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第一章
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そろそろ膝から降りても良いですか?とソワソワしている可愛いジミルを、まだ身体が冷えているから駄目だと宥めて、背中へと腕を回した。
そうしていると、本当に暖かくて気持ちが良い。王子であるがゆえ幼い頃から父母と離れて暮らし、乳母や付き人さらには兄弟とさえこんな風に抱き合う事は今までなかった。
人の身体とは、こんなにも柔らかくて温かく芳しい香りがするものなのか。それともジミルが特別なのか。まるで、甘えるようにジミルへ頬を擦り付ける自分に戸惑いつつも、この温もりは手離したくないなと思う。
「ジミル、訊いてもいい?君の履歴書や報告書を見たよ。君はとても優秀だけど、何故僕の付き人を志望したの?」
「優秀だなんて、そんな風に評価して下さって嬉しいです。僕…実は、う~ん恥ずかしいんですけど、殿下…ジョン様が初恋なのです」
「僕が…初恋?」
「初めてお会いしたのはジョン様の社交界デビューの時です。僕の祖父は前国王派でしたので家門は分かりやすく没落しました。けれど成績が優秀でしたので、現在のマトック伯爵が僕を養子にしてくださったのです」
社交界デビューといえば、中等部に入学する前年なので8年前か。あの時は貴族という貴族が挨拶に来て、ジミルの事を憶えてないとしても不思議ではない。
「デビューした時のジョン様は、濡れた黒目がそれはそれは愛らしく、『うさぎ王子』という愛称もその時付いたお名前ですよ。僕は可愛らしいジョン様にお仕えしたくて、猛勉強しました。幸い成績は良かったので、前国王派の没落貴族でもマトック家の威光のもと補佐官見習いにまで復興致しました」
ジミルが優秀なのに兄たちの補佐官見習いにならなかったのは、前国王派であったため現在の王家上層階級とは距離を置かれた事と、僕への仄かな恋心からであったらしい。
「……ジミル。目が覚めたら男の腕の中で気持ち悪くなかった?ごめんね?」
「だって、人命救助ですよね?ましてや、ジョン様に嫌悪感なんて持ちませんよ?僕はジョン様の事が好きで、やっとここまで来たのですから」
にっこり笑ったジミルの唇は、血行が戻ってきたのか淡い桃色になっていた。寒さのせいで乾いた表面を舐める濡れた舌が、一瞬光る。艶かしくて目が離せず、僕は自然と頭が傾いて…キスをしてしまった。
触れるだけのキスだったが、唇の柔らかさがマシュマロみたいで感動してしまう。
僕は勢いでもう一度ちゅっ!と先程より強めに唇を押しつけた。ジミルは何が起きたかわからないとでもいうような、キョトンとした顔をしていた。
そんな可愛い顔をされたら、何度でもキスしたくなってしまう!
もう一度、啄むように下唇を挟み舌先で輪郭を左右になぞる。ジミルの肩が、ビクッと揺れた。
キスをして、はっきりと解った。僕はジミルを、好きになってしまったんだ。そして、多分これが僕たちの『恋愛』の始まりになるのかもしれない…。
そうしていると、本当に暖かくて気持ちが良い。王子であるがゆえ幼い頃から父母と離れて暮らし、乳母や付き人さらには兄弟とさえこんな風に抱き合う事は今までなかった。
人の身体とは、こんなにも柔らかくて温かく芳しい香りがするものなのか。それともジミルが特別なのか。まるで、甘えるようにジミルへ頬を擦り付ける自分に戸惑いつつも、この温もりは手離したくないなと思う。
「ジミル、訊いてもいい?君の履歴書や報告書を見たよ。君はとても優秀だけど、何故僕の付き人を志望したの?」
「優秀だなんて、そんな風に評価して下さって嬉しいです。僕…実は、う~ん恥ずかしいんですけど、殿下…ジョン様が初恋なのです」
「僕が…初恋?」
「初めてお会いしたのはジョン様の社交界デビューの時です。僕の祖父は前国王派でしたので家門は分かりやすく没落しました。けれど成績が優秀でしたので、現在のマトック伯爵が僕を養子にしてくださったのです」
社交界デビューといえば、中等部に入学する前年なので8年前か。あの時は貴族という貴族が挨拶に来て、ジミルの事を憶えてないとしても不思議ではない。
「デビューした時のジョン様は、濡れた黒目がそれはそれは愛らしく、『うさぎ王子』という愛称もその時付いたお名前ですよ。僕は可愛らしいジョン様にお仕えしたくて、猛勉強しました。幸い成績は良かったので、前国王派の没落貴族でもマトック家の威光のもと補佐官見習いにまで復興致しました」
ジミルが優秀なのに兄たちの補佐官見習いにならなかったのは、前国王派であったため現在の王家上層階級とは距離を置かれた事と、僕への仄かな恋心からであったらしい。
「……ジミル。目が覚めたら男の腕の中で気持ち悪くなかった?ごめんね?」
「だって、人命救助ですよね?ましてや、ジョン様に嫌悪感なんて持ちませんよ?僕はジョン様の事が好きで、やっとここまで来たのですから」
にっこり笑ったジミルの唇は、血行が戻ってきたのか淡い桃色になっていた。寒さのせいで乾いた表面を舐める濡れた舌が、一瞬光る。艶かしくて目が離せず、僕は自然と頭が傾いて…キスをしてしまった。
触れるだけのキスだったが、唇の柔らかさがマシュマロみたいで感動してしまう。
僕は勢いでもう一度ちゅっ!と先程より強めに唇を押しつけた。ジミルは何が起きたかわからないとでもいうような、キョトンとした顔をしていた。
そんな可愛い顔をされたら、何度でもキスしたくなってしまう!
もう一度、啄むように下唇を挟み舌先で輪郭を左右になぞる。ジミルの肩が、ビクッと揺れた。
キスをして、はっきりと解った。僕はジミルを、好きになってしまったんだ。そして、多分これが僕たちの『恋愛』の始まりになるのかもしれない…。
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