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電話 《有栖》
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自室にて。
私は記者の男性がバッグに差し入れた名刺の連絡先を見ていた。
どうしよう……。
兄に嘘をついたまま連絡して本当に良いものだろうか?竜之介も昨日から私の言動をな逃げなくチェックしているような気がする。(華ちゃんたちのお茶会のことを話さなかったことも根に持っている)
私は意を決して、震える指で、名刺に記載された番号をスマホに打ち込んでいく。
自分の鼓動が聞こえそうなほど緊張している。
「はい」
とすぐに電話が繋がった。
「あ、あの……」
私が躊躇っていると、
「有栖ちゃんだね…
待ってたよ」
と、記者の男性は面白そうに笑った。
「まあ、安心してよ……協力してくれれば、悪いようにはしないさ、でも一度会いたいかな。写真、確認したいよね?」
「……はい」
やっぱり、どうしても竜之介や兄に知られたくない。
「じゃあさ、明日の夕方……時間ある?ちょっとお茶でもしようよ。場所はこの間、君がいたカフェでどう?」
記者の男性は粘りつくような湿度を帯びた声で言う。
「……わかりました」
時間を決め、
電話を切って、私はスマホを握り締めたままへたり込んだ。
ルルルル…
「ひゃっ!」
切ったスマホがすぐさま着信を知らせ、びっくりして変な声が出てしまう。
画面を見ると、相手は桃くんだった。
「……は、は、はい…!」
「有栖ちゃん、今よかった?」
「う、うん……」
「声がうわずってる?なんかあった?」
桃くんは人の気配を察する天才だ。
「だ、大丈夫…桃くんこそ、リュウになんか言われた?」
桃くんは家族以外で私たち家族の真実を知っている唯一の人。
「やっぱり有栖ちゃんはお見通しだねー。竜之介には有栖ちゃんには、竜之介からの指示だって言わずに、それとなくなにか聞き出せって言われていたんだけど、ばれちゃうよねー?
有栖ちゃんが華ちゃんたちの女子会から帰ってからなにか様子がよそよそしいって竜之介が心配してた」
私は戸惑って、黙ってしまう。
私が兄や竜之介に言いにくいなら桃くんなら言えるかもって思ったのだろう。
でもこんなことまで桃くんに頼ってしまうなんて。
「なんにもな…」
「有栖ちゃん、オレを巻き込むのは気が引けるとか思ってるなら、それは間違いだよ」
言い終わらないうちに、まるで心のなかのように桃くんが言う。
すこしハスキーなからっとした声が耳に心地よい。
「有栖ちゃん、考えてみて? 有栖ちゃんは自分が好きな人がつらいこと自分に打ち明けてくれたらどう?…うれしくない? 逆につらいことをひみつにされていたらどう?」
「…さみしい……」
「でしょ?」
「有栖ちゃんは今それをオレにしようとしてるの。オレ、イジワルでしょう?こんなふうに有栖ちゃんを責めてさ…オレさ、ドSだから好きな子いじめたくなっちゃうの」
兄や竜之介ではしない言い回しに私は黙る。
「言ったよね、オレが好きなのは、竜之介と有栖ちゃんだって。オレ、好きな子を困らせるの大好き。ついでに言うと」
桃くんが続ける。
「好きな子が自分にだけひみつを、打ち明けてくれる優越感はもっと好き。有栖ちゃんは知ってるよね?」
知ってる。
私はすでに桃くんとひみつを共有しているのだから。
桃くんはこんなふうに言って、私が打ち明けやすくしてくれているのだ。
「ありがとう…」
私はちょっと泣きそうになりながらお礼を言う。
私は記者の男性がバッグに差し入れた名刺の連絡先を見ていた。
どうしよう……。
兄に嘘をついたまま連絡して本当に良いものだろうか?竜之介も昨日から私の言動をな逃げなくチェックしているような気がする。(華ちゃんたちのお茶会のことを話さなかったことも根に持っている)
私は意を決して、震える指で、名刺に記載された番号をスマホに打ち込んでいく。
自分の鼓動が聞こえそうなほど緊張している。
「はい」
とすぐに電話が繋がった。
「あ、あの……」
私が躊躇っていると、
「有栖ちゃんだね…
待ってたよ」
と、記者の男性は面白そうに笑った。
「まあ、安心してよ……協力してくれれば、悪いようにはしないさ、でも一度会いたいかな。写真、確認したいよね?」
「……はい」
やっぱり、どうしても竜之介や兄に知られたくない。
「じゃあさ、明日の夕方……時間ある?ちょっとお茶でもしようよ。場所はこの間、君がいたカフェでどう?」
記者の男性は粘りつくような湿度を帯びた声で言う。
「……わかりました」
時間を決め、
電話を切って、私はスマホを握り締めたままへたり込んだ。
ルルルル…
「ひゃっ!」
切ったスマホがすぐさま着信を知らせ、びっくりして変な声が出てしまう。
画面を見ると、相手は桃くんだった。
「……は、は、はい…!」
「有栖ちゃん、今よかった?」
「う、うん……」
「声がうわずってる?なんかあった?」
桃くんは人の気配を察する天才だ。
「だ、大丈夫…桃くんこそ、リュウになんか言われた?」
桃くんは家族以外で私たち家族の真実を知っている唯一の人。
「やっぱり有栖ちゃんはお見通しだねー。竜之介には有栖ちゃんには、竜之介からの指示だって言わずに、それとなくなにか聞き出せって言われていたんだけど、ばれちゃうよねー?
有栖ちゃんが華ちゃんたちの女子会から帰ってからなにか様子がよそよそしいって竜之介が心配してた」
私は戸惑って、黙ってしまう。
私が兄や竜之介に言いにくいなら桃くんなら言えるかもって思ったのだろう。
でもこんなことまで桃くんに頼ってしまうなんて。
「なんにもな…」
「有栖ちゃん、オレを巻き込むのは気が引けるとか思ってるなら、それは間違いだよ」
言い終わらないうちに、まるで心のなかのように桃くんが言う。
すこしハスキーなからっとした声が耳に心地よい。
「有栖ちゃん、考えてみて? 有栖ちゃんは自分が好きな人がつらいこと自分に打ち明けてくれたらどう?…うれしくない? 逆につらいことをひみつにされていたらどう?」
「…さみしい……」
「でしょ?」
「有栖ちゃんは今それをオレにしようとしてるの。オレ、イジワルでしょう?こんなふうに有栖ちゃんを責めてさ…オレさ、ドSだから好きな子いじめたくなっちゃうの」
兄や竜之介ではしない言い回しに私は黙る。
「言ったよね、オレが好きなのは、竜之介と有栖ちゃんだって。オレ、好きな子を困らせるの大好き。ついでに言うと」
桃くんが続ける。
「好きな子が自分にだけひみつを、打ち明けてくれる優越感はもっと好き。有栖ちゃんは知ってるよね?」
知ってる。
私はすでに桃くんとひみつを共有しているのだから。
桃くんはこんなふうに言って、私が打ち明けやすくしてくれているのだ。
「ありがとう…」
私はちょっと泣きそうになりながらお礼を言う。
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