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シーヴァニャ村にて
レディ、からかわれる
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招かれざる客、というのはどこにでも現れるものである。夜会が評判になり招待状を持たない人たちまでもが村に来るようになった今、招いた客より招いていない客の方が多くなっていた。そのため大小トラブルはひっきりなし、破廉恥な振る舞いに及ぶ男女もひっきりなし。
それらの解決に奔走する頭領は疲れ気味であった。
それなのに。
「頭領、早急に増築しないとお部屋が足りません」
朝日がのぼる頃、領主の館最奥にある、領主の寝室に闖入した者があった。ノックもそこそこにドアが開けられる。
夜会を終えた頭領は、ようやく眠ろうとベッドに片足を突っ込んだところであった。睡魔も疲労も一瞬にして吹き飛んでしまう勢いの闖入者である。
「エラ……きみね、俺が誰かとベッドを共にしていたらどうするつもりだい?」
「え? 千歳過ぎたおじいちゃんでも、性欲はあるの?」
「人間で1000年生きたらそれは大変なおじいちゃんだが、我々ヴァンパイアは、成体になったら個人差があるが、人間界の30年から40年でひとつ歳をとる」
エラはぽかんとしたが、1000年から生きているのに40歳にもならない若者ということらしい。性欲も食欲もしっかりあるのも当然だ。
「久しく女性を抱いていないが……たまには抱きたいと思うのさ」
にや、と笑った頭領が素早くエラを抱き寄せた。華奢な腰を引き寄せてぴたりと身を寄せる。
「きゃっ!」
「きみは……美しい。この世できみより美しい女性を探すのは大変だろう」
と、耳元で囁く。
「あ、あの、ありがとう……ございます」
白く長いが男らしい指が、エラの滑らかな頬をつるりとなぞる。思わぬ頭領の行動にエラの目が点になる。
頭領の腕から逃れようとするが、なぜか、抱きしめる腕に力が篭る。
「しかも伯爵家の女当主で始祖の血を引く、ヴァンパイアにとっても人間の男にとっても、貴重な存在だ」
そのままベッドに横たえられ、エラはますます目を丸くした。
「あの、領主さま?」
「……しかも、男好きのする身体だ。もう間も無く、男たちがこぞってきみに求婚するだろう……」
「求婚!? そんな、まさか……」
「引く手数多、選り取り見取りになるだろうさ。それくらいきみは美しくて魅力的だ。きみを妻にしたい、独占したい、もっと言うならこの肉体を思うがままにしたいと思う男は山のようにいるーー」
歯の浮きそうなセリフである。が、男女の色ごとに疎いエラはたちまち舞い上がってしまった。
「つ、妻……求婚……わたくしが」
「どこぞの得体の知れない男のものになるくらいなら、いっそ……」
「いっそ?」
頭領が言葉を切ってエラをじっと見つめた。ドキドキと、エラの心臓が暴れる。強引に妻にされるのか、甘く口説いてくれるのか、とまで考えてしまい、慌ててそれを打ち消す。
が、頭領はその先を言ってくれない。
「あ、あの?」
いっそ、の先が気になる。
「……さ、起きたまえ」
「え!?」
ぐいっと体を起こされた。見れば、頭領は普段と何も変わらない。はからずもドキドキしてしまったのは、エラだけだったようだ。
「んもう! 恋愛経験のないレディを揶揄うなんて悪趣味ですわっ」
ぷくっと頬を膨らませるエラはあどけない。
「ははは、驚いたかい?」
「当たり前です。金輪際二度と、からかわないでくださいねっ」
「わかったわかった。ところでエラ、増築とか言っていたね? 増築と言ってもそう簡単には……。何か案はあるのかい?」
こちらも気を取り直さかたエラが目を閉じて胸の前で両手を組んだ。きぃん、と微かな音がしてエラの周りを風が吹き抜ける。どうやら、エラが始祖の力を使うときに起こる現象である。
ぱちり、と、エラが目をひらいた。深いルビー色の瞳が頭領を真っ直ぐ見る。強い視線に、思わず膝をつきそうになる。
始祖の力を使うとき、ガブリエラの雰囲気はがらりと変わる。伝説でしか知らないがヴァンパイアの始祖本人が蘇ったのかと思うほどだ。
「わたくしなら、出来ます。使われていない東塔の、壊れたままになっている窓や壁、階段を補強し、壁を塗り直して内部もお掃除すれば大丈夫でしょう。ただ、入浴や炊事に使うためのお水がないので、新たに川から水を引いてこないといけません」
さすがに、頭領が頭を抱えた。
「そんな工事……すぐにできるわけないよ、レディ……」
それらの解決に奔走する頭領は疲れ気味であった。
それなのに。
「頭領、早急に増築しないとお部屋が足りません」
朝日がのぼる頃、領主の館最奥にある、領主の寝室に闖入した者があった。ノックもそこそこにドアが開けられる。
夜会を終えた頭領は、ようやく眠ろうとベッドに片足を突っ込んだところであった。睡魔も疲労も一瞬にして吹き飛んでしまう勢いの闖入者である。
「エラ……きみね、俺が誰かとベッドを共にしていたらどうするつもりだい?」
「え? 千歳過ぎたおじいちゃんでも、性欲はあるの?」
「人間で1000年生きたらそれは大変なおじいちゃんだが、我々ヴァンパイアは、成体になったら個人差があるが、人間界の30年から40年でひとつ歳をとる」
エラはぽかんとしたが、1000年から生きているのに40歳にもならない若者ということらしい。性欲も食欲もしっかりあるのも当然だ。
「久しく女性を抱いていないが……たまには抱きたいと思うのさ」
にや、と笑った頭領が素早くエラを抱き寄せた。華奢な腰を引き寄せてぴたりと身を寄せる。
「きゃっ!」
「きみは……美しい。この世できみより美しい女性を探すのは大変だろう」
と、耳元で囁く。
「あ、あの、ありがとう……ございます」
白く長いが男らしい指が、エラの滑らかな頬をつるりとなぞる。思わぬ頭領の行動にエラの目が点になる。
頭領の腕から逃れようとするが、なぜか、抱きしめる腕に力が篭る。
「しかも伯爵家の女当主で始祖の血を引く、ヴァンパイアにとっても人間の男にとっても、貴重な存在だ」
そのままベッドに横たえられ、エラはますます目を丸くした。
「あの、領主さま?」
「……しかも、男好きのする身体だ。もう間も無く、男たちがこぞってきみに求婚するだろう……」
「求婚!? そんな、まさか……」
「引く手数多、選り取り見取りになるだろうさ。それくらいきみは美しくて魅力的だ。きみを妻にしたい、独占したい、もっと言うならこの肉体を思うがままにしたいと思う男は山のようにいるーー」
歯の浮きそうなセリフである。が、男女の色ごとに疎いエラはたちまち舞い上がってしまった。
「つ、妻……求婚……わたくしが」
「どこぞの得体の知れない男のものになるくらいなら、いっそ……」
「いっそ?」
頭領が言葉を切ってエラをじっと見つめた。ドキドキと、エラの心臓が暴れる。強引に妻にされるのか、甘く口説いてくれるのか、とまで考えてしまい、慌ててそれを打ち消す。
が、頭領はその先を言ってくれない。
「あ、あの?」
いっそ、の先が気になる。
「……さ、起きたまえ」
「え!?」
ぐいっと体を起こされた。見れば、頭領は普段と何も変わらない。はからずもドキドキしてしまったのは、エラだけだったようだ。
「んもう! 恋愛経験のないレディを揶揄うなんて悪趣味ですわっ」
ぷくっと頬を膨らませるエラはあどけない。
「ははは、驚いたかい?」
「当たり前です。金輪際二度と、からかわないでくださいねっ」
「わかったわかった。ところでエラ、増築とか言っていたね? 増築と言ってもそう簡単には……。何か案はあるのかい?」
こちらも気を取り直さかたエラが目を閉じて胸の前で両手を組んだ。きぃん、と微かな音がしてエラの周りを風が吹き抜ける。どうやら、エラが始祖の力を使うときに起こる現象である。
ぱちり、と、エラが目をひらいた。深いルビー色の瞳が頭領を真っ直ぐ見る。強い視線に、思わず膝をつきそうになる。
始祖の力を使うとき、ガブリエラの雰囲気はがらりと変わる。伝説でしか知らないがヴァンパイアの始祖本人が蘇ったのかと思うほどだ。
「わたくしなら、出来ます。使われていない東塔の、壊れたままになっている窓や壁、階段を補強し、壁を塗り直して内部もお掃除すれば大丈夫でしょう。ただ、入浴や炊事に使うためのお水がないので、新たに川から水を引いてこないといけません」
さすがに、頭領が頭を抱えた。
「そんな工事……すぐにできるわけないよ、レディ……」
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