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5.☆家族にはなれる
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「ほ、本当に、そう思う……?」
涙で声は詰まってしまった。顔だって相当ひどいはずだ。
だけどシリウスは愛おしそうに目を細め、そっと抱きしめてくれた。
突然の抱擁はリィラを驚かせ、胸を大きく高鳴らせる。こんなふうに抱きしめられるのは初めてだったから。
しかしシリウスの腕はあくまで優しく、緊張はすれどリィラは素直に身を任せる。
「ああ、国民がみんな活き活きとしている」
頭のすぐそばで聞こえる声も心地がいい。うっとりと目を閉じるリィラは、ほうっと安堵の息をもらした。
甘やかせてくれて、誰よりも優しく、全肯定してくれる存在。
この際限ない温かさに懐かしさを感じて仕方がなかった。これほど安心のできる存在をリィラは一人しか知らない。
「母上……」
しかし、ぽつりとこぼれた声を聞いたシリウスは、抱きしめていた腕を緩める。そうして覗き込む瞳は不可解と言いたげな色を宿していた。
「その、さっきから母上ってなんだ?」
「シリウスはまるで母上のようだ。お前も、私を娘のように思っているのではないか?」
「どういう思考回路をしているんだ……」
呆れた声を出したシリウスは大きなため息をつく。
頭が痛いと言わんばかりに手を額に当てた彼はどうにも不服そうだ。しかしリィラとしては、わりと本気だった。だからこそ、手を出してこないのではないだろうか。あのプロポーズはきっと気の迷い……そんな疑いもあったからだ。
しかし直後に、ふわりと体が浮いてリィラは小さな悲鳴をあげる。だけど浮遊感は一瞬だった。状況を頭が認識する前に、気づけば彼の膝の上へ乗せられてしまっていた。
シリウスの馬鹿力の前では、小柄なリィラの体重などなんの重みも感じないのかもしれない。
「娘なんて、思ってるわけないだろ」
「ひぅ……っ」
背後から耳元で囁くような声が響いて、リィラの肩が大きく跳ね上がった。くすぐったい感覚が背中をぞわぞわと震わせ、リィラはここから逃げ出そうと身を捩る。
だけど細い体は腰に回された腕でしっかりと抱き止められて、どうやっても抜け出せそうにはなかった。
「シリウス……?」
「俺は君の母上じゃない。だけど、家族にはなれる。出会った日に伝えた言葉は覚えているか?」
「ん、あっ……、ちょっと、なにを……」
シリウスの大きな手がゆるりと薄い腹を撫でる。
ゆるい力でゆっくり往復する指は妙にこそばゆく、体の奥からじわじわと抗えない熱がこみ上げてきた。
「まさか覚えていないのか?」
戸惑うリィラの肌を撫でる手は止まらず、シリウスは軽く耳に噛みつく。そのせいでまた体が大げさに跳ねてしまった。
涙で声は詰まってしまった。顔だって相当ひどいはずだ。
だけどシリウスは愛おしそうに目を細め、そっと抱きしめてくれた。
突然の抱擁はリィラを驚かせ、胸を大きく高鳴らせる。こんなふうに抱きしめられるのは初めてだったから。
しかしシリウスの腕はあくまで優しく、緊張はすれどリィラは素直に身を任せる。
「ああ、国民がみんな活き活きとしている」
頭のすぐそばで聞こえる声も心地がいい。うっとりと目を閉じるリィラは、ほうっと安堵の息をもらした。
甘やかせてくれて、誰よりも優しく、全肯定してくれる存在。
この際限ない温かさに懐かしさを感じて仕方がなかった。これほど安心のできる存在をリィラは一人しか知らない。
「母上……」
しかし、ぽつりとこぼれた声を聞いたシリウスは、抱きしめていた腕を緩める。そうして覗き込む瞳は不可解と言いたげな色を宿していた。
「その、さっきから母上ってなんだ?」
「シリウスはまるで母上のようだ。お前も、私を娘のように思っているのではないか?」
「どういう思考回路をしているんだ……」
呆れた声を出したシリウスは大きなため息をつく。
頭が痛いと言わんばかりに手を額に当てた彼はどうにも不服そうだ。しかしリィラとしては、わりと本気だった。だからこそ、手を出してこないのではないだろうか。あのプロポーズはきっと気の迷い……そんな疑いもあったからだ。
しかし直後に、ふわりと体が浮いてリィラは小さな悲鳴をあげる。だけど浮遊感は一瞬だった。状況を頭が認識する前に、気づけば彼の膝の上へ乗せられてしまっていた。
シリウスの馬鹿力の前では、小柄なリィラの体重などなんの重みも感じないのかもしれない。
「娘なんて、思ってるわけないだろ」
「ひぅ……っ」
背後から耳元で囁くような声が響いて、リィラの肩が大きく跳ね上がった。くすぐったい感覚が背中をぞわぞわと震わせ、リィラはここから逃げ出そうと身を捩る。
だけど細い体は腰に回された腕でしっかりと抱き止められて、どうやっても抜け出せそうにはなかった。
「シリウス……?」
「俺は君の母上じゃない。だけど、家族にはなれる。出会った日に伝えた言葉は覚えているか?」
「ん、あっ……、ちょっと、なにを……」
シリウスの大きな手がゆるりと薄い腹を撫でる。
ゆるい力でゆっくり往復する指は妙にこそばゆく、体の奥からじわじわと抗えない熱がこみ上げてきた。
「まさか覚えていないのか?」
戸惑うリィラの肌を撫でる手は止まらず、シリウスは軽く耳に噛みつく。そのせいでまた体が大げさに跳ねてしまった。
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