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引きこもり177日目~180日目

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 引きこもり177日目

 サーシャは謁見の間で無事回復したことを国王に告げ、周りの大臣もホッとしたような空気に包まれていた。

「サーシャ殿は我が息子を身を挺して守っていただき、感謝に堪えぬ。この礼は必ず」

「ありがとうございます、殿下も無事でホッとしています」

 そう言ってニッコリと笑うサーシャに国王は鷹揚に笑うと、謁見の間が穏やかな空気に変わった。

「陛下、私からサーシャさんにお話があります」

 殿下は1歩前に出て、国王が頷くのを確認すると、サーシャに向き直り

「僕が無事なのは間違いなく貴方のお陰です、先ずはお礼を」

 そう言って頭を下げる。

「そして、僕の気持ちを伝えさせて欲しい・・・僕は貴方が好きです!けっ結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?」

 そう言って、サーシャの前に跪き手を伸ばす。

「お気持ちは嬉しいです、私が前に結婚していなかったらお受けしました。
 ですが、私は出戻り者です。殿下に相応しいとは思えないのです」

 涙ながらに断りを告げるサーシャに、殿下は頭を降ると

「関係ないです、僕が好きになったのは貴方です。貴方の過去じゃない。
 お願いです、僕の側に居てください」

 口に手を当てて一歩下がるサーシャを逃がさないように手を握る。

「お願いです」

 真っ直ぐサーシャの瞳を捕らえるように見つめる殿下は真剣な目をしていた。

「私でいいの?」

「貴方が良いんです」

 目を閉じて天を仰ぐように顔を上にあげると、

「・・・わかりました、お付き合いしましょう」

 と泣き笑いの笑顔を向けた。

「ありがとうございます、ありがとう・・・」

 国王をはじめ、大臣達も祝福する中二人は口付けをした。

 そして周りに祝福される中、謁見の間の空中に創造神が姿を現した。

「我、創造神たるガールが告げる。
 現人神サーシャのこの素晴らしき婚姻に祝福を。
そして、サーシャの一族がこの国に居る限り、平穏と安寧を与えよう」

 そう言って手を天に翳すと光がマルシェ王国中に広がり

「契約は成された。くれぐれも感謝と努力、謙虚を忘れること無かれ。忘れた時滅びが起こるであろう」

 そう言って姿を消す創造神に、国王を含め大臣も跪き祈りを捧げる。

「創造神ってあんな性格じゃないよね?・・・現人神って何?」

 サーシャの呟きは祈りを捧げる国王達に聞こえる事無く、ただ風が聞いているだけだった。


 暫く後、祈りが終わり国王が立ち上がると

「皆の者!創造神様の祝福を受けた婚姻を盛大に祝おうぞ!!」

「「「おおお!!」」」

 盛り上がるオヤジ達、サーシャと殿下は隅に逃げ

「付き合うって話だったのに、何時の間にか結婚になっちゃってるし・・・」

「僕は嬉しいですけどね」

「もう、こうなったら仕方ないか・・・」

 こうして一組の夫婦が生まれた。
 しかし、これは新たなステージに物語が進む第一歩であった。

因みに

ミー氏はこの結婚に対して

「良かったです、これで地獄から開放されました。
でも、婿として相応しいように確りと教育してやります」

フランソワ氏は気絶してコメントが頂けませんでした。


引きこもり180日目

 三日三晩続いた婚姻祭も終わり、その間無理やり式典やなんやらで引きずり回された結果。
 新緑の森の館へと引きこもり、ひたすら創造神に食べさせてもらったふわふわのチーズケーキを大量生産していた。

「ま、マスター・・・9999個ほどチーズケーキを作っていますが・・・そろそろ止めませんか?」

「は!そんなに作ってた?じゃあ、半分ぐらい創造神様に渡してくるわ」

「あ、あの・・・そんなに渡されても嫌がらせになりそうですが」

 心配そうにサーシャに声をかけるミーだが、にこやかな笑みを浮かべると

「だって、付き合うだけのつもりが結婚になったのよ。
 御礼に行かないとね。
 意外と人数多そうだしこれぐらい要るよね?」

 ここ数日の貴族や他国の王族などの付き合いに疲れ果てたサーシャは少し怒っていた。
 そして、転移で神界へと転移して行った。

「え?転移で来れるようになったの?凄いねぇ」

 転移で現れたサーシャに少し驚いたような顔をした創造神だが直ぐに何時ものように戻った。

「ええ、創造神様にお礼を持ってきました」

「いや~お礼なんて良いのに」

 にこやかにサーシャがドンドンとふわふわチーズケーキを取り出していくと、

「こんなに!助かるよ、皆も食べたいって言っててね」

 創造神がそう言うと5000個のチーズケーキは神々で美味しくいただかれてしまった。

「まだありますよ」

「明日も食べれるなんて幸せだよ、ありがとう」

 にこやかに返され、やっぱりいっぱい居た、沢山作って正解だったと感じたサーシャだった。

「これもご縁だし喜んでもらえたから良しかな?」

 こうしてサーシャは結婚したが、生活は大して変化が無かった。違いは殿下がすっかり新緑の森へ居ついてしまい、ついには子供が出来たら王家に一人後を継がせるという事で婿養子に入ってしまった。

 
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