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10.シリウスの実情
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箍が外れてしまった。
ソファで貪ったあとベッドに移り、無垢な体に快楽を刻みつけた。
隣で眠る想い人を見つめるシリウスは思わず苦笑する。
やや申し訳ない気持ちで細い肩にブランケットを引き上げれば、眠りながらもリィラはこちらへ身を寄せてくる。
なんとも純粋な表情だ。先ほどまで、泣きながら喘いでいたとはとても思えない。
穢れない雪のように白い肌も、黒檀のような黒髪もうっとりするほど美しい。彼女の纏う色彩は祖国では見られないものだ。
それにしても、とシリウスは思う。まさかこちらが陥落させられるとは予想外だった。
一目惚れしたのは事実だ。小柄な体で一生懸命に威厳を保とうとしている姿勢も好ましく映った。
しかし、勇者と担ぎ上げられたのには事情がある。
力技でも色仕掛けでもどちらでもかまわない。とにかく魔王を陥落させること。
それがシリウスに課せられた使命だった。
まだ就任して間もない魔王が若い女だということは、セフィドの中枢でも知られていることだ。
メランは資源も自然も豊かな国である。貴重な宝石や、手を加えなくとも飲める水はこちらの地では珍しいものではない。
けれども侵略などめっそうもなかった。魔法を操る魔族たちの力は強大で、争いになるとセフィドには分が悪いからだ。
そんなある日、シリウスに白羽の矢が立った。
生まれ持った怪力が噂になり、国のお偉方の耳に入ったのだとか。しかも幼い頃から身につけていた腕輪に伝説の勇者の紋様が刻まれていたのだから、それはもう大変な騒ぎになってしまったのだ。
シリウス自身は先祖代々伝わる守りの腕輪としか知らなかったし、亡くなった母からもそんな話は聞いたことがなかった。まさに寝耳に水である。
しかし、ここ数年の悩みから解放された欲深な宰相たちは歓喜に震え、意気揚々とシリウスに任務を課せた。
命じられた時は馬鹿馬鹿しいと思ったものだが、下層の民であるシリウスに拒否権などない。セフィドにおいてもっとも軽んじられる身分である。
とりあえず魔王に会って、形だけの交渉でもして日常に戻ろう。そんなやる気のない考えでメランを訪れることにした。
だがリィラを見た瞬間、この任務を与えた老人たちに感謝をしてしまった。
自分は彼女に出会うために生きてきた。そう思えて仕方がなかったのだ。
出会った日を懐かしく思い、すぐそばにある艶やかな黒髪に指を通す。ぴくりとまぶたが震え、ゆっくりと開かれる鮮やかな紅い瞳。
リィラの目にはしっかりとシリウスが映っている。なのに反応はない。目覚めたばかりの頭は状況を認識していないのだろう。
「おはよう、リィラ」
「おは……?」
甘く微笑んでみせると、白い頬がみるみるうちに赤く染まっていく。
「あ、わ、わ……私、は……」
状況を把握はできたようだが、どうやら心がついていかないらしい。
ソファで貪ったあとベッドに移り、無垢な体に快楽を刻みつけた。
隣で眠る想い人を見つめるシリウスは思わず苦笑する。
やや申し訳ない気持ちで細い肩にブランケットを引き上げれば、眠りながらもリィラはこちらへ身を寄せてくる。
なんとも純粋な表情だ。先ほどまで、泣きながら喘いでいたとはとても思えない。
穢れない雪のように白い肌も、黒檀のような黒髪もうっとりするほど美しい。彼女の纏う色彩は祖国では見られないものだ。
それにしても、とシリウスは思う。まさかこちらが陥落させられるとは予想外だった。
一目惚れしたのは事実だ。小柄な体で一生懸命に威厳を保とうとしている姿勢も好ましく映った。
しかし、勇者と担ぎ上げられたのには事情がある。
力技でも色仕掛けでもどちらでもかまわない。とにかく魔王を陥落させること。
それがシリウスに課せられた使命だった。
まだ就任して間もない魔王が若い女だということは、セフィドの中枢でも知られていることだ。
メランは資源も自然も豊かな国である。貴重な宝石や、手を加えなくとも飲める水はこちらの地では珍しいものではない。
けれども侵略などめっそうもなかった。魔法を操る魔族たちの力は強大で、争いになるとセフィドには分が悪いからだ。
そんなある日、シリウスに白羽の矢が立った。
生まれ持った怪力が噂になり、国のお偉方の耳に入ったのだとか。しかも幼い頃から身につけていた腕輪に伝説の勇者の紋様が刻まれていたのだから、それはもう大変な騒ぎになってしまったのだ。
シリウス自身は先祖代々伝わる守りの腕輪としか知らなかったし、亡くなった母からもそんな話は聞いたことがなかった。まさに寝耳に水である。
しかし、ここ数年の悩みから解放された欲深な宰相たちは歓喜に震え、意気揚々とシリウスに任務を課せた。
命じられた時は馬鹿馬鹿しいと思ったものだが、下層の民であるシリウスに拒否権などない。セフィドにおいてもっとも軽んじられる身分である。
とりあえず魔王に会って、形だけの交渉でもして日常に戻ろう。そんなやる気のない考えでメランを訪れることにした。
だがリィラを見た瞬間、この任務を与えた老人たちに感謝をしてしまった。
自分は彼女に出会うために生きてきた。そう思えて仕方がなかったのだ。
出会った日を懐かしく思い、すぐそばにある艶やかな黒髪に指を通す。ぴくりとまぶたが震え、ゆっくりと開かれる鮮やかな紅い瞳。
リィラの目にはしっかりとシリウスが映っている。なのに反応はない。目覚めたばかりの頭は状況を認識していないのだろう。
「おはよう、リィラ」
「おは……?」
甘く微笑んでみせると、白い頬がみるみるうちに赤く染まっていく。
「あ、わ、わ……私、は……」
状況を把握はできたようだが、どうやら心がついていかないらしい。
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