神の娘が行く月の教会創世記

たぬまる

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冒険者の町

アルテミスの弱点

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 オルフェの町は朝から喧騒に包まれていた。
 アルテミス達がフルティ鉱山の第一ボスを攻略して7日が経ち、ケインも必殺:真空刃が完成し、パーティーとしてのレベルがかなり上がっていた。

「アルテミス様!西の森からコングオーガの群れが町に迫っています。
 Fランク以上の冒険者は強制参加なので、参加してください」

 慌てた声を上げるコスタリカを見つめると。

「折角です、連携の練習がてら私達が先行しましょう」

「良いですな」

「俺はいつでも大丈夫です」

「やっちゃおうよ」

 三者三様の答えで了承を表すと、呆然とするコスタリカを残して、四人は西の森へ向かっていった。

 コングオーガは群れで生活をし、他の群れを取り込む事で最大400の群れになる。
 またオーガ種の中でも発達した筋力は強力で、毛皮も硬いために、接近戦では無類の強さを誇っていた。

「アルテミス様、後10分ほどで接敵ですな」

「では、この辺りで迎撃の準備をしましょう」

 アルテミスがそう言うと3人とも頷き、それぞれの準備を始める。

 アルテミスが魔法の光球をいくつも作り辺りを照らす。

 リリーは足元の土を魔法で掘り下げ、4人が余裕で入れる穴を掘り、出た土をドーム状にして硬質化。魔法をかけて簡易のトーチカを作った。

 マチェットは木に幾つかの罠を仕掛け、手が空いたリリーに穴を掘って貰い、毒のついた杭を仕掛けたりした。

 ケインは真空刃を使い、ある程度邪魔な枝を切り落とし、剣を振るいやすい環境を構築していた。

 そうこうしている間にコングオーガの先頭が姿を現した。

「先ずはワシから行こうかな」

 マチェットが指に4本矢を番えると次々に放っていく。アルテミスの作った光球に照らされて影が出てきたコングオーガは動けなくなり、それをチャンスとケインが真空刃を次々に飛ばし、確実にコングオーガの命を奪っていく。
 しかし、後続のコングオーガは仲間の死体を盾に更なる接近をしようとするが、粘着性の糸を張り巡らされた周辺に入ると、糸に捕えられ身動きが取れなくなった。

 リリーがその糸に絡まったコングオーガにファイアボールを10個ほど打ち込むと、糸ごとコングオーガが燃え、流石に後続のコングオーガも足を止めてしまう。

「ぎゃが」

 遥か後方から大きな声が聞こえると、コングオーガ達は再び前進を始めた。

「何かに率いられておるようじゃな」

「吹き飛ばしちゃえば関係ないよ・・・ファイアボール」

 こうして、コングオーガ達はケインの元にたどり着くまでに多大な犠牲を払ってしまった。

「これからは俺の番だ!」

 ケインは剣を振るい、次々にコングオーガを切り倒していく。
 接近戦に強いコングオーガの毛皮を切り裂ける理由は、真空刃の練習中に閃いた鋭斬のお陰であった。
 剣に込めた魔力を瞬間的に硬化鋭利化し、斬撃力を遥かに高める事に成功したのだった。

 流れるように次々とコングオーガを切り倒していく。

「プロテクション、パワーゲイン」

 アルテミスの声が聞こえるとケインの攻撃力がかなり上がり、更にコングオーガを切り倒す速度が上がる。

「凄い!このパワーなら」

 コングオーガがケインを囲み、動かなくなった。

「うぉぉぉぉぉおぉ!奥義:真真空刃!」

 ケインが身体を一回転させ剣を振りぬくと、超大な真空の刃でコングオーガの大半が切り伏せられた。
 それを見て一斉に逃げ出そうとするコングオーガをかき分けて、一回り大きなコングオーガが姿を現した。

「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 ケインが認識したと同時に凶悪な破壊力を秘めた巨大な棍棒を振り下ろしていた。
 ケインは鋭斬を使い切り飛ばそうとしたが、棍棒の半分を切った所で耐え切れずに吹き飛ばされてしまった。

「ぐ、きちぃ」

 上手く身体を一回転させて着地すると、そのまま真空刃を飛ばして牽制した。
 それに合わせてマチェットが影縫いを放ち、一瞬動けなくなった所をリリーのファイアロックランスが直撃する。
 硬質な岩の槍が腹に突き刺さり、炎を吹き上げる。

「ぐごこぉ」

 コングオーガはそれを無理やり引き抜くと、リリーに向かって槍投げの要領で投げつけてきた。

「危ない!」

「よけるんじゃ」

 距離があった二人が思わず声を上げるが、アルテミスの穏やかな声が聞こえた。

「リフレクトピッチ」

 リリーに飛んできた槍がそのままの勢いで再びコングオーガの心臓に突き刺さった。
 一瞬の出来事に三人とも固まってしまい、アルテミスは錫杖を握る腕から血が滴り落ちていた。

「危なかった・・・
 無事ですか?」

「わ、私は・・・アルテミス様!傷が」

「大丈夫です、少し強力な魔法を使ったので反動が出ただけです」

 青い顔をしてふらりと体が揺れるが穏やかな笑顔を浮かべているアルテミスに、自然とリリーは涙を流し感謝の祈りを捧げた。
「手当てをいたしましょう」

「ありがとう」

「俺、討伐部位と素材集めてきますね」

「私、ギルドに報告してきます」

「お願いね」

 そう言ってそれぞれに分かれて行動を始めた。
 
「しかし、アルテミス様も傷を負うのですな」

「ええ、月が出ていれば傷など付かないのですが」

 肩の傷の治療を終え休憩していると、森の奥から濃密な魔力を纏った人が現れた。

「あらら、折角暴走させたのに、全滅ぅざぁんねん」


 とある殺戮者の告白

 私はぁあらゆるモンスターをけしかけて、かなりの数の村と少しの町を滅ぼしてきたのぉ。
 そんな私にぃツクヨミと言う月の神がアルテミスって言う聖女を殺せばぁ、もっと力をくれると言うからぁ、とにかく朝、昼の内に仕掛けられたら、必殺魔法が使えないと聞いたのぉ。

 なのに!だのに!コングオーガの野郎あっさり死にやがって!!!
 奥の手を使わないとダメになったじゃない!!

「綺麗な顔をしているのねぇ、その顔をズタズタに引き裂いてやるわ」

「そうは行かんぞ!」

 爺が矢を放ってくるけど私に当たるわけ無いじゃない笑
 あれ?体が動かない。

「火炎の矢」

 アズイ!なによぉアルテミスじゃなくても強いじゃない。

「クワトロフレアアロー」

 4本の炎の矢が私にぃ襲い掛かってくる、ちぃ、奥の手~
 辺りが紅蓮に染まり、その熱さは私の口の中、気道を焼き、あまりの苦しさにもがこうとしてもなぜか体が動かず、逃れるすべが無い。
 早く起動してよぉ。

 キタキタキタ!

「月は沈んでいるかしらん」

 黒い鎧に黒銀のレイピア、あぁ素敵。

「沈みし月の宮よ、六星を描き敵を討て」

 私が唱えると墨のような黒い魔法陣が生まれて漆黒の光が二人を飲み込んだの・・・あぁさ・い・こ・う

「チェンジング・マジック」

 飲み込んだ光が眩い光に変わり私を飲み込んだのぉ。
 気がついたら私は・・・

 目の前に蓄え髭の美しい男が立っていて、両手両足を地面に固定されていた。

「なんなのよこれはぁ」

「被告、ブラン・ブレン、罪!同族殺し、及び惨殺行為における魂の穢れ。
 女神に対する不敬及び傷害、モンスターの誘導における瘴気地域の拡大。
 よって生き地獄の刑に処す」

 男がそういい木槌を打ち付けると私の体が闇に沈んでいく、何これ怖い。

「待つのじゃ、こやつにはワシの加護を付けておる。
 裁くことは許さんぞ」

 夢に出てきたツクヨミ様が助けに来た、やった~助かった

「残念ですが、クロス様のご採択された結果です。
 如何にツクヨミ様でも覆す事は出来ません。
 なお、ツクヨミ様もクロス様からの罰が届いております」

 冷たい目でツクヨミ様を見る男に、ツクヨミ様は少し気おされたように、後ろに下がり頭を振る。

「まさか、兄上がワシを・・・兄上を愛し続けるワシを罰すると?」

 ヨロヨロと黒いローブを纏ったツクヨミ様は机に手をつき、男を睨みつけたのん。

「月の神ツクヨミ、堕神未遂の罪で、無限牢獄拘留の刑とします」

「ふん、お前なんぞに捕まるものか」

 そう言ってツクヨミ様は姿を消してしまったわぁ。

 私はぁこうして永遠と続く地獄のような責め苦が決まったのん。

 誰か助けろよ!!!

 

 一方アルテミス達は

 魔法を反射し、襲撃者が消えた後
 アルテミスは倒れ、マチェットが背負い、ケインと町に戻ってきた。
 リリーに討伐証明の提出と報酬の受け取りに行ってもらっていた。
 意外とリリーとマチェットは冷静だったのだ。

「マチェットさん、俺たちはどうしたらいいんだ?」

 途方にくれたケインはマチェットにすがり付いていた。

「アルテミス様は魔力が回復されれば間違いなくお目覚めになります。
 それまでに、我らは更に力を付けねばなりません」

「そうか、良し!修行をしに行こうぜ!」

 飛び出そうとするケインの襟を掴み、引きとめると、ケインは息がつまりカエルの潰れたような声を上げて仰向けに倒れた。

「今日明日は休息日として、明後日から行ないます。
 アルテミス様の状態を見れば、お目覚めには1週間ほどかかると思いますので」
 こうして、アルテミスパーティーは再び修行を始めたのだった。
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