デュアルワールド

たぬまる

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アテナ編 兄が消えた後で

アテナのバトルライブ

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 オリンポスファンタジーに復帰したニケとパラスのユニット「アテナ」は熱狂を持って迎え入れられた。
 ファン登録者数190万人、観覧支援者200万人(ファン登録者を含む)とオリンポスファンタジー内のほぼ全てのプレイヤーが支持する二人の売りは、未だに誰もできない戦闘を行ないながら歌う、バトルライブ。
 LV100オーバーのエネミーを、時にはLV300近いボスエネミーを歌い踊るように戦うライブは多くの者を魅了していた。

 フルダイブタイプのシステム上、歌い踊りながら戦闘するにはあまりにも脳への負担が強く、挑戦した他のアイドルは挫折したり、LV14の槍ゴブリンに惨殺されるシーンを上映するはめになったりして、今ではバトルライブを行なう事は無謀であると知れ渡っている。

「皆、今回のライブは全力で行くよ!」

「お兄ちゃんを~見つけるために~目立たないといけないの~」

 二人が話しかけるCNPC(カスタム・ノン・プレイヤー・キャラクター)のカメラ、マイク、ライト、コレクションの4人だった。

 カメラは赤い帽子のつばを後ろにして、ジーパンと白Tシャツに編みこみブーツで、念動カメラを7つ自在に操る茶髪の若い男型のサイキッカー。

 マイクは4本のマイクケーブルをムチのように操り、一音も洩らす事の無いボンテージ姿の女性型のドルイド。

 ライトは光魔法を自在に使う、金髪長髪の白いドレスに身を包んだエンジェル型の女性。

 コレクションはありとあらゆる戦術に長け、カメラ、マイク、ライトを指揮する更正作家であり、悪魔型の男。

 二人の要望を聞くように黙って頷く4人は、アテナの二人のためにアレスが作り上げたCNPCで、アレスが最大限の技術を詰め込んで作った4人はLV600代のボスまで対応できる程の能力を持っていた。普通のCNPCではホブゴブリンが精一杯なので、どれほどの壊れ性能かが伺える。

 二人にとっては、今はこの4人がある意味でオリンポスファンタジー内のアレスとの思い出と言うか、繋がりの様な気がしていた。

 今回二人は自分が所属するデウス国の遥か北にある雪山、アルアルブスで、スノートロルコングとスノートロルキングコングのフィールドボス攻略をバトルライブの復帰ステージに決めたのだ。

「みんな~アテナが復活したよ♪」

「今日はアルアルブスのフィールドを解放していくよ☆」

 二人の前にスノートロルコング8、スノートロルキングコングが姿を現すと、アテナ独特のポップな音楽が流れ始める。

 スノートロルコングは森林にいるトロルコングの上位種で、白い毛皮に包まれた巨大なゴリラ型のモンスターだ。毛皮は鋼鉄並みに硬く、武器はその巨体に見合った大剣を持っている。

 殆どのプレイヤーがその映像を見守るように見つめる中で、戦闘が始まっていった。

 先ずはスノートロルコングへ駆け出す二人を併走するように、パラスのローアングルから顔のアップへと画像が動いて行く。
 
 パラスが両手を広げて左右に4本ずつ、計8本の炎の矢を生み出し、両手をスノートロルコングのほうに突き出すと、炎の矢は一斉にスノートロルコングへと突き進んで行き、激突すると大爆発が起こり、スノートロルコング達の視界を奪う。

 その爆発にまぎれて金の燐光のエフェクトを残してニケが宙に舞い、次々にスノートロルコングの首を切り裂き、あっと言う間に4匹しとめてパラスの隣へ離脱する。

 その爆炎の中から巨大な大剣が2人の方へ飛び出て来た。
 不意を付かれたが、ニケは2本の大剣を手甲で受け流し、火花が飛び散る。
 
 パラスは自分の前に魔法障壁を生み出し、2本の大剣を受け止めた。

 そして爆炎が収まり、生き残ったスノートロルコングが駆け出してニケに殺到し、激しく大剣を打ち付けられるが、それを全て受け流していく。受け流すたびに火花が散り、全く当たらない。
 
 スノートロルキングコングが割って入るように金色の大槌を振るい、思い切りニケに叩きつけるが、ニケはその瞬間宙を舞い、身体を回転させてスノートロルキングコングの腕を切り裂いて距離を取って地面に降りると、スノートロルキングコングや取り巻きを巻き込んで巨大な土津波が飲み込む。

「ぐわぁぁぁぁ」

 スノートロルコングが、キングを庇ってドロップアイテムに変わると、スノートロルキングコングの純白の毛皮が真紅に染まり、身体が盛り上がって一回り大きくなった。

「バーサクモードだ~」

「ええ、一気に畳み掛けるわよ」

 ニケが4人に分身して、四方八方から切り付け、スノートロルキングコングの両腕を切り落とした。

「流石ね~、じゃあ私も~」

 パラスは両腕に炎を纏わせて鳥が羽ばたくように振るうと、ニケが「げ!」っと言う顔をして空を飛ぶようにパラスの後ろに退避した。それと同時に曲がサビの部分に差し掛かり、ニケとパラスの声が辺りに響き渡る。

 両腕の炎が青白く変化した瞬間に、炎を押し出すように両腕を突き出すと、青白い炎の鳥がスノートロルキングコングを一気に燃やし尽くす勢いで燃え広がる。

 二人が決めポーズを取ると、スノートロルキングコングが居た所が大爆発を起こし、その後にはドロップアイテムだけが残っていた。

「えへへ、やりすぎちゃった」

「何が「やりすぎちゃった」よ!危うく巻き込まれて吹き飛ぶ所だったわよ!」

 頭に右手を当てて舌を出して笑うパラスの頭にチョップをして微笑む二人が、ゲーム内の各所にあるビジョンウィンドに映し出され、ファン達は多いに盛り上がった。

 解放されたアルアルブス山脈に、アイヌの衣装に似た衣服を身に纏った民族のすむカムイ村と、異界迷宮と呼ばれるダンジョンがあり、多くのプレイヤーが攻略を目指してカムイ村を目指す事になる。
 そして、一番最初に迷宮に足を踏み入れるのは、アテナだった。

 この日アテナに入った上映インセンティブは歴代1位となり、誰にも超えられない金字塔となった。

一方、それを誰も近づかないオリンポスファンタジーの下水道で見ていたみすぼらしい男は

「くそ!俺が、俺が、アテナの二人を解放したんだ・・・あの忌々しいアレスから・・・」

 男はアレスを異世界に転移させた犯人だった。
 クロノス社からアカウントを凍結され、世界中に指名手配されたはずの男が此処に居た。

「アテナァ、俺と一緒にずっと居るんだ・・・」

 男はアレスに黒い転移石を使って、何処かへ飛ばしたと思ったら、自分自身がこの世界に居た。
 ゲーム内のキャラクターでは無く、自分の肉体で。
 しかも傷ついてもポーションや回復魔法で回復せず、リアルに自分の命が削られる事に恐怖を覚え、モンスターすら近づかない悪臭の満ちたこの下水道へ逃げ込んだんだ。

 いつかアテナの二人と欲望に満ちた生活をする事を夢見て・・・

 男は今は我慢の時だと自分に言い聞かせて・・・
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