デュアルワールド

たぬまる

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アテナ編 兄が消えた後で

兄の消えた後

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 ニケと鈴がオリンポスファンタジーに復帰してすぐ自分達の家を購入し、全ての家具家電も買い、今の家で使っている物を持っていかない事ではっきりと両親と決別するつもりで居た。

 この日両親の住む家の近所のファミレス「パンダマ」に両親を呼び出したニケと鈴。そして三宮 明日香もそこに居た。

「どうしたんだ、こんな所に呼び出して」

「そうよ、私達忙しいのよ」

 遅れてやってきた両親が文句を言いながら席に座るなり、明日香の姿を見ると、少し戸惑ったように声を上げた。

「三宮家のお嬢さんがご一緒とはいったい何事ですか?」

「ええ、先ずは、ワタクシ共の弁護士が調べました所、悠馬さんの特許料と三宮グループが契約いたしました契約料、ならびオリンポスファンタジーの悠馬さんが申請されたインセンティブ料金、国連からの研究開発利用料がご両親の口座に不正に送金されていたことに関してなのですが・・・」

 明日香の言葉に顔色を変える両親だが

「それは親として育てるために必要な金額を使っているだけで・・・」

 父親がそう言うと、明日香はクスリと上品に笑って冷たい視線を父親に向ける。

「合計金額は月に14億・・・悠馬さんが完成させた物質転送装置及び物質転送理論の使用料だけでも10億になりますよ?
 貴方達はお互いに外に愛人が居ますね?お父様は株の損失をそのお金で補ったり、お母様は宝石類を買いあさっていますね」

 明日香が手に持った資料を机の上に出していく毎に、両親の顔色が変わっていく。

「お父さんお母さん、私たちのお金も使い込んでるよね?
 だから、裁判所に証拠を出して、自立を認めてもらう事にしたよ」

「そんな!あんた達が出て行ったら誰が私たちのお金を稼ぐのよ!家族でしょ!助け合わないと」

 ニケの言葉に母親が必死の形相で説得を試みるが

「あまり言いたくない事ですが、知的財産管理委員会から正式に通達が行きますが、悠馬さんの財産を私的に使い果たしている事が証明されたので、法律に則り、全額返還が決まりました」

 知的財産管理委員会。某国が知的財産を勝手に搾取した事に端を発した貿易戦争が勃発。その結果、世界を巻き込んだ世界大恐慌が起きたため、国連主導で作られた知的財産を守り、その所有者の財産を守る事を主に置いた国際機関として発足したものだ。
 経済戦争に疲れていた世界各国の国民に熱狂的に受け入れられた組織である。
 
 また、当時の日本首相が国民の人気が無さ過ぎた事を気にして、知的財産管理委員会の人気に乗るために、日本国内の知的財産は発案者の親であっても許可なく私的流用、もしくは使い込みを行なった場合は国が代理返還を行い、その金額+利子分を返還し終わるまで強制労働施設に送られるという法律が作られた。

 当然その事を知っている両親は真っ青な顔に成り、理由を語り始めた。

「お、俺達は物質転送理論を三宮グループに支援を受ける形で研究していたんだ・・・
 だが幾ら頑張っても成果が出ず、ある程度の形にして出さないといけない時期にさしかかった時に悠馬があの論文と設計図を僅か2日で作り上げたんだ!
 俺達は自分達の論文が完成していなかったから、それを盗用したのに、まさか全部の原稿に名前が書いてあるとは思わなかったんだ!
 あれは俺達が提出したものだろう?あの金は俺達に入るはずだったんだ・・・
 あの時から、俺達はやる気を無くした・・・
 なぁニケ、鈴、慰謝料として俺達がもらってもおかしくないだろう?」

 情に訴えようとしてそう話し、顔を上げた父親は氷のような冷たい目を向ける3人を見た・・・
 恐怖のあまり背もたれに張り付くぐらい後ろに無意識に下がり、母親は俯いてブツブツ言っていた。

「両親がこんなクズで残念ねぇ」

「先輩、行きましょう。
 後は委員会がしてくれるんですよね?」

「ええ、外にすでに委員会の人たちが待ってますからね」

 そう言って席を立つ3人。

「此処の支払いぐらいは私たちがしておくよ」

 ニケが伝票を持って去っていった。

 3人が去った後・・・

「お前がちゃんとあの二人を教育しなかったからこんな事になったんだ!」

「私が悪いって言うの?貴方が結局研究を完成させられなかったのが発端じゃない!」

 二人が大声で怒鳴りあう中、知的財産管理委員会の制服を着た10人の職員が、二人を囲むように姿を現した。

「鳳 武、鳳 真弓だな?知的財産管理委員会、真部 明人だ、知的財産保護法違反で強制連行する」

 二人に書類を突きつけて職員が手錠をかけるが、暴れて連行するのも一苦労させられる。

「俺は親だぞ!!子供の金を使って何が悪い!」

「そうよ!産んでやったんだから、それぐらいの役得が有ってもいいでしょ!」

 そう叫ぶ二人に明人が呆れたような目を向けて。

「鳳 悠馬君の作り上げた物質転送システムと物質転送理論は、世界中に多くの恩恵を齎している。
 その報酬は悠馬君が受け取るべきであり、
 お前達のような金の亡者が貪って良い物ではない。
 貴様らの行き先は、マリアナ海溝の1万メートル地点でレアメタルの採掘と決まっている。
 確りと後悔しながら従事することだな」

 自分達が使い込んだ金額を思い浮かべると、全額を返すのは生きている内にはほぼ不可能。その上生きて出たものが居ないと言われる、マリアナ海溝採掘場へ行かされると解ったとたん、さらに騒ぎ始める二人に、近くに居た客たちも迷惑そうに見ていた。

「弁護士を付けてくれ!裁判に不利になることは言わないぞ」

「私の人権はどうなるのよ!嫌よ!助けて誰か!!!」

「知的財産侵害に関しては裁判は無いし、弁護士が付く事もない。
 当然人権は凍結されている、いい加減諦めろ」

 二人はまるで荷物を運ばれるように担がれて護送車に放り込まれると、真っ直ぐマリアナ海溝に繋がる物質転移装置がある施設へと輸送されていった。

 その日のニュースは、鳳夫妻が息子の知的財産権を侵害し、私的な事に使ったと大々的に流された。

 物質転送装置で有名な鳳 悠馬の親の事件は、某国に対する監視の目が強くなり、知的財産管理委員会の活動が活発になるという結果を齎すことになった。

 また、同じタイミングで三宮グループから未発表であった悠馬が作成したワープ理論とワープ装置が発表され、世界は改めて鳳 悠馬の凄さを痛感させられたという。
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