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5.あなたには何が見えてるのかしら
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リルの言葉に反応したかのようにざわりと風が吹いて、彼女のしっとりした黒鍵のような髪がうねる様に月光に揺らめく。
「あなたがルークに近付くと、自然とあなたの名前がルークの口から出るんです。当たり前ですよね、会う回数が増えるほど、人は親近感を覚えます。でも私はルークの口から他の女の名前を聞きたくないんです。私のことだけ見て、私のことだけ考えてほしいんです。これって至極当然のことじゃないですか?」
すらすらと歌うように、でも淡々と話すリルの黒い瞳から光が消えていくようで、ルシアはゾッと後退る。
けれどリルは表情を変えず、怯えるルシアをじっと見つめている。
「あなた……少し、ううん、すごく過激ね。それじゃあ男は逃げてしまうわよ」
「そんなことないです。恋する乙女なら普通ですよね? それにルークは逃げないわ」
「普通じゃないと思うけど……」
小柄で華奢な少女とは思えないリルの異様な威圧感に気圧されながら、ルシアはちらりと退路を確認する。
――この子は危ない。早く逃げないと。
長年旅で培って来たルシアの勘がそう告げている。
だけど艶のない黒い視線が蜘蛛の糸の様に絡んで、足が動かない。
「ねえ、すぐに出て行ってくれませんか?」
「そうね。そろそろ立つつもりだけど……次の町への準備もまだだし、もう少しいるつもりよ」
「すぐに出て行って」
「そこまで言われると傷付くわね」
「私を怒らせるからよ」
「わかったわ。もう彼には話しかけないから……」
「出て行ってと言ってるの」
どうしてわかってくれないの? と小さく呟いたリルの体が淡く光り、驚いたルシアがつい彼女を見ると妖しく光るその目に囚われる。
その瞬間、ルシアの視界から月明かりが消えた。代わりにどす黒い色に覆われ、何やら恐ろしい奇声が脳に響く。
再生される身の毛のよだつ光景。
ルシアの体は大きな悲鳴をあげようと口を開くが、更にリルの魔力が声を奪った。
「幻影の魔法と、呪文封じの魔法をアレンジしちゃった。その人の一番怖いものが見えるんだって。ルシアさんには何が見えてるのかしら」
「あなたがルークに近付くと、自然とあなたの名前がルークの口から出るんです。当たり前ですよね、会う回数が増えるほど、人は親近感を覚えます。でも私はルークの口から他の女の名前を聞きたくないんです。私のことだけ見て、私のことだけ考えてほしいんです。これって至極当然のことじゃないですか?」
すらすらと歌うように、でも淡々と話すリルの黒い瞳から光が消えていくようで、ルシアはゾッと後退る。
けれどリルは表情を変えず、怯えるルシアをじっと見つめている。
「あなた……少し、ううん、すごく過激ね。それじゃあ男は逃げてしまうわよ」
「そんなことないです。恋する乙女なら普通ですよね? それにルークは逃げないわ」
「普通じゃないと思うけど……」
小柄で華奢な少女とは思えないリルの異様な威圧感に気圧されながら、ルシアはちらりと退路を確認する。
――この子は危ない。早く逃げないと。
長年旅で培って来たルシアの勘がそう告げている。
だけど艶のない黒い視線が蜘蛛の糸の様に絡んで、足が動かない。
「ねえ、すぐに出て行ってくれませんか?」
「そうね。そろそろ立つつもりだけど……次の町への準備もまだだし、もう少しいるつもりよ」
「すぐに出て行って」
「そこまで言われると傷付くわね」
「私を怒らせるからよ」
「わかったわ。もう彼には話しかけないから……」
「出て行ってと言ってるの」
どうしてわかってくれないの? と小さく呟いたリルの体が淡く光り、驚いたルシアがつい彼女を見ると妖しく光るその目に囚われる。
その瞬間、ルシアの視界から月明かりが消えた。代わりにどす黒い色に覆われ、何やら恐ろしい奇声が脳に響く。
再生される身の毛のよだつ光景。
ルシアの体は大きな悲鳴をあげようと口を開くが、更にリルの魔力が声を奪った。
「幻影の魔法と、呪文封じの魔法をアレンジしちゃった。その人の一番怖いものが見えるんだって。ルシアさんには何が見えてるのかしら」
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