黒くて甘い彼女の秘密

ドゴイエちまき

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1.リルとルーク

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 茹だる様な季節は過ぎたが、まだ少し日差しがきつい午後。
 リルは家の近くにある木陰で恋人のルークと、のんびり穏やかな時を過ごしている。

 真っ直ぐ切り揃えた腰より少し上の位置にある艶やかな黒髪を、ぬるい風がさらりと靡かせる。
 顔にかかった髪をリルが鬱陶しそうに払うと、ルークが優しい手で直してくれた。

 あたたかく緩められる彼のはしばみ色の瞳につられて、彼女の濡羽色の瞳も優艶ゆうえんに蕩ける。
 ふと、リルは髪の感触を楽しんでいるルークの手に目をやった。よく見ると、薄い擦り傷がある。

「ルーク、また擦り傷出来てる……」
「ああ、こんなのどうってことないって」
「もう……。小さな傷でもバイ菌が入ったら大変なのよ?」

 そう言い終わる前にリルは彼の腕にある小さな傷に手を翳して、治癒の魔法を施す。
 優しい光が傷を包む。どこに傷があったのかと目を擦るくらい、一瞬で皮膚が滑らかに戻っていった。

「ありがとうな」
「いいの、私はルークのために魔法を覚えてるんだから」

 ルークの家は代々狩りで生計を立てている。
 例に漏れず彼も幼い頃から両親と狩りに出て、実践で技術を習得していった。
 ひとり立ちが早いこの国は十六で成人と見做みなされるので、十九のルークはもう一人前の狩人として十分にやっていける。

 それでも真面目で努力家な彼は弓の手入れは勿論のこと、日々の鍛錬を欠かさない。
 そういうところもリルの大好きな一面だけど、少しおっちょこちょいなルークは、狩りでも訓練でも頻繁に小さな傷を作ってしまう。そんなルークの傷を目敏く見つけるのがリルの日課になっている。

 彼と幼馴染としてほぼ同じ時期に生まれたリルは薬師の家に生まれた。
 母の魔力を受け継いだ彼女は家柄もあるけれど、小さな頃から傷の絶えないルークを癒したくて、回復を主としたヒーラーの道を進むことにしたのだ。

「いつも本当にありがと。俺めっちゃ幸せ」

 そう言って抱きしめられたリルは嬉しそうに目を細めて、ルークに身を委ねた。
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