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第一章
19.
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アルバイトの就業時間が終わり、取り置いてもらっていたチーズの入ったパンを持ち外に出ると、街灯の下にジミルが立っていた。僕に気付いて、嬉しそうな笑顔で走ってくる。
「ジョン様、お仕事お疲れ様です」
「ジミル!寒いから夜の迎えはいいって言ったのに……」
「今来たとこですよ?歩いてきたらポカポカになったので大丈夫です!」
そうは言っても鼻の頭は赤くなってるし、手袋もしていない。
僕は自分の手袋をはずして遠慮しているジミルに無理矢理付けさせ、そのまま手を繋いで歩き出した。
「チーズパンあるよ」
「わあ!ありがとうございます!」
オーブンレンジで温め直したパンは、焼きたてのような香りがした。ジミルの前へ置くと、お腹がすいていたのだろうすぐに手にとって食べ始めた。
「ん!美味しい!わぁ、ふふっ!っと!」
チーズが伸びるのが、よほど面白いらしい。ジミルは念願のチーズパンを食べながら、可愛らしくニコニコと笑っている。
チーズの油分がぷっくりした唇に付き、てらてら光るそっちの方が美味しそうに見えて……胸の奥がキュゥンとなってしまい服の上から押さえた。
「外側はカリカリなんですね!」
ジミルの咥内に軽快な咀嚼音が響く。その音は僕の首筋から背中を筆で撫でるように伝わり、ぞわぞわしてなんだか癖になる感じだ。やっぱり我慢できない!
イスに座っているジミルに背後から覆い被さり、あご先に軽く指を当ててこちらを向かせた。
「……ジミル」
もぐもぐと動いてるくちばしに、ちゅっと軽く触れる。
「ジョン様も食べたいですか?」
照れ笑いして、パンを差し出してくるが" 食べたいのはジミルだよ " と言いそうになった。
まだ、ジミルへの感情が整理出来ていない。ジミルが『ジミル』で『天使』なら、長年探していた存在に出会えた事になり喜ばしいことでもあるのだ。
その事実を受け入れるのが、まだ難しいだけで。
それでも、ジミルが『ジミル』なのか確認しなければならない。もしも『ジミル』ならば、僕がプレゼントしたブレスレットを持っているはずだから。
社交界デビューセレモニーの後日、あのブレスレットが秘密裏に売買されていないか、王家の威信をかけて調査された。今もなお、時効の無い無期限な案件として継続中のはずだ。
僕の中の『ジミル』の記憶が消されていたせいで手掛かりが無く、ブレスレットはまだ見つかっていなかった。しかし市場に出回っていないので、『ジミル』が持っている可能性が高いということでもある。
今までは誰からも申し出が無く、相手が令嬢なのか令息なのかもわからないので調査出来ず暗礁に乗り上げていたはずだ。
けれど僕は『ジミル』を思い出した。ジミルに会って、思い出したのだ。こんな偶然があるわけない。
「ねえジミル。パンを食べたらお風呂に入って準備をして?それから、僕の『太陽紋』を見せてあげる」
「えっ?……………はい、わかりました。でも……」
ジミルは、頬を赤らめパンを頬張った。それから僕を上目遣いで見上げ、何を言うかと思えば、
「明日は公務の予定がありますので、加減して下さいね?」
「わかった……。努力する」
とりあえず、ジミルを全部剥いてみよう!
「ジョン様、お仕事お疲れ様です」
「ジミル!寒いから夜の迎えはいいって言ったのに……」
「今来たとこですよ?歩いてきたらポカポカになったので大丈夫です!」
そうは言っても鼻の頭は赤くなってるし、手袋もしていない。
僕は自分の手袋をはずして遠慮しているジミルに無理矢理付けさせ、そのまま手を繋いで歩き出した。
「チーズパンあるよ」
「わあ!ありがとうございます!」
オーブンレンジで温め直したパンは、焼きたてのような香りがした。ジミルの前へ置くと、お腹がすいていたのだろうすぐに手にとって食べ始めた。
「ん!美味しい!わぁ、ふふっ!っと!」
チーズが伸びるのが、よほど面白いらしい。ジミルは念願のチーズパンを食べながら、可愛らしくニコニコと笑っている。
チーズの油分がぷっくりした唇に付き、てらてら光るそっちの方が美味しそうに見えて……胸の奥がキュゥンとなってしまい服の上から押さえた。
「外側はカリカリなんですね!」
ジミルの咥内に軽快な咀嚼音が響く。その音は僕の首筋から背中を筆で撫でるように伝わり、ぞわぞわしてなんだか癖になる感じだ。やっぱり我慢できない!
イスに座っているジミルに背後から覆い被さり、あご先に軽く指を当ててこちらを向かせた。
「……ジミル」
もぐもぐと動いてるくちばしに、ちゅっと軽く触れる。
「ジョン様も食べたいですか?」
照れ笑いして、パンを差し出してくるが" 食べたいのはジミルだよ " と言いそうになった。
まだ、ジミルへの感情が整理出来ていない。ジミルが『ジミル』で『天使』なら、長年探していた存在に出会えた事になり喜ばしいことでもあるのだ。
その事実を受け入れるのが、まだ難しいだけで。
それでも、ジミルが『ジミル』なのか確認しなければならない。もしも『ジミル』ならば、僕がプレゼントしたブレスレットを持っているはずだから。
社交界デビューセレモニーの後日、あのブレスレットが秘密裏に売買されていないか、王家の威信をかけて調査された。今もなお、時効の無い無期限な案件として継続中のはずだ。
僕の中の『ジミル』の記憶が消されていたせいで手掛かりが無く、ブレスレットはまだ見つかっていなかった。しかし市場に出回っていないので、『ジミル』が持っている可能性が高いということでもある。
今までは誰からも申し出が無く、相手が令嬢なのか令息なのかもわからないので調査出来ず暗礁に乗り上げていたはずだ。
けれど僕は『ジミル』を思い出した。ジミルに会って、思い出したのだ。こんな偶然があるわけない。
「ねえジミル。パンを食べたらお風呂に入って準備をして?それから、僕の『太陽紋』を見せてあげる」
「えっ?……………はい、わかりました。でも……」
ジミルは、頬を赤らめパンを頬張った。それから僕を上目遣いで見上げ、何を言うかと思えば、
「明日は公務の予定がありますので、加減して下さいね?」
「わかった……。努力する」
とりあえず、ジミルを全部剥いてみよう!
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