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アテナ編 兄が消えた後で
歌魔法実験1
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ニケと鈴が復帰ライブを行なった次の日、クロノス社の交渉担当の大木 友里が訪ねてきたのは昼過ぎだった。
友里とニケ達が接触を持ったのは、バトルライブを初めて配信した時からであり、悠馬の事件の交渉もそのまま友里が担当となっていた。
友里は明るい髪色で、ボブカットのふわりとした感じの美人であり、その大きな目は感情によってころころとその色を変える。その姿が鈴にとってはまるで小動物のように見えて、ついクッキー等の焼き菓子を食べさせてしまうのだ。
それに対して、ニケは友里の本性のあざとさを見抜いていたために、少し事務的に対応をしていた。
「歌魔法ですか?」
「はい、この度実装されるシステムなのですが、問題は歌を歌いながら強化魔法を扱えるかどうかなのです。
アテナのお二人はすでに戦闘、歌、魔法、武技などを完璧に両立されています。
そこで当社といたしましては、先ずはお二人に試していただいた使用データをフィードバックして反映できればと考えております。
もし、他に使用できる人が居なくても、お二人の専用魔法とさせていただきます」
書類を読みつつ、メガネをかけた友里がキャリアウーマン風の雰囲気を出しながらニケの様子を伺っているが、ニケはため息をついて友里のファイルを取り上げると「何するんですか~」となんとも情けない声が友里から聞こえてきた。
それを無視してファイルを読み勧めるニケに、友里は涙目を向けるが全く相手にされず、鈴に手渡されたクッキーを座ってモグモグと食べ始めた。
「良い案ね。
でも、これに対するデメリットは脳にどれだけ負担が掛かるのかが解らない点ね。
特にストッパーの構築が甘いと思うのだけど?」
ファイルを机の上に置くと、ニケはため息をついて友里を見つめる。
「ふぉのへんは(そのてんは)んぐ、二人の脳波データを取らせていただいてからストッパーを後10種類は構築する予定であります」
ニケは友里の間抜けな姿を見て、眉間にしわを寄せると
「ふ~ん、そのまま受けてたらそんな事をしなかったでしょうね。
で?実装までのデータ取りは何時するの?」
少し驚いたように友里はニケを見上げた。
「お越しいただけるなら何時でも大丈夫です。
当社は全力でバックアップいたします。
勿論お兄様の調査も現在も継続中です」
最後の一言が余計であったと友里が口を押さえるが、ニケの絶対零度を宿した瞳で射抜かれた。
言い訳もできず、顔を下に向ける友里に鈴が声をかけた。
「あはは~友里ちゃんてデリカシー無いよね~
それ……禁句だよ」
「ご、ごめんなさい!!」
友里は2人からの冷たい視線を受けて、逃げるように二人の家から出て行く事になった。
「は~嫌われたかな~
でも、歌魔法の実験には参加してもらえそうで良かった……
あのクソ男……何処に逃げたのかしら?
あいつさえ見つけられたら、今回の事も解決するのに・・・」
友里は携帯の画面に映った事件の犯人の写メを冷たい目でにらみつけて画面を消した。
「ね~ね~、歌魔法って楽しみだね~」
鈴はのんびりと紅茶を飲みながら、窓に映し出された友里の後姿を見ていた。
「そうね・・・でもあの女良い趣味してるわ」
「あはは、確かにね~あれだけネコが被れるなら良い女優さんになれるよね♪」
「は~」っとニケは額に指を当てて軽く頭を振るが、鈴は全く気にした様子も無い。
「鈴ってみんなが思ってるよりイイ性格してるよね」
「ニケちゃんが~直ぐに顔に出るし~よくおしゃべりするもんね~」
鈴がニヤニヤとニケを見て笑っていた。
「鈴が腹黒いだけじゃない?
だいたい、何であの女を利用しようと思うのよ。
お父さんたちみたいで気持ち悪いのに・・・」
「だからだよ~それに他人なんだから徹底的に利用したら良いとおもうよ~」
「まぁ鈴のお陰で歌魔法なんてシステムを作ってもらえたからね、そこは感謝だよ」
鈴は「むふふ」と笑ってニケの頬をツンツンと突き、机の上のポッキーを口に2本入れて、そのままソファーに仰向けに倒れた。
次の日クロノス社の実験棟へアテナの二人はやって来た。
「やーやー良く来てくれたね!!早速だがこの装置をつけてオリンポスファンタジーにダイブしてもらえるかな?」
白衣を着た短髪垂れ目の男性・・・ニケ達にとってはおじさんが手首に付ける装置を手渡すと、それを受け取りながら「お兄ちゃんの捜索もこれぐらい早くやってくれたらいいのにね」とちくりと言葉の刺を男に突き刺した。
「ニケちゃんダメだよ~五十嵐さんも興味が無いながらもやってくれてるんだから~」
「ホント興味ないことには中々動かないのは駄目な大人の証明よね」
「うぐ・・・僕もちゃんとやってるよ、少しでも早く見つけられるように、あの膨大なデーターから色々な検証をやってるんだよー」
「はいはい、じゃあ早速やっちゃいますか」
落ち込む五十嵐を他所にさっさと準備を始める二人。
「はー確かに俺達が原因も犯人も見つけられてないから悪いんだけどね。
おじさんはもっと頑張って徹夜を続けるとするよ」
あはは、と三人は笑いあってダイブの準備を始めていった。
ニケも鈴も五十嵐に対して嫌な感情はあまり持っていなかった。
悠馬捜索に一番時間をかけているのも知っているし、何よりクロノス社において一番アテナの目的を理解してくれている大人の一人だといえるからだ。
軽口も三人にとっては日常であり、歌魔法も五十嵐の発案を鈴が友里に伝えて誘導し、実験に持ち込めたのだ。
”実験ステージは全部で3つ、君達の協力者に3人のプレイヤーさんを抽選で選抜してみたよー。頑張って力を合わせてクリアーしておくれ”
「おお!!!マジでアテナが居る!!!俺!俺ラグーン剣士!よろしく!!
良かったらスクショお願いしてもいいかな?」
勢いの良いオレンジ色のツンツン頭の青年剣士は、ニケとパラスの周りをぐるぐる回りながらキラキラした目で二人を見つめてきた。
「実験ステージはスクショできないわよ。
折角選ばれたのにアンタみたいな奴と一緒なんて……
失礼しましたわ、ワタクシ、フローズン・ペイン、拳闘士ですわ」
金髪釣り目の真紅のチャイナドレスの女性がニケに笑いかけて会釈をした。
「よろしく、私がニケ、この子がパラス」
ニケが挨拶すると、もう一人が姿を現した。
「はーい、アタシが一番だと思ったのにざぁんねん」
その漢は桜色の髪を頭頂部でお団子にして巨大な大剣を背負い、上半身裸のムキムキの男だった。
「アタシはマキシマム、大剣師よ。よろしくね」
そう言ってウィンクをする。
友里とニケ達が接触を持ったのは、バトルライブを初めて配信した時からであり、悠馬の事件の交渉もそのまま友里が担当となっていた。
友里は明るい髪色で、ボブカットのふわりとした感じの美人であり、その大きな目は感情によってころころとその色を変える。その姿が鈴にとってはまるで小動物のように見えて、ついクッキー等の焼き菓子を食べさせてしまうのだ。
それに対して、ニケは友里の本性のあざとさを見抜いていたために、少し事務的に対応をしていた。
「歌魔法ですか?」
「はい、この度実装されるシステムなのですが、問題は歌を歌いながら強化魔法を扱えるかどうかなのです。
アテナのお二人はすでに戦闘、歌、魔法、武技などを完璧に両立されています。
そこで当社といたしましては、先ずはお二人に試していただいた使用データをフィードバックして反映できればと考えております。
もし、他に使用できる人が居なくても、お二人の専用魔法とさせていただきます」
書類を読みつつ、メガネをかけた友里がキャリアウーマン風の雰囲気を出しながらニケの様子を伺っているが、ニケはため息をついて友里のファイルを取り上げると「何するんですか~」となんとも情けない声が友里から聞こえてきた。
それを無視してファイルを読み勧めるニケに、友里は涙目を向けるが全く相手にされず、鈴に手渡されたクッキーを座ってモグモグと食べ始めた。
「良い案ね。
でも、これに対するデメリットは脳にどれだけ負担が掛かるのかが解らない点ね。
特にストッパーの構築が甘いと思うのだけど?」
ファイルを机の上に置くと、ニケはため息をついて友里を見つめる。
「ふぉのへんは(そのてんは)んぐ、二人の脳波データを取らせていただいてからストッパーを後10種類は構築する予定であります」
ニケは友里の間抜けな姿を見て、眉間にしわを寄せると
「ふ~ん、そのまま受けてたらそんな事をしなかったでしょうね。
で?実装までのデータ取りは何時するの?」
少し驚いたように友里はニケを見上げた。
「お越しいただけるなら何時でも大丈夫です。
当社は全力でバックアップいたします。
勿論お兄様の調査も現在も継続中です」
最後の一言が余計であったと友里が口を押さえるが、ニケの絶対零度を宿した瞳で射抜かれた。
言い訳もできず、顔を下に向ける友里に鈴が声をかけた。
「あはは~友里ちゃんてデリカシー無いよね~
それ……禁句だよ」
「ご、ごめんなさい!!」
友里は2人からの冷たい視線を受けて、逃げるように二人の家から出て行く事になった。
「は~嫌われたかな~
でも、歌魔法の実験には参加してもらえそうで良かった……
あのクソ男……何処に逃げたのかしら?
あいつさえ見つけられたら、今回の事も解決するのに・・・」
友里は携帯の画面に映った事件の犯人の写メを冷たい目でにらみつけて画面を消した。
「ね~ね~、歌魔法って楽しみだね~」
鈴はのんびりと紅茶を飲みながら、窓に映し出された友里の後姿を見ていた。
「そうね・・・でもあの女良い趣味してるわ」
「あはは、確かにね~あれだけネコが被れるなら良い女優さんになれるよね♪」
「は~」っとニケは額に指を当てて軽く頭を振るが、鈴は全く気にした様子も無い。
「鈴ってみんなが思ってるよりイイ性格してるよね」
「ニケちゃんが~直ぐに顔に出るし~よくおしゃべりするもんね~」
鈴がニヤニヤとニケを見て笑っていた。
「鈴が腹黒いだけじゃない?
だいたい、何であの女を利用しようと思うのよ。
お父さんたちみたいで気持ち悪いのに・・・」
「だからだよ~それに他人なんだから徹底的に利用したら良いとおもうよ~」
「まぁ鈴のお陰で歌魔法なんてシステムを作ってもらえたからね、そこは感謝だよ」
鈴は「むふふ」と笑ってニケの頬をツンツンと突き、机の上のポッキーを口に2本入れて、そのままソファーに仰向けに倒れた。
次の日クロノス社の実験棟へアテナの二人はやって来た。
「やーやー良く来てくれたね!!早速だがこの装置をつけてオリンポスファンタジーにダイブしてもらえるかな?」
白衣を着た短髪垂れ目の男性・・・ニケ達にとってはおじさんが手首に付ける装置を手渡すと、それを受け取りながら「お兄ちゃんの捜索もこれぐらい早くやってくれたらいいのにね」とちくりと言葉の刺を男に突き刺した。
「ニケちゃんダメだよ~五十嵐さんも興味が無いながらもやってくれてるんだから~」
「ホント興味ないことには中々動かないのは駄目な大人の証明よね」
「うぐ・・・僕もちゃんとやってるよ、少しでも早く見つけられるように、あの膨大なデーターから色々な検証をやってるんだよー」
「はいはい、じゃあ早速やっちゃいますか」
落ち込む五十嵐を他所にさっさと準備を始める二人。
「はー確かに俺達が原因も犯人も見つけられてないから悪いんだけどね。
おじさんはもっと頑張って徹夜を続けるとするよ」
あはは、と三人は笑いあってダイブの準備を始めていった。
ニケも鈴も五十嵐に対して嫌な感情はあまり持っていなかった。
悠馬捜索に一番時間をかけているのも知っているし、何よりクロノス社において一番アテナの目的を理解してくれている大人の一人だといえるからだ。
軽口も三人にとっては日常であり、歌魔法も五十嵐の発案を鈴が友里に伝えて誘導し、実験に持ち込めたのだ。
”実験ステージは全部で3つ、君達の協力者に3人のプレイヤーさんを抽選で選抜してみたよー。頑張って力を合わせてクリアーしておくれ”
「おお!!!マジでアテナが居る!!!俺!俺ラグーン剣士!よろしく!!
良かったらスクショお願いしてもいいかな?」
勢いの良いオレンジ色のツンツン頭の青年剣士は、ニケとパラスの周りをぐるぐる回りながらキラキラした目で二人を見つめてきた。
「実験ステージはスクショできないわよ。
折角選ばれたのにアンタみたいな奴と一緒なんて……
失礼しましたわ、ワタクシ、フローズン・ペイン、拳闘士ですわ」
金髪釣り目の真紅のチャイナドレスの女性がニケに笑いかけて会釈をした。
「よろしく、私がニケ、この子がパラス」
ニケが挨拶すると、もう一人が姿を現した。
「はーい、アタシが一番だと思ったのにざぁんねん」
その漢は桜色の髪を頭頂部でお団子にして巨大な大剣を背負い、上半身裸のムキムキの男だった。
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そう言ってウィンクをする。
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