5 / 11
五話 元公爵令嬢、義弟を無意識に攻略する
「うん、完璧ね」
鏡の前で制服のリボンを結んで、朝の支度は完了。もちろん縦ロールはやめて、髪はせっかくだしストレートに下ろしてみた。
ノエルは直前まで「本当にこのリボンでいいんですか?」と聞いてきたけれど、私はこれがいいのよ。
元公爵令嬢、そしてランカスター伯爵令嬢たるもの、校則はしっかり守らなくちゃね。
「それじゃあ、そろそろ行くわ。馬車の準備をお願いできるかしら」
「かしこまりました。……一昨日までのお嬢様でしたら、正直不安しかなかったですが……。今のお嬢様なら、学園生活も乗り越えられると思っていますよ」
「ノエル……!」
そう言って、ノエルは微かに微笑んでくれた。ノエルのこんな穏やかな表情、セシリアは初めて見たんじゃないかしら……。
なんにせよ、今日は良い日になりそうだわ!
上機嫌で部屋を出る。その直後。
少しだけ不機嫌そうな雰囲気を纏ったギルバートが、私の部屋の前で仁王立ちしていた。
「……もう行くのかよ」
「え、えぇ。ギルバートは来年入学よね? 帰ったら学園の話、たくさんさせてちょうだい。きっと役に立てると思うから」
「……なんか、あんた変わったよな。まぁいいや、はい、これ」
ギルバートがピンクの包み紙を差し出してきた。私はそれを受け取って、早速開封する。
中に入っていたのは……セント・セシリアの模様が刺繍されている、白いハンカチだった。
確かセント・セシリアの花言葉は……『温かい心』とかだったかしら。
「もしかして……これ、私への入学祝い?」
「……だったら悪いかよ。母上達が用意しろって言うから、仕方なくだからな。……まぁ、あんたなんかちょっと変わったし、これくらいならいいかって思っただけだからな! 勘違いすんなよ」
____この子、流石に良い子すぎない!?
言い方はぶっきらぼうだけれど……刺繍はセント・セシリアだから特注だろう。
というかそもそも、あれだけ意地悪してきた相手にプレゼントなんて、良い子すぎるわ……!
私はハンカチを大切にしまってから、ギルバートを思いっきり抱きしめた。
「っ、はぁっ!? ちょ、なにしてっ」
「ギルバート! 本当にありがとう! 私、学園生活頑張るわね!」
「い、いいから離せって……! てか、胸当たって……!」
ギルバートに勢いよく肩を押されてしまったので、ゆっくりと離れる。
そしてギルバートは……真っ赤な顔をして、私から目を逸らすように横を向いていた。
……この子、もしかしてチョロいのでは……?
なんだか心配になっちゃうわ。
「ねぇ、あなたのこと、ギルって呼んでもいいかしら?」
「は? まぁ、別にいいけど……」
「決まりね! じゃあギル、学校が終わったらまた会いましょう!」
私はそう言って、ギルの手を包み込んで笑いかけた。
ギルは硬直しながらも、「お、おぉ……」と返事をしてくれた。
ちょっとは仲良くなれたってことよね!
なんか……あまりにも単純と言うか、流石物語の世界ねって感じだけれど……。
この際そんなことはどうでもいいわ!
そうして私は鼻歌を歌いながら、ギルと別れたのだった。
「いや……流石にずるいだろ、あの笑顔は……。って、いやいや、俺はこんなんじゃ絆されないからな……!」
____ギルが真っ赤な顔で、こんなことを呟いていたなんて知らずに。
***
「着いたわね……!」
馬車を降りてすぐ、目の前にそびえ立つのはそれはもう大きな学園。
花畑はもちろん、花のアーチや噴水、そしてやたらオシャレなベンチなど、とてもメルヘンな庭が見える。
流石王立……というか物語の世界の学園ね……。なんだかとってもロマンチックというか……あんまり学園らしくはないわ……!
でも、ここで頑張るしかないのよね。私はこの世界で生き抜くって決めたんだから。
今度こそ、幸せな卒業パーティーを迎えるために!
「さぁ、行くわよ!」
……こうして私は、学園への第一歩を踏み出したのだった。
鏡の前で制服のリボンを結んで、朝の支度は完了。もちろん縦ロールはやめて、髪はせっかくだしストレートに下ろしてみた。
ノエルは直前まで「本当にこのリボンでいいんですか?」と聞いてきたけれど、私はこれがいいのよ。
元公爵令嬢、そしてランカスター伯爵令嬢たるもの、校則はしっかり守らなくちゃね。
「それじゃあ、そろそろ行くわ。馬車の準備をお願いできるかしら」
「かしこまりました。……一昨日までのお嬢様でしたら、正直不安しかなかったですが……。今のお嬢様なら、学園生活も乗り越えられると思っていますよ」
「ノエル……!」
そう言って、ノエルは微かに微笑んでくれた。ノエルのこんな穏やかな表情、セシリアは初めて見たんじゃないかしら……。
なんにせよ、今日は良い日になりそうだわ!
上機嫌で部屋を出る。その直後。
少しだけ不機嫌そうな雰囲気を纏ったギルバートが、私の部屋の前で仁王立ちしていた。
「……もう行くのかよ」
「え、えぇ。ギルバートは来年入学よね? 帰ったら学園の話、たくさんさせてちょうだい。きっと役に立てると思うから」
「……なんか、あんた変わったよな。まぁいいや、はい、これ」
ギルバートがピンクの包み紙を差し出してきた。私はそれを受け取って、早速開封する。
中に入っていたのは……セント・セシリアの模様が刺繍されている、白いハンカチだった。
確かセント・セシリアの花言葉は……『温かい心』とかだったかしら。
「もしかして……これ、私への入学祝い?」
「……だったら悪いかよ。母上達が用意しろって言うから、仕方なくだからな。……まぁ、あんたなんかちょっと変わったし、これくらいならいいかって思っただけだからな! 勘違いすんなよ」
____この子、流石に良い子すぎない!?
言い方はぶっきらぼうだけれど……刺繍はセント・セシリアだから特注だろう。
というかそもそも、あれだけ意地悪してきた相手にプレゼントなんて、良い子すぎるわ……!
私はハンカチを大切にしまってから、ギルバートを思いっきり抱きしめた。
「っ、はぁっ!? ちょ、なにしてっ」
「ギルバート! 本当にありがとう! 私、学園生活頑張るわね!」
「い、いいから離せって……! てか、胸当たって……!」
ギルバートに勢いよく肩を押されてしまったので、ゆっくりと離れる。
そしてギルバートは……真っ赤な顔をして、私から目を逸らすように横を向いていた。
……この子、もしかしてチョロいのでは……?
なんだか心配になっちゃうわ。
「ねぇ、あなたのこと、ギルって呼んでもいいかしら?」
「は? まぁ、別にいいけど……」
「決まりね! じゃあギル、学校が終わったらまた会いましょう!」
私はそう言って、ギルの手を包み込んで笑いかけた。
ギルは硬直しながらも、「お、おぉ……」と返事をしてくれた。
ちょっとは仲良くなれたってことよね!
なんか……あまりにも単純と言うか、流石物語の世界ねって感じだけれど……。
この際そんなことはどうでもいいわ!
そうして私は鼻歌を歌いながら、ギルと別れたのだった。
「いや……流石にずるいだろ、あの笑顔は……。って、いやいや、俺はこんなんじゃ絆されないからな……!」
____ギルが真っ赤な顔で、こんなことを呟いていたなんて知らずに。
***
「着いたわね……!」
馬車を降りてすぐ、目の前にそびえ立つのはそれはもう大きな学園。
花畑はもちろん、花のアーチや噴水、そしてやたらオシャレなベンチなど、とてもメルヘンな庭が見える。
流石王立……というか物語の世界の学園ね……。なんだかとってもロマンチックというか……あんまり学園らしくはないわ……!
でも、ここで頑張るしかないのよね。私はこの世界で生き抜くって決めたんだから。
今度こそ、幸せな卒業パーティーを迎えるために!
「さぁ、行くわよ!」
……こうして私は、学園への第一歩を踏み出したのだった。
あなたにおすすめの小説
悪役令息の婚約者になりまして
どくりんご
恋愛
婚約者に出逢って一秒。
前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。
その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。
彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。
この思い、どうすれば良いの?
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
今度は、私の番です。
宵森みなと
恋愛
『この人生、ようやく私の番。―恋も自由も、取り返します―』
結婚、出産、子育て――
家族のために我慢し続けた40年の人生は、
ある日、検査結果も聞けないまま、静かに終わった。
だけど、そのとき心に残っていたのは、
「自分だけの自由な時間」
たったそれだけの、小さな夢だった
目を覚ましたら、私は異世界――
伯爵家の次女、13歳の少女・セレスティアに生まれ変わっていた。
「私は誰にも従いたくないの。誰かの期待通りに生きるなんてまっぴら。自分で、自分の未来を選びたい。だからこそ、特別科での学びを通して、力をつける。選ばれるためじゃない、自分で選ぶために」
自由に生き、素敵な恋だってしてみたい。
そう決めた私は、
だって、もう我慢する理由なんて、どこにもないのだから――。
これは、恋も自由も諦めなかった
ある“元・母であり妻だった”女性の、転生リスタート物語。
10日後に婚約破棄される公爵令嬢
雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。
「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」
これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
「姉なんだから妹に従え」と命じる両親。でも、その妹、お父様の子じゃありませんよ?
恋せよ恋
恋愛
「姉なんだから、妹に譲りなさい」
その言葉で婚約者も居場所も奪われた。
でもお父様、お母様。
私に押し付けたその妹、実は不義の子ですよね?
狂った愛の箱庭で虐げられた伯爵令嬢が、
真実という名の火を放ち、自由を掴み取る物語。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@4月1日新刊発売!
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )