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5.突然の過剰供給
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「俺も好きだよ。子供の頃から、ずっと好きだ」
唇を解放したアルトは、リシェルの口端に伝う銀糸を指で拭う。しかしそんな仕草も、今のリシェルには気にする余裕もなかった。
突然の告白は、頭の中を真っ白にさせてしまった。
「え……? え? 好き? え、アルト。気はたしか……?」
ずっと望んでいた言葉だというのに、なんとも悲しいセリフである。さっきまで頑なに拒まれていたのだから当然だろう。
しかし、アルトの頬はわずかに赤く染まっている。そこに揶揄うような雰囲気は見当たらなかった。
「たしかだよ。こんな部屋で言っても説得力ないのはわかってる。だから意地でも抗うつもりだったけど……好きな子に告白されて、しかもあんなに可愛いことをされたら、さすがに我慢できない」
「可愛いこと?」
勢いで告白はしたが、可愛いことをした覚えはない。首を傾げると、アルトは一度視線を彷徨わせる。
「可愛く笑って、可愛くキスしてきただろ」
「そうだっけ……」
情けなさで笑って、やけっぱちなキスをしただけだ。でも、アルトに可愛いと思ってもらえるのは嬉しい。よくわからないが、とりあえず口元が緩んでしまう。
「多分、リシェルが想像するよりずっと、俺は君を可愛いと思ってる。綺麗な茜色の髪も、無邪気な丸い目も、愛らしい笑顔も。それに声だって、全部が可愛くて仕方がない」
突然の甘いセリフにリシェルの思考が固まる。というより、またもやアルトの言葉が理解できなかった。あまりにも予想外の展開が起きると、人は脳の処理速度が落ちてしまうらしい。
数秒経って、やっと理解したリシェルは、慌てて両手のひらで顔を覆った。きっと、真っ赤になっているはずだから。
「待って、受け止めきれない! なに? 突然なんなの!?」
「今まではクレスに遠慮してたからな。これからは積極的に伝えていこうと思う。リシェルが俺以外のことを考えられないように」
「無理無理無理! しんどい!」
実直な彼らしいといえばそうだが、あまりにも過剰供給が過ぎる。これは妄想ではなく公式なのだ。破壊力が強すぎる。とっさに叫んでしまったのも無理はない。だけど、アルトはリシェルが悶える理由を理解できていないらしい。そんな反応を見た彼は、しょんぼりと顔を曇らせてしまった。
「しんどい……? そうか……リシェルを困らせるのは不本意だからな。残念だけど、控えるよ」
「待って! 控えなくていいから! アルトの好きにしていいから!」
当然だが、リシェルの言う「しんどい」とは、苦しかったり疲れるわけではない。キャパオーバーで感情が限界突破しているだけだ。急いで訂正すると、アルトは安心したように表情を緩ませた。
「……よかった。じゃあそうする」
一瞬の間はなんだったのだろう。なにか引っかかるものがあったが、そんな疑問はすぐに吹き飛んでいった。ふわりと微笑んだアルトがリシェルの腰に片腕を回したから。
唇を解放したアルトは、リシェルの口端に伝う銀糸を指で拭う。しかしそんな仕草も、今のリシェルには気にする余裕もなかった。
突然の告白は、頭の中を真っ白にさせてしまった。
「え……? え? 好き? え、アルト。気はたしか……?」
ずっと望んでいた言葉だというのに、なんとも悲しいセリフである。さっきまで頑なに拒まれていたのだから当然だろう。
しかし、アルトの頬はわずかに赤く染まっている。そこに揶揄うような雰囲気は見当たらなかった。
「たしかだよ。こんな部屋で言っても説得力ないのはわかってる。だから意地でも抗うつもりだったけど……好きな子に告白されて、しかもあんなに可愛いことをされたら、さすがに我慢できない」
「可愛いこと?」
勢いで告白はしたが、可愛いことをした覚えはない。首を傾げると、アルトは一度視線を彷徨わせる。
「可愛く笑って、可愛くキスしてきただろ」
「そうだっけ……」
情けなさで笑って、やけっぱちなキスをしただけだ。でも、アルトに可愛いと思ってもらえるのは嬉しい。よくわからないが、とりあえず口元が緩んでしまう。
「多分、リシェルが想像するよりずっと、俺は君を可愛いと思ってる。綺麗な茜色の髪も、無邪気な丸い目も、愛らしい笑顔も。それに声だって、全部が可愛くて仕方がない」
突然の甘いセリフにリシェルの思考が固まる。というより、またもやアルトの言葉が理解できなかった。あまりにも予想外の展開が起きると、人は脳の処理速度が落ちてしまうらしい。
数秒経って、やっと理解したリシェルは、慌てて両手のひらで顔を覆った。きっと、真っ赤になっているはずだから。
「待って、受け止めきれない! なに? 突然なんなの!?」
「今まではクレスに遠慮してたからな。これからは積極的に伝えていこうと思う。リシェルが俺以外のことを考えられないように」
「無理無理無理! しんどい!」
実直な彼らしいといえばそうだが、あまりにも過剰供給が過ぎる。これは妄想ではなく公式なのだ。破壊力が強すぎる。とっさに叫んでしまったのも無理はない。だけど、アルトはリシェルが悶える理由を理解できていないらしい。そんな反応を見た彼は、しょんぼりと顔を曇らせてしまった。
「しんどい……? そうか……リシェルを困らせるのは不本意だからな。残念だけど、控えるよ」
「待って! 控えなくていいから! アルトの好きにしていいから!」
当然だが、リシェルの言う「しんどい」とは、苦しかったり疲れるわけではない。キャパオーバーで感情が限界突破しているだけだ。急いで訂正すると、アルトは安心したように表情を緩ませた。
「……よかった。じゃあそうする」
一瞬の間はなんだったのだろう。なにか引っかかるものがあったが、そんな疑問はすぐに吹き飛んでいった。ふわりと微笑んだアルトがリシェルの腰に片腕を回したから。
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