新しい付き人が天使のように可愛い人だったので一目惚れしてしまいました!

柏葉 結月

文字の大きさ
17 / 26
第一章

16.

しおりを挟む
    僕は、15年前に命を助けてくれた天使にもう一度会いたいと思っている。親善大使として訪れたこの国に留学したのだって、もしかしたら何か手掛かりが見つかるかもしれないと思っての事だ。

    当時の僕は5歳。幼過ぎて、交通事故に遇う直前身を挺して護ってくれた天使に、お礼をきちんと言えたかどうかも覚えていない。

    この話を周りの大人たちに話そうとすると、皆一様に辛そうに顔を歪め「嫌なことは忘れた方がいい」と言った。母である皇妃殿下には「無事で良かった!」と言われ、強く抱き締められとても泣かれた。

「違うよ!あの人はとても優しかった!あの人は……『天使なんだ!』」

    訳がわからなかった。その一言を叫びたくても、どうしても舌が凍りついて発音出来ない。何度も試したが、ぱくぱくどころか口も開かなくなる。何か超常的な力で、僕の口からは真実が語れないようになっているのかもしれないと諦めた。

    後になって政変によって悪事が暴かれた時、あの交通事故(未遂)が仕組まれた暗殺計画だった事を知る。
    現国王の反勢力が、親善大使として異国に行った僕を、警備が手薄な隙をついて殺そうとしたのだという。天使が護ってくれなかったら、僕は死んでいたのだ。

    太陽のひかりを編んだような金色の髪に、角度によって虹色になる瞳。そして、眩しい位に真っ白な翼を持った天使……。

    彼の話は、大人たちにはおろか学校の友人たちにさえ話すことは出来なかった。
    ところが、一人だけ天使の話を出来た人物がいた。

    あの日。社交界へデビューした日。
    僕は、バルコニーで貴族の令息に会った。

    デビュタントだった僕は、何人もの貴族たちに挨拶をされ、目の回るような忙しさだった。後半なんて名前も顔も覚えていない。
    へき易して気分も悪くなり、王族専用の休憩室へ行きたかったが、行けば誰かしら親族の絡みがある。それを考えると、人気の無い所を探した方がマシだったので、大広間のギャラリーから続くバルコニーに出た。

    先客が居たので軽く頭を下げ、踵をかえそうとして、足が動かなくなった。いや、足だけでなく身体全てが、思考能力すらも停止した。自分が今見たものを、信じる事が出来なかった。

    そこに、何年も会いたいと恋焦がれていた天使がいたのだ。
    翼は生えていないし、年の頃が自分と変わらない少年のように見えたが、月明かりの中仄かに光り輝いている。

    彼は、ダンスのステップを踏んでいた。

    大広間から洩れる明かりと、満月から届く月の光りの中。体重を感じさせない水平移動は、キラキラと光りの粉が舞うような残像が網膜に焼きついた。


「あなたは天使?」

    天使の足が止まった。怪訝そうに僕を見て口を開いた。

「天使?僕が?どうしてそう思う…のですか?」

    少し高めの可愛らしい声。話してみれば、天使ではなく、人間だった。

「見事な金髪だね?夜目にも月明かりに輝いている。まるで月の女神のようだ」

「恐れ入ります」

「近くで見てもいいかな?」

「……どうぞ」


    あの時近くで見た天使と同じ顔が、目の前にあった。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

絶対に追放されたいオレと絶対に追放したくない男の攻防

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO
BL
世は、追放ブームである。 追放の波がついに我がパーティーにもやって来た。 きっと追放されるのはオレだろう。 ついにパーティーのリーダーであるゼルドに呼び出された。 仲が良かったわけじゃないが、悪くないパーティーだった。残念だ……。 って、アレ? なんか雲行きが怪しいんですけど……? 短編BLラブコメ。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

悪役令嬢の兄、閨の講義をする。

猫宮乾
BL
 ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

処理中です...