69 / 187
言い知れぬ不安
1
しおりを挟む
◇◆◇
それからと言うもの、子犬はすっかりアキラに懐いてずっとその後を付いて回っていた。
子犬には名前が無かった為、アキラはもう勝手に『チビ』と呼んでしまっている。
(おいおい、その犬絶対すぐにデカくなるぞ)
声には出さずに心の中で、ユウトはアキラにそう突っ込みを入れた。
「おじいちゃん、キッチン借りてもいいかな? 良かったら食事を作らせて欲しいんだけど」
「ほお、そりゃ有り難いのう。ある物は何でも使ってくれて構わんよ」
キッチンの戸棚を開けた途端、アキラは嬉々とした声を出した。
「わ、すごい! 調味料なんかも色々揃ってるね~。嬉しいなあ、こんな所で落ち着いて料理できるなんて久し振り!」
アキラは楽しそうにエプロンを着けると、キッチンに立った。
その足下には、子犬のチビがまとわりついている。
(エプロン姿……家庭的な感じが似合ってていいかもしれない)
などと、ユウトが密かに思っていた矢先――
「ユウトくん、実はちょっと見て貰いたい物があるんじゃが、いいかな」
「は、はいッ? 何でしょうか!」
教授に突然声を掛けられ、慌てて答えた。
「アキラちゃんはエプロン姿も可愛いのー」
「はい……いや、それじゃないですよね、一体何ですか!?」
「さて、こっちじゃ」
さらっとスルーされた。
教授は、ユウトを研究室にある、土の入った水槽の前まで連れてきた。
「アキラちゃんの前では言えなかったんじゃが。実はさっき話した子犬の亡骸で、浄化作用の進行具合を確かめてみたのじゃよ」
「え……!」
ユウトは水槽に手を付いて、中を覗き込んだ。
「小さな子犬じゃからのう、三日もすると跡形もなく土に還ってしまった」
「そうか……じゃあ、さっきの話はもう確証を得たものだったんですね」
こくり、と教授は頷いた。
「それと、あのアザじゃな」と話を続けた。
(そうだ、あのアザ…あれは一体)
ユウトは固唾を飲んで、教授の次の言葉を待った。
それからと言うもの、子犬はすっかりアキラに懐いてずっとその後を付いて回っていた。
子犬には名前が無かった為、アキラはもう勝手に『チビ』と呼んでしまっている。
(おいおい、その犬絶対すぐにデカくなるぞ)
声には出さずに心の中で、ユウトはアキラにそう突っ込みを入れた。
「おじいちゃん、キッチン借りてもいいかな? 良かったら食事を作らせて欲しいんだけど」
「ほお、そりゃ有り難いのう。ある物は何でも使ってくれて構わんよ」
キッチンの戸棚を開けた途端、アキラは嬉々とした声を出した。
「わ、すごい! 調味料なんかも色々揃ってるね~。嬉しいなあ、こんな所で落ち着いて料理できるなんて久し振り!」
アキラは楽しそうにエプロンを着けると、キッチンに立った。
その足下には、子犬のチビがまとわりついている。
(エプロン姿……家庭的な感じが似合ってていいかもしれない)
などと、ユウトが密かに思っていた矢先――
「ユウトくん、実はちょっと見て貰いたい物があるんじゃが、いいかな」
「は、はいッ? 何でしょうか!」
教授に突然声を掛けられ、慌てて答えた。
「アキラちゃんはエプロン姿も可愛いのー」
「はい……いや、それじゃないですよね、一体何ですか!?」
「さて、こっちじゃ」
さらっとスルーされた。
教授は、ユウトを研究室にある、土の入った水槽の前まで連れてきた。
「アキラちゃんの前では言えなかったんじゃが。実はさっき話した子犬の亡骸で、浄化作用の進行具合を確かめてみたのじゃよ」
「え……!」
ユウトは水槽に手を付いて、中を覗き込んだ。
「小さな子犬じゃからのう、三日もすると跡形もなく土に還ってしまった」
「そうか……じゃあ、さっきの話はもう確証を得たものだったんですね」
こくり、と教授は頷いた。
「それと、あのアザじゃな」と話を続けた。
(そうだ、あのアザ…あれは一体)
ユウトは固唾を飲んで、教授の次の言葉を待った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
32
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる