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ようこそ夢の世界へ
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これは夢だと分かる。
森の中を歩いて誰かを探している。
たまにみる夢だ。いつも誰かは見つからない。
そもそも誰を探しているかも分からないのだから見つけようがない。
そう思ったところでいつも目が覚める。
目を覚ましたのか?
いや、自分は眠っていたのか?
混乱する頭で辺りを見渡すと生い茂る草木が目に映る。どうやらまだ夢の中にいるらしい。
横たわった土の匂い。やけに地面を近くに感じる。
起き上がるとやはり森の中のようだった。いつもの夢だろうか。
それにしては風景が違って見える。例えば木々が子供のらくがきのようにぐるぐるとうねっているし。
例えばあんなに大きく色鮮やかなパンジーの群生など見覚えがないし。
例えば等身大のドードーが勢いよくこちらに突進してはこない。
「馬鹿っ。そこの黒いのっ。早く逃げろっ」
ドードーが突然嘴を開けたかと思うと人間の言葉で話しだした。
やはり夢だ。おかしな夢だ。いつもの100倍はおかしい。
「おいっ。聞いてるのかそこの黒いのっ。大変なことになるぞっ」
ドードーはじたじたと足踏みをしながら騒ぎ立てる。
目のフチによく見ると眼鏡のような模様があって、せっかちな話し方をするよく似た大学の友人がふと頭をよぎった。
「黒いの黒いのって。日本人は大抵みんな頭が黒いんだよ」
「何を言ってるんだ?訳が分からないやつ。大体お前が黒いのは全身だろっ」
「なんだって?」
思わず自分の体を見下ろすと、びっしりと黒い毛で覆われた毛むくじゃらが視界に入る。
「うわぁっ。毛が!」
「毛がなんだっ。自分の毛が黒いことも知らなかったのか?馬鹿なネズミっ」
「ネズミだって!?」
頭をたしたしと触るとふさふさの毛の先に丸い大きな耳が触れる。驚いて跳び上がるとぴくぴくっと震えて偽物でも無い血の通った自分の耳だった。
「うわぁ。なんて夢だ。しかもなんだか生々しい」
「あーあー。こんなところで馬鹿なネズミに構うんじゃなかったっ。早く逃げないとっ」
じたばたと地面を踏んでいたドードーはバタバタと羽を暴れさせてまた走り出していってしまった。
それを見ていたパンジー達がクスクスと笑っている。
The・悪夢って感じだ。
それにしたってドードーは何から逃げていたのか。それが胸に引っかかりつつも早く覚めないだろうか、と近くの石に腰かけた。
喋るドードーと生きているような花。極彩色の世界。
こういうの、何だっけ。何か有名な話があった気がする。
もっと分かりやすいモチーフが何か。
「殺されるよぉっ!」
悩ましく頭を抱えているネズミの前に、絹を裂くような悲鳴をあげて草むらから飛び出してきたのはフワフワの愛らしい白ウサギだった。
「助けてっ!殺される!」
それを見た瞬間、黒いネズミの頭の中であるワードがはっきりと頭に浮かんだ。
「アリスに殺されるよぉっ!」
そうだ。不思議の国のアリスだ。確かにこんな感じのイメージだ。
ただ、いや……こんな感じだったっけ。
森の中を歩いて誰かを探している。
たまにみる夢だ。いつも誰かは見つからない。
そもそも誰を探しているかも分からないのだから見つけようがない。
そう思ったところでいつも目が覚める。
目を覚ましたのか?
いや、自分は眠っていたのか?
混乱する頭で辺りを見渡すと生い茂る草木が目に映る。どうやらまだ夢の中にいるらしい。
横たわった土の匂い。やけに地面を近くに感じる。
起き上がるとやはり森の中のようだった。いつもの夢だろうか。
それにしては風景が違って見える。例えば木々が子供のらくがきのようにぐるぐるとうねっているし。
例えばあんなに大きく色鮮やかなパンジーの群生など見覚えがないし。
例えば等身大のドードーが勢いよくこちらに突進してはこない。
「馬鹿っ。そこの黒いのっ。早く逃げろっ」
ドードーが突然嘴を開けたかと思うと人間の言葉で話しだした。
やはり夢だ。おかしな夢だ。いつもの100倍はおかしい。
「おいっ。聞いてるのかそこの黒いのっ。大変なことになるぞっ」
ドードーはじたじたと足踏みをしながら騒ぎ立てる。
目のフチによく見ると眼鏡のような模様があって、せっかちな話し方をするよく似た大学の友人がふと頭をよぎった。
「黒いの黒いのって。日本人は大抵みんな頭が黒いんだよ」
「何を言ってるんだ?訳が分からないやつ。大体お前が黒いのは全身だろっ」
「なんだって?」
思わず自分の体を見下ろすと、びっしりと黒い毛で覆われた毛むくじゃらが視界に入る。
「うわぁっ。毛が!」
「毛がなんだっ。自分の毛が黒いことも知らなかったのか?馬鹿なネズミっ」
「ネズミだって!?」
頭をたしたしと触るとふさふさの毛の先に丸い大きな耳が触れる。驚いて跳び上がるとぴくぴくっと震えて偽物でも無い血の通った自分の耳だった。
「うわぁ。なんて夢だ。しかもなんだか生々しい」
「あーあー。こんなところで馬鹿なネズミに構うんじゃなかったっ。早く逃げないとっ」
じたばたと地面を踏んでいたドードーはバタバタと羽を暴れさせてまた走り出していってしまった。
それを見ていたパンジー達がクスクスと笑っている。
The・悪夢って感じだ。
それにしたってドードーは何から逃げていたのか。それが胸に引っかかりつつも早く覚めないだろうか、と近くの石に腰かけた。
喋るドードーと生きているような花。極彩色の世界。
こういうの、何だっけ。何か有名な話があった気がする。
もっと分かりやすいモチーフが何か。
「殺されるよぉっ!」
悩ましく頭を抱えているネズミの前に、絹を裂くような悲鳴をあげて草むらから飛び出してきたのはフワフワの愛らしい白ウサギだった。
「助けてっ!殺される!」
それを見た瞬間、黒いネズミの頭の中であるワードがはっきりと頭に浮かんだ。
「アリスに殺されるよぉっ!」
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ただ、いや……こんな感じだったっけ。
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