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私の弟 《有栖》
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授業が終わると、竜之介は私の約束を覚えていてくれて、すぐ教室に迎えにきてくれた。
「ありす、図書館いくでしょ」
廊下から、やわらかい聞き慣れた声。
「有栖!竜之介お兄ちゃんが迎えにきたわよ!」
華ちゃんが冷やかすように言う。
まわりの友だちも、にやにやしながら私のほうを見るので、ちょっと恥ずかしくなってしまう。
「華ちゃん、リュウは弟だよ!
私がお姉ちゃん!」
「だって有栖のほうがいつだって世話を焼かれているじゃない!
どう見たって妹キャラよ」
華ちゃんはクスクス笑う。
そうなのだ、私が何回訂正しても、皆、竜之介が兄で、私が妹だと言う。
それにしても、私たちは仲が良すぎるきょうだいらしい。
同性でも、高校生になれば学校では声もかけあったりしないとか…ましてや異性のきょうだいなんて、家に帰っても知らんぷりらしい。
そんなものなのかな…?
うちがおかしいのだろうか。
うちは…パパとママがいないから…。
「リュウ!みんながからかうから…小さい声で呼んでってば…」
「いいじゃん、俺たちがきょうだいなのは事実だし。俺がシスコンなのは周知だし…」
竜之介は一向に構わないという様子。
「もう……」
私は口を尖らせる。
「はいはい、ご馳走さま! きょうだい仲良しもほどほどにね!じゃあ私は部活行くからまた明日ね、バイバーイ」
ひらひらと手を振って、華ちゃんは軽やかな足取りで行ってしまった。
私はそんな華ちゃんの後ろ姿に小さく手を振り返して見送った。
そして改めて隣の竜之介をみると、彼はいつもどおり涼しい顔で笑っていた。
***
私達は、ふたり並んで歩く。
竜之介が車道側を歩いてくれる。
いつのまに竜之介はこんなに大きくなったのか。
彼の肩までしかない私の頭は彼の横顔を覗き込むにはちょうど良い高さだった。
整った鼻筋、切れ長の目。優しく口角の上がった口元。
すんだ瞳はは今は遠くを見ている。
昔から、私よりもずっと大人びていた彼。
彼が隣にいるだけで、なんだか落ち着く。
でも、時々不安になる。
彼は優しいから、いつも私に歩調を合わせてくれているけれど、本当はもっと早く、もっと行きたい場所があって、遠くへ歩いていけるんじゃないかって。
「ありす、図書館いくでしょ」
廊下から、やわらかい聞き慣れた声。
「有栖!竜之介お兄ちゃんが迎えにきたわよ!」
華ちゃんが冷やかすように言う。
まわりの友だちも、にやにやしながら私のほうを見るので、ちょっと恥ずかしくなってしまう。
「華ちゃん、リュウは弟だよ!
私がお姉ちゃん!」
「だって有栖のほうがいつだって世話を焼かれているじゃない!
どう見たって妹キャラよ」
華ちゃんはクスクス笑う。
そうなのだ、私が何回訂正しても、皆、竜之介が兄で、私が妹だと言う。
それにしても、私たちは仲が良すぎるきょうだいらしい。
同性でも、高校生になれば学校では声もかけあったりしないとか…ましてや異性のきょうだいなんて、家に帰っても知らんぷりらしい。
そんなものなのかな…?
うちがおかしいのだろうか。
うちは…パパとママがいないから…。
「リュウ!みんながからかうから…小さい声で呼んでってば…」
「いいじゃん、俺たちがきょうだいなのは事実だし。俺がシスコンなのは周知だし…」
竜之介は一向に構わないという様子。
「もう……」
私は口を尖らせる。
「はいはい、ご馳走さま! きょうだい仲良しもほどほどにね!じゃあ私は部活行くからまた明日ね、バイバーイ」
ひらひらと手を振って、華ちゃんは軽やかな足取りで行ってしまった。
私はそんな華ちゃんの後ろ姿に小さく手を振り返して見送った。
そして改めて隣の竜之介をみると、彼はいつもどおり涼しい顔で笑っていた。
***
私達は、ふたり並んで歩く。
竜之介が車道側を歩いてくれる。
いつのまに竜之介はこんなに大きくなったのか。
彼の肩までしかない私の頭は彼の横顔を覗き込むにはちょうど良い高さだった。
整った鼻筋、切れ長の目。優しく口角の上がった口元。
すんだ瞳はは今は遠くを見ている。
昔から、私よりもずっと大人びていた彼。
彼が隣にいるだけで、なんだか落ち着く。
でも、時々不安になる。
彼は優しいから、いつも私に歩調を合わせてくれているけれど、本当はもっと早く、もっと行きたい場所があって、遠くへ歩いていけるんじゃないかって。
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