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第一章
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あの事件の時に、僕は天使に抱き上げられ間近に顔を見た。あまりにも綺麗な造りに直視出来ず、首に抱きついた時の温もりも覚えている。
目の前の少年の顔は、あの天使にとても良く似ていた。自分が成長した事によってなのか、月明かりの下だからそう見えるのかわからないけど、助けてもらったあの日よりも幼く見える。
「僕と、会ったこと、あるよね?」
「今日が初めてですよ?」
目を見張って、いやいや違うと手を振る。俯いて、照れ隠しなのか崩れてもいない前髪をサラサラと手櫛で梳いていた。
その仕草は、あまりにも同年代の少年の人間臭さを感じさせた。
「失礼致しました。ジミル・マトックと申します」
顔は同じなのに、会うのは初めてだと言われ、他に何か手掛かりがないかと食い気味に質問した。
「学校は何処?」
「学校は地方の公立なので、殿下とお会いする機会はございませんでした。ですから本日のデビューセレモニーで、本当に初めてお会いします。先程の王子としてのご挨拶、とてもご立派で素敵でした」
「翼は……どうしたの?」
「翼?」
「あなたの翼だよ……真っ白で綺麗な!」
「……何を仰っているのですか?」
「だって!あなたでしょう?僕が5歳の時に命を助けてくれたでしょう?」
「すみません!なんのことだか……」
その時、違和感に気がついた。あんなにどうしても誰にも話せなかった天使との逸話が、この、ジミルを相手にだったら話せているという事。
それが全てを物語っている!
その時、背後で人の気配がした。あの時みたいにそちらを振り返れば、ジミルが消えてしまいそうな気がして、僕は急いで言った。
「ねえ、ジミル?また会える?」
「そうですね……。殿下と僕の星の巡りが重なれば、会えると思います」
その返答は『もう会えない』と言われているような気がした。悔しくて、さらに言った。お願い、まだいなくならないで!
「ジミル!僕の補佐官にならない?補佐官になれば僕たち、ずっと一緒にいられるよ!だから、同じ学校に通えるようにジミルのお父様に……」
「ほ?補佐官ですか?!」
地方から登城してきて、いきなり王子にこんな事を言われれば、びっくりするだろう。
けれどもジミルは、「機会があれば是非。精進致しますね」そう言って頷いた。
「そうだ、約束としてこれを持っていて!」
僕は自分の手首に着けていたブレスレットを外して、ジミルの手首に着けた。月のチャームが付いたこれは、僕がこの社交界デビューセレモニーで気に入った女性に渡す為の物だった。
「こんなに素敵な物………よろしいんですか?」
「ジミルに持っていて欲しいんだ。きっとあなたは、僕の天使だから!」
「ふふ。殿下のお気持ちはとても強そうです。では……天使の僕からは御礼に、祝福のキスをさせて頂いてもよろしいですか?」
「祝福の?……キス?!」
「さあ、目を閉じて下さい」
「え?あ、あ、うん!」
僕は慌てて目を閉じた。すると、唇に柔らかい何かが触れて、啄んで離れた。
フワリと身体が優しい温もりに包まれ、懐かしさが溢れた。
じんわりと広がる幸福感。
「あぁ!ジミル……僕の天使!」
抱き締めると、あまりにもゴワゴワゴツゴツとした感触。
あれ?ジミルって意外と……?
「ジョン殿下?何をされてるんですか?」
目を開けると、軍服を着た護衛の騎士が立っていた。
「っ!っ!っ!」
僕はぎぃゃあああーっ!と、王子らしからぬ悲鳴を上げて、バタリと倒れた。
翌朝目覚めたら、セレモニーでの後半の記憶が無かった。兄たちからは「記憶がなくなる程酒を呑んだのか?未成年なのに駄目だぞ!」とか、ブレスレットが無くなっている事に「相手は誰だ?来年の今頃お前の子供を抱いた令嬢が現れるかもしれないな!」と散々揶揄かわれた。
確かに、令嬢のような存在を口説いた記憶がぼんやりと残っていたので、しばらく社交界の催しには参加を控えようと思った。
目の前の少年の顔は、あの天使にとても良く似ていた。自分が成長した事によってなのか、月明かりの下だからそう見えるのかわからないけど、助けてもらったあの日よりも幼く見える。
「僕と、会ったこと、あるよね?」
「今日が初めてですよ?」
目を見張って、いやいや違うと手を振る。俯いて、照れ隠しなのか崩れてもいない前髪をサラサラと手櫛で梳いていた。
その仕草は、あまりにも同年代の少年の人間臭さを感じさせた。
「失礼致しました。ジミル・マトックと申します」
顔は同じなのに、会うのは初めてだと言われ、他に何か手掛かりがないかと食い気味に質問した。
「学校は何処?」
「学校は地方の公立なので、殿下とお会いする機会はございませんでした。ですから本日のデビューセレモニーで、本当に初めてお会いします。先程の王子としてのご挨拶、とてもご立派で素敵でした」
「翼は……どうしたの?」
「翼?」
「あなたの翼だよ……真っ白で綺麗な!」
「……何を仰っているのですか?」
「だって!あなたでしょう?僕が5歳の時に命を助けてくれたでしょう?」
「すみません!なんのことだか……」
その時、違和感に気がついた。あんなにどうしても誰にも話せなかった天使との逸話が、この、ジミルを相手にだったら話せているという事。
それが全てを物語っている!
その時、背後で人の気配がした。あの時みたいにそちらを振り返れば、ジミルが消えてしまいそうな気がして、僕は急いで言った。
「ねえ、ジミル?また会える?」
「そうですね……。殿下と僕の星の巡りが重なれば、会えると思います」
その返答は『もう会えない』と言われているような気がした。悔しくて、さらに言った。お願い、まだいなくならないで!
「ジミル!僕の補佐官にならない?補佐官になれば僕たち、ずっと一緒にいられるよ!だから、同じ学校に通えるようにジミルのお父様に……」
「ほ?補佐官ですか?!」
地方から登城してきて、いきなり王子にこんな事を言われれば、びっくりするだろう。
けれどもジミルは、「機会があれば是非。精進致しますね」そう言って頷いた。
「そうだ、約束としてこれを持っていて!」
僕は自分の手首に着けていたブレスレットを外して、ジミルの手首に着けた。月のチャームが付いたこれは、僕がこの社交界デビューセレモニーで気に入った女性に渡す為の物だった。
「こんなに素敵な物………よろしいんですか?」
「ジミルに持っていて欲しいんだ。きっとあなたは、僕の天使だから!」
「ふふ。殿下のお気持ちはとても強そうです。では……天使の僕からは御礼に、祝福のキスをさせて頂いてもよろしいですか?」
「祝福の?……キス?!」
「さあ、目を閉じて下さい」
「え?あ、あ、うん!」
僕は慌てて目を閉じた。すると、唇に柔らかい何かが触れて、啄んで離れた。
フワリと身体が優しい温もりに包まれ、懐かしさが溢れた。
じんわりと広がる幸福感。
「あぁ!ジミル……僕の天使!」
抱き締めると、あまりにもゴワゴワゴツゴツとした感触。
あれ?ジミルって意外と……?
「ジョン殿下?何をされてるんですか?」
目を開けると、軍服を着た護衛の騎士が立っていた。
「っ!っ!っ!」
僕はぎぃゃあああーっ!と、王子らしからぬ悲鳴を上げて、バタリと倒れた。
翌朝目覚めたら、セレモニーでの後半の記憶が無かった。兄たちからは「記憶がなくなる程酒を呑んだのか?未成年なのに駄目だぞ!」とか、ブレスレットが無くなっている事に「相手は誰だ?来年の今頃お前の子供を抱いた令嬢が現れるかもしれないな!」と散々揶揄かわれた。
確かに、令嬢のような存在を口説いた記憶がぼんやりと残っていたので、しばらく社交界の催しには参加を控えようと思った。
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