には聞き覚えがあった。ずっと待っていた。必ず戻って来ると信じていた。真緒のライバルにして、唯一無二の親友。
「……サタニア……?」
そう問い掛ける真緒にサタニアは頷き、微笑み返すのであった。
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