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言い知れぬ不安

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 ◇◆◇


 それからと言うもの、子犬はすっかりアキラに懐いてずっとその後を付いて回っていた。
 子犬には名前が無かった為、アキラはもう勝手に『チビ』と呼んでしまっている。

(おいおい、その犬絶対すぐにデカくなるぞ)

 声には出さずに心の中で、ユウトはアキラにそう突っ込みを入れた。


「おじいちゃん、キッチン借りてもいいかな? 良かったら食事を作らせて欲しいんだけど」

「ほお、そりゃ有り難いのう。ある物は何でも使ってくれて構わんよ」

 キッチンの戸棚を開けた途端、アキラは嬉々とした声を出した。

「わ、すごい! 調味料なんかも色々揃ってるね~。嬉しいなあ、こんな所で落ち着いて料理できるなんて久し振り!」

 アキラは楽しそうにエプロンを着けると、キッチンに立った。
 その足下には、子犬のチビがまとわりついている。


(エプロン姿……家庭的な感じが似合ってていいかもしれない)

 などと、ユウトが密かに思っていた矢先――

「ユウトくん、実はちょっと見て貰いたい物があるんじゃが、いいかな」

「は、はいッ? 何でしょうか!」

 教授に突然声を掛けられ、慌てて答えた。

「アキラちゃんはエプロン姿も可愛いのー」

「はい……いや、それじゃないですよね、一体何ですか!?」

「さて、こっちじゃ」

 さらっとスルーされた。



 教授は、ユウトを研究室にある、土の入った水槽の前まで連れてきた。

「アキラちゃんの前では言えなかったんじゃが。実はさっき話した子犬の亡骸で、浄化作用の進行具合を確かめてみたのじゃよ」

「え……!」

 ユウトは水槽に手を付いて、中を覗き込んだ。

「小さな子犬じゃからのう、三日もすると跡形もなく土に還ってしまった」

「そうか……じゃあ、さっきの話はもう確証を得たものだったんですね」

 こくり、と教授は頷いた。

「それと、あのアザじゃな」と話を続けた。


(そうだ、あのアザ…あれは一体)

 ユウトは固唾を飲んで、教授の次の言葉を待った。 
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