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第七章

96:花嫁ドレス

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 ――一ヶ月後。
 ダームは、魔術の街マジーアの大魔術師マーゴの屋敷に滞在していた。

 帝城を出て数日をかけてここへ到着すると、まずマーゴにことの経緯を全て話した。そしてメンヒがここで結婚式を挙げたいと言ったのである。
 それを受けてマーゴは、

「いいでしょう。愛息子と愛弟子のお願いですもの、叶えてあげるわ」

 そう、許してくれたのだった。

 すぐに挙式する予定だったが、結局、結婚式の準備等々に一ヶ月の歳月を要した。
 そしてこの日、マーゴが注文してくれた花嫁ドレスが届いたのだ。

「ダーム。花嫁ドレスが来たわよ。見てみる?」

「うん!」

 嬉々としてダームは、マーゴの方へ駆け寄っていく。

 この一ヶ月間で、二人の関係は大きく変化した。
 まだまだよそよそしかったマーゴはダームを名前で呼んでくれるようになったし、メンヒと同等に可愛がってくれる。
 ダームの方も、彼女と気兼ねなく話せる仲になっていた。

「メンヒに見られてはいけないから、私の部屋へおいで」

「はーい! 楽しみ楽しみ~」

 浮かれながら大魔術師の部屋へ。
 魔法の器具やら何やらが所狭しと並ぶ部屋の仲、そこにひときわ目を引くものがあった。

「ほら、これよ」

「うわあ、綺麗!」

 純白の裾が広がる、美しいドレスだ。
 袖に花形のフリルが施されており、胸元には漆黒の宝石が彩られている。腰は程よく絞られているし、胸元の薔薇のあしらいがとても可愛らしかった。

「せっかくだから着てみたいな」

「残念だけど、今はダメ。それは明日の結婚パーティーまで待っていて」

「あっ、そうだった、明日だっけ」

 気づくと、結婚パーティーは翌日に迫っていた。
 確かに初の花嫁ドレスを今着るのはもったいない。明日のお楽しみとしておこう。

 見ているだけでうっとりする。気分はもうすっかりお姫様だ。

「きっと僧侶くんびっくりするだろうなあ」

「でしょうね。明日はご両親が来てくださる予定なのでしょう? 張り切らなくてはね」

「そうだね。精一杯頑張るよ!」

 ――ああ、勇者様にも花嫁ドレス、見せたかったな。

 一瞬そんな考えが浮かんだが、首を振って吹き消した。

 花嫁姿の自分を想像し、ダームは胸をときめかせる。
 明日が待ち遠しかった。
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