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第一章
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僕は、何故今まで『ジミル』の事を忘れていたのだろうか。それとも誰かが意図的に忘れさせていたのか。
補佐官になるために同じ学校に通わないかと誘っておいて、あれから一度も会っていないし探そうともしていなかった。もしかしたらジミルは故郷で、僕からの連絡をひたすら待っていたかもしれないのに!
今まで一度も思い出さなかった『ジミル』という少年が、実はジミルなのだとしたら。再会して『ジミル』だと気がついていない僕の事を、どう思っていたのだろう。
社交界デビューセレモニーで僕を見かけて、それが初恋だと言っていたし、自力で補佐官になるために頑張ってきて、宰相の推薦文までもぎ取った。
僕に会って、何故連絡をくれなかったのかと責めたりもしない。
まだたった1日しか一緒に過ごしていないけれど、ジミルが優しくて僕に懐いているのがわかる。
だけど、ジミルが『ジミル』なのだとしたら。
ジミルが、天使だという事だ。
では何のために金髪を黒く染めて、僕の補佐官になることを目指しているのか。
どうして僕と一緒に生きようとしているのか。
" ジミル……あなたは『ジミル』なの? そして僕を助けてくれた天使なの? "
ジミルは僕を大学まで送り、スーツのまま護衛に就いていたから、やはり大変目立ち大人気だった。スーツだからこそ任務中だと思わせ、声を掛けるのが憚られていたが、プレゼントした服を着ていたらどうなっていたかとゾッとする。
僕の追っかけをしている女生徒たちは、『王子が天使を連れている!』『新人の護衛がイケてる!』として挙って僕とジミルのツーショットを携帯で撮影していた。
僕はもやもやしていたから彼女たちに笑顔を向ける事が出来なくて、「今日の王子機嫌わるーい!」と揶揄されてしまったが、その分ジミルが「ジョン様がお世話になっております」と愛想を振り撒き、その効果は絶大だった。
僕はそれも面白くなかった。欲を言えば、ジミルを誰の目にも触れさせたくない。わがままにも程があるとわかっていても、ジミルの目に写るのが僕だけであって欲しい。
もちろんジミルは、僕とのギクシャクとした空気に可哀相になるほど戸惑っていた。僕をアルバイト先のパン屋へ送った後も、「お気をつけて」と頭を下げ視線を合わせなかった。
そんなジミルの頭頂部の僅かに見える金髪を眺め、やはりこのままではいけないと思い直す。
「ジミルは何パンが好き?」
ジミルは顔を上げてキョトンとし少し考え、はにかんで答えた。
「あの……SNSで見たんですけど、こうチーズがたくさん入っててビヨ~ンってやつが食べたいです」
「わかった。ビヨ~ンってやつね。お土産にもらって帰るよ」
「はい!ありがとうございます!」
可愛いっ!目をキラキラさせて!
そんなに食べたかったんだね……。
そんな可愛い表情をされたら、何もかもどうでも良くなって、ただジミルを好きでいたい大事にしたいこの気持ちを大切にしたい!そう思えていた。
『ジミルは天使なの?』
それを訊ねたら、この関係が壊れてしまう気がした……。
補佐官になるために同じ学校に通わないかと誘っておいて、あれから一度も会っていないし探そうともしていなかった。もしかしたらジミルは故郷で、僕からの連絡をひたすら待っていたかもしれないのに!
今まで一度も思い出さなかった『ジミル』という少年が、実はジミルなのだとしたら。再会して『ジミル』だと気がついていない僕の事を、どう思っていたのだろう。
社交界デビューセレモニーで僕を見かけて、それが初恋だと言っていたし、自力で補佐官になるために頑張ってきて、宰相の推薦文までもぎ取った。
僕に会って、何故連絡をくれなかったのかと責めたりもしない。
まだたった1日しか一緒に過ごしていないけれど、ジミルが優しくて僕に懐いているのがわかる。
だけど、ジミルが『ジミル』なのだとしたら。
ジミルが、天使だという事だ。
では何のために金髪を黒く染めて、僕の補佐官になることを目指しているのか。
どうして僕と一緒に生きようとしているのか。
" ジミル……あなたは『ジミル』なの? そして僕を助けてくれた天使なの? "
ジミルは僕を大学まで送り、スーツのまま護衛に就いていたから、やはり大変目立ち大人気だった。スーツだからこそ任務中だと思わせ、声を掛けるのが憚られていたが、プレゼントした服を着ていたらどうなっていたかとゾッとする。
僕の追っかけをしている女生徒たちは、『王子が天使を連れている!』『新人の護衛がイケてる!』として挙って僕とジミルのツーショットを携帯で撮影していた。
僕はもやもやしていたから彼女たちに笑顔を向ける事が出来なくて、「今日の王子機嫌わるーい!」と揶揄されてしまったが、その分ジミルが「ジョン様がお世話になっております」と愛想を振り撒き、その効果は絶大だった。
僕はそれも面白くなかった。欲を言えば、ジミルを誰の目にも触れさせたくない。わがままにも程があるとわかっていても、ジミルの目に写るのが僕だけであって欲しい。
もちろんジミルは、僕とのギクシャクとした空気に可哀相になるほど戸惑っていた。僕をアルバイト先のパン屋へ送った後も、「お気をつけて」と頭を下げ視線を合わせなかった。
そんなジミルの頭頂部の僅かに見える金髪を眺め、やはりこのままではいけないと思い直す。
「ジミルは何パンが好き?」
ジミルは顔を上げてキョトンとし少し考え、はにかんで答えた。
「あの……SNSで見たんですけど、こうチーズがたくさん入っててビヨ~ンってやつが食べたいです」
「わかった。ビヨ~ンってやつね。お土産にもらって帰るよ」
「はい!ありがとうございます!」
可愛いっ!目をキラキラさせて!
そんなに食べたかったんだね……。
そんな可愛い表情をされたら、何もかもどうでも良くなって、ただジミルを好きでいたい大事にしたいこの気持ちを大切にしたい!そう思えていた。
『ジミルは天使なの?』
それを訊ねたら、この関係が壊れてしまう気がした……。
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