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僕たちのこじれた関係①
7. side Y ③
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“ よし!今だ!”
僕はタイミングを見計らって、ミンジェのいる練習室へ忍び込んだ。
倒れるまで練習を続けているのが心配で、こっそりと見守っているくせに中々行動出来ないのが、自分でもおかしいと思う。
ミンジェの隣にはいつもスヒョンがいて、僕は年下だからつい遠慮がちになってしまう。僕の方からミンジェに近づくには、こんなチャンスでもなければ叶わなかった事だ。
ただ、ミンジェが『ひとり』で練習しているということは、その姿を誰かに見られるのが嫌なんじゃないかと思っている。コンプレックスなのか、プライドなのか不明だけど、少なくとも『弟』の僕には見せたくないんじゃないかって…。
だから僕は、ミンジェが踊り疲れて動かなくなるまで、見守っている事しか出来ないのだ。
最初は見ているだけだった。いつの間にか陰ながら支えたいと思い、ミンジェの身体に触れてからは、欲が出てしまった。
彼の身体をマッサージしつつ、コンディションを整えているのは自分だ、などと独占欲にも似た感情を『弟』が持っているのはおかしい。おかしい…おかしい…と自問しながら止められない。
慎重に、足音をたてないようにして近づく。
けれどあと少しという所で、信じられないことにミンジェが起き上がろうとしていた!
“ う、嘘っ!”
僕は慌ててバタバタとドアに走り、練習室を出てしまった。心臓の音がドキドキと大きくなり、足早に練習室を離れた。
“ ヤバい…、絶対にバレた…。”
この間、マッサージしているとミンジェの意識が戻った時があった。「ありがとうございます」と言われ、その時も心臓が止まるかと思った。敬語だったから、僕だって気がついてないんだ…と調子にのって、そのままマッサージを続けてきた。
でも、今日はさすがに目撃されたと思う。
逃げるように走り去る僕を、ミンジェはどんな気持ちで見ていただろう?
もしかしたら今までの事を思い出して、不審に思ったかもしれない……。
“ ごめんなさい!ごめんなさい!”
僕は、恥ずかしくて恥ずかしくて、その勢いのまま宿舎まで走って帰った。
宿舎に着くと、リビングにスヒョンがいた。息切れを起こしながら、冷蔵庫からミネラルウォーターを出し一気飲みする。
「どうした?なんかあった?ミンジェは?」
「ブハッ!」
僕は飲んでいた水を吹き出して、もう少しでスヒョンをずぶ濡れにする所だった。
「ミ、ミンジェ、ヒョンは、まだ、練習…」
息継ぎの合間に答えると、スヒョンは何だかニヤッと笑った。
「シャワー浴びたら俺の部屋に来ない?久々にゲームしよ?」
「う、うん!後で行く!」
少し前まで、スヒョンの部屋にはよく遊びに行っていた。彼はメンバーの中で一番歳が近く、ビジュアルがとにかくカッコいいのでとても憧れている。
それが…ミンジェが上京してから、いつの間にか僕たちの関係はバランスを崩し、僕はスヒョンの部屋へあまり行かなくなった。
部屋に入っても、ミンジェの枕が置きっぱなしで、その事に少なからずショックを受けて戸惑う。敢えてソレには触れず、僕はゲームをするためにコントローラーを手に取った。
僕とスヒョンの間には、見えない壁が出来てしまっていた。それは僕が想像するに『ミンジェへの想い』というもの。スヒョンがどういうつもりでいるのか、気持ちを尋ねた事もないし、お互いにモヤモヤしているのではないかと思う。
「久々のゲームなのに、つまらなそうだな?」
「え?」
「なんか上の空?悩み事でもあんの?」
「……ミンジェヒョン、帰って来ませんね?」
そこでスヒョンは、携帯を見た。
「もう、帰るって。今日はマッサージ師が来なくて回復が遅れてるんだと」
「……マッサージ師…」
それって、僕の事だよね?コントローラーを持つ手が、固まってしまった。
「ヨングはなんでミンジェに辛くあたるの?」
「辛く…!?」
「ミンジェに俺を取られて、妬いてる?それとも…俺がミンジェを離さないから?」
「…えっ…と」
いきなり前置きもなく核心を突かれて、なんだか顔が熱くなってきた。どう切り返して答えたらいいのか、全く単語が浮かばない。スヒョンは、全てわかっていてこんな質問をしてくるのだろうか。僕だって、この感情の正体に戸惑っていて、どうしていいかわからないのに!
コントローラーとテレビ画面に集中していて、聞こえなかった振りを…と思っていると、スヒョンは更に突っ込んだ質問をしてくる。
「ミンジェのこと好き?」
“ …すぅ~きぃ?………好き?好きってどういう種類?”
ブワッと首まで熱くなる。だけど…スヒョンに訊かれて、ストンと来るものがあった。『好き』っていう言葉が、染み込んでくる。
そっか、僕はミンジェのこと…………、
「…………………………好、き…です…」
「じゃあ大事にして?俺の大好きな友達だから」
僕は顔を上げた。
僕の憧れる、綺麗な笑顔。
大好きなヒョン。
その笑顔は、確かに僕も愛されているんだと伝わってくる笑顔で…。
僕が思春期の階段を、戸惑いながら登ってるのを隣で、後ろで、見守ってくれている他のヒョンたちと同じ、優しい気持ちが溢れている。
だから、素直に伝えることが出来た。
「僕、ミンジェヒョンが好きです」
僕はタイミングを見計らって、ミンジェのいる練習室へ忍び込んだ。
倒れるまで練習を続けているのが心配で、こっそりと見守っているくせに中々行動出来ないのが、自分でもおかしいと思う。
ミンジェの隣にはいつもスヒョンがいて、僕は年下だからつい遠慮がちになってしまう。僕の方からミンジェに近づくには、こんなチャンスでもなければ叶わなかった事だ。
ただ、ミンジェが『ひとり』で練習しているということは、その姿を誰かに見られるのが嫌なんじゃないかと思っている。コンプレックスなのか、プライドなのか不明だけど、少なくとも『弟』の僕には見せたくないんじゃないかって…。
だから僕は、ミンジェが踊り疲れて動かなくなるまで、見守っている事しか出来ないのだ。
最初は見ているだけだった。いつの間にか陰ながら支えたいと思い、ミンジェの身体に触れてからは、欲が出てしまった。
彼の身体をマッサージしつつ、コンディションを整えているのは自分だ、などと独占欲にも似た感情を『弟』が持っているのはおかしい。おかしい…おかしい…と自問しながら止められない。
慎重に、足音をたてないようにして近づく。
けれどあと少しという所で、信じられないことにミンジェが起き上がろうとしていた!
“ う、嘘っ!”
僕は慌ててバタバタとドアに走り、練習室を出てしまった。心臓の音がドキドキと大きくなり、足早に練習室を離れた。
“ ヤバい…、絶対にバレた…。”
この間、マッサージしているとミンジェの意識が戻った時があった。「ありがとうございます」と言われ、その時も心臓が止まるかと思った。敬語だったから、僕だって気がついてないんだ…と調子にのって、そのままマッサージを続けてきた。
でも、今日はさすがに目撃されたと思う。
逃げるように走り去る僕を、ミンジェはどんな気持ちで見ていただろう?
もしかしたら今までの事を思い出して、不審に思ったかもしれない……。
“ ごめんなさい!ごめんなさい!”
僕は、恥ずかしくて恥ずかしくて、その勢いのまま宿舎まで走って帰った。
宿舎に着くと、リビングにスヒョンがいた。息切れを起こしながら、冷蔵庫からミネラルウォーターを出し一気飲みする。
「どうした?なんかあった?ミンジェは?」
「ブハッ!」
僕は飲んでいた水を吹き出して、もう少しでスヒョンをずぶ濡れにする所だった。
「ミ、ミンジェ、ヒョンは、まだ、練習…」
息継ぎの合間に答えると、スヒョンは何だかニヤッと笑った。
「シャワー浴びたら俺の部屋に来ない?久々にゲームしよ?」
「う、うん!後で行く!」
少し前まで、スヒョンの部屋にはよく遊びに行っていた。彼はメンバーの中で一番歳が近く、ビジュアルがとにかくカッコいいのでとても憧れている。
それが…ミンジェが上京してから、いつの間にか僕たちの関係はバランスを崩し、僕はスヒョンの部屋へあまり行かなくなった。
部屋に入っても、ミンジェの枕が置きっぱなしで、その事に少なからずショックを受けて戸惑う。敢えてソレには触れず、僕はゲームをするためにコントローラーを手に取った。
僕とスヒョンの間には、見えない壁が出来てしまっていた。それは僕が想像するに『ミンジェへの想い』というもの。スヒョンがどういうつもりでいるのか、気持ちを尋ねた事もないし、お互いにモヤモヤしているのではないかと思う。
「久々のゲームなのに、つまらなそうだな?」
「え?」
「なんか上の空?悩み事でもあんの?」
「……ミンジェヒョン、帰って来ませんね?」
そこでスヒョンは、携帯を見た。
「もう、帰るって。今日はマッサージ師が来なくて回復が遅れてるんだと」
「……マッサージ師…」
それって、僕の事だよね?コントローラーを持つ手が、固まってしまった。
「ヨングはなんでミンジェに辛くあたるの?」
「辛く…!?」
「ミンジェに俺を取られて、妬いてる?それとも…俺がミンジェを離さないから?」
「…えっ…と」
いきなり前置きもなく核心を突かれて、なんだか顔が熱くなってきた。どう切り返して答えたらいいのか、全く単語が浮かばない。スヒョンは、全てわかっていてこんな質問をしてくるのだろうか。僕だって、この感情の正体に戸惑っていて、どうしていいかわからないのに!
コントローラーとテレビ画面に集中していて、聞こえなかった振りを…と思っていると、スヒョンは更に突っ込んだ質問をしてくる。
「ミンジェのこと好き?」
“ …すぅ~きぃ?………好き?好きってどういう種類?”
ブワッと首まで熱くなる。だけど…スヒョンに訊かれて、ストンと来るものがあった。『好き』っていう言葉が、染み込んでくる。
そっか、僕はミンジェのこと…………、
「…………………………好、き…です…」
「じゃあ大事にして?俺の大好きな友達だから」
僕は顔を上げた。
僕の憧れる、綺麗な笑顔。
大好きなヒョン。
その笑顔は、確かに僕も愛されているんだと伝わってくる笑顔で…。
僕が思春期の階段を、戸惑いながら登ってるのを隣で、後ろで、見守ってくれている他のヒョンたちと同じ、優しい気持ちが溢れている。
だから、素直に伝えることが出来た。
「僕、ミンジェヒョンが好きです」
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