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僕たちのこじれた関係①
8. side Y ④
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ミンジェの事を好きだと自覚して、スヒョンには大事にしてと言われ…。
素直になりたいけれど、ミンジェを前にするとどうしても意識してしまう。照れ臭さのため距離を取りたいのに、いつの間にかミンジェを目で追って。糸目でニッコリ笑いかけられると、自分の口角も上がる。
それでもまだ、僕がミンジェに近づけるのはこの誰もいない練習室だけでだった。
ぐったりと倒れたミンジェが少しでも楽に休めるように、頭を膝に乗せた。僕がマッサージをしていた事、多分昨日でバレている。
ミンジェが途中で起き上がったのは、自分の身体に触れるのが誰なのか知りたかったのだろう。不安になったかもしれない。だからもう、目を覚ましても逃げないでいようと思った。
ミンジェの寝顔を見つめる。こんなに近くで、こんなに長く彼の顔を見る事なんてない。何故か緊張して、胸が苦しかった。
思い付いて、持っていた携帯で寝顔を撮った。フォルダには少しずつ撮り溜めているミンジェがいるんだけど、どの写真もなんだかブレている。
けれど、今撮った寝顔は鮮明で、僕はしばらくその写真を眺めていた。
少し上向きのぽってりとした赤い口唇。
ふくらんだ白い頬。
睫毛はそんなに長くないし、多くもない。
ああ、切れ長なんだ。だから目が大きく見えるのかな。
瞼が、腫れやすい…。
泣いてたんだってすぐわかる。
僕がきつい言葉で傷つけた事もある。自分の気持ちに理由がわからず、八つ当たりみたいな行動をとった。
僕は携帯の画面に夢中になっていて、ミンジェが薄目を開けた事に気がついていなかった。
「…どうして?」
突然呟きが聞こえて、ビクッと膝を揺らしてしまった。おそるおそる携帯をずらすと、ミンジェが目を開けていた。
「今まで、僕が練習で疲れた時マッサージしてくれたの…ヨングァだったんだよね?その、ありがとう。お前のおかげで僕は頑張る事が出来た…」
膝の上から見上げてくるアングルは、正直ヤバい。ミンジェって…こんなに、可愛い人だったっけ?
ムクムクと庇護欲が涌いてきて、僕は一緒に練習をする事を提案した。
ちょっと強引だったかと思ったけれど、一人で倒れるまで練習している事が心配だった。
「ありがとう!」と、ミンジェが抱きついてきて、僕はワンちゃんみたいに頭をグシャグシャに掻き回された。
“ あぁ!せっかくヘアセットしてあるのに!”
けれど、僕の顔は多分真っ赤になっていて『好き』だという気持ちを気づかれたらどうしようと、そればかり気になってしまった。
僕は、ミンジェの事を純粋に好きだった。自分の心の中にあるミンジェのカテゴリーは、一緒に過ごす時間が増えた事で日々アップデートされていく。
けれどそれとは別に、時々ミンジェに無性に触れたいという、未知の感情が沸き上がる事があって、戸惑いと切なさと熱い気持ちがぐるぐると回っている。
二人でいつものように練習して、水分補給しながらミンジェのダンスについて話していた時だった。僕がダンスを褒める所為で照れ出したミンジェが可愛くて、身体が勝手に動いた。
腕を掴んで引き寄せ、後ろから抱き締めてしまったのだ。
“ は?僕は一体何を…?”
ミンジェは何も疑問に思っていないようで、されるがままだ。たしか、マッサージを始めた時にも、無意識に触れていた。それは、あらがいがたい衝動だったのだ。
慌てて誤魔化すように、ミンジェの肩甲骨の間を指圧する。すると、「んっ!」と鼻に抜ける声にドキッとしてしまった。鏡越しに見るミンジェは、眉をしかめていて、辛そうだった。
その表情に、僕の心臓は更にドキドキとうるさくなる。
それからも、僕は色々と葛藤している。相変わらずミンジェは僕を構って、照れる僕を見て悪戯っぽく微笑う。そんな関係性が、ふわふわと高揚して好きだった。ミンジェとの馴れ合いは、僕を自然と笑顔にする。
ところがある日、衝撃的な事実が判明した。
『ミンジェとヨングの営業は成功だった』
事務所内で囁かれる噂を耳にして、温かかった心が、冷水に浸かったように凍えそうになった。
「今までの…全部、嘘…だったの?」
ミンジェを、…信じたい。
僕を、『好きだ』と言ってくれる言葉、急に絡まってくるしなやかな腕、糸目の優しい笑顔、時おり押しあてられる、柔らかい口唇。
内気な僕を、陽のあたる場所へ連れ出してくれるその意思。
仕組まれた事だなんて、信じられない!
「ヨングゥ~!一緒に練習しよっ!」
「………。」
抱きつかれそうになった腕を、反射的に叩いてしまって、顔が強張る。ミンジェは呆然としながらも、瞳が揺れ出した。
「え?」
こんな疑心暗鬼の弱い心では、今ミンジェの隣に立つことは出来ない。
「練習、ひとりでやって下さい。僕も、課題があるので。来週テストだし、しばらくは無理です」
逃げるようにその場をあとにした。
素直になりたいけれど、ミンジェを前にするとどうしても意識してしまう。照れ臭さのため距離を取りたいのに、いつの間にかミンジェを目で追って。糸目でニッコリ笑いかけられると、自分の口角も上がる。
それでもまだ、僕がミンジェに近づけるのはこの誰もいない練習室だけでだった。
ぐったりと倒れたミンジェが少しでも楽に休めるように、頭を膝に乗せた。僕がマッサージをしていた事、多分昨日でバレている。
ミンジェが途中で起き上がったのは、自分の身体に触れるのが誰なのか知りたかったのだろう。不安になったかもしれない。だからもう、目を覚ましても逃げないでいようと思った。
ミンジェの寝顔を見つめる。こんなに近くで、こんなに長く彼の顔を見る事なんてない。何故か緊張して、胸が苦しかった。
思い付いて、持っていた携帯で寝顔を撮った。フォルダには少しずつ撮り溜めているミンジェがいるんだけど、どの写真もなんだかブレている。
けれど、今撮った寝顔は鮮明で、僕はしばらくその写真を眺めていた。
少し上向きのぽってりとした赤い口唇。
ふくらんだ白い頬。
睫毛はそんなに長くないし、多くもない。
ああ、切れ長なんだ。だから目が大きく見えるのかな。
瞼が、腫れやすい…。
泣いてたんだってすぐわかる。
僕がきつい言葉で傷つけた事もある。自分の気持ちに理由がわからず、八つ当たりみたいな行動をとった。
僕は携帯の画面に夢中になっていて、ミンジェが薄目を開けた事に気がついていなかった。
「…どうして?」
突然呟きが聞こえて、ビクッと膝を揺らしてしまった。おそるおそる携帯をずらすと、ミンジェが目を開けていた。
「今まで、僕が練習で疲れた時マッサージしてくれたの…ヨングァだったんだよね?その、ありがとう。お前のおかげで僕は頑張る事が出来た…」
膝の上から見上げてくるアングルは、正直ヤバい。ミンジェって…こんなに、可愛い人だったっけ?
ムクムクと庇護欲が涌いてきて、僕は一緒に練習をする事を提案した。
ちょっと強引だったかと思ったけれど、一人で倒れるまで練習している事が心配だった。
「ありがとう!」と、ミンジェが抱きついてきて、僕はワンちゃんみたいに頭をグシャグシャに掻き回された。
“ あぁ!せっかくヘアセットしてあるのに!”
けれど、僕の顔は多分真っ赤になっていて『好き』だという気持ちを気づかれたらどうしようと、そればかり気になってしまった。
僕は、ミンジェの事を純粋に好きだった。自分の心の中にあるミンジェのカテゴリーは、一緒に過ごす時間が増えた事で日々アップデートされていく。
けれどそれとは別に、時々ミンジェに無性に触れたいという、未知の感情が沸き上がる事があって、戸惑いと切なさと熱い気持ちがぐるぐると回っている。
二人でいつものように練習して、水分補給しながらミンジェのダンスについて話していた時だった。僕がダンスを褒める所為で照れ出したミンジェが可愛くて、身体が勝手に動いた。
腕を掴んで引き寄せ、後ろから抱き締めてしまったのだ。
“ は?僕は一体何を…?”
ミンジェは何も疑問に思っていないようで、されるがままだ。たしか、マッサージを始めた時にも、無意識に触れていた。それは、あらがいがたい衝動だったのだ。
慌てて誤魔化すように、ミンジェの肩甲骨の間を指圧する。すると、「んっ!」と鼻に抜ける声にドキッとしてしまった。鏡越しに見るミンジェは、眉をしかめていて、辛そうだった。
その表情に、僕の心臓は更にドキドキとうるさくなる。
それからも、僕は色々と葛藤している。相変わらずミンジェは僕を構って、照れる僕を見て悪戯っぽく微笑う。そんな関係性が、ふわふわと高揚して好きだった。ミンジェとの馴れ合いは、僕を自然と笑顔にする。
ところがある日、衝撃的な事実が判明した。
『ミンジェとヨングの営業は成功だった』
事務所内で囁かれる噂を耳にして、温かかった心が、冷水に浸かったように凍えそうになった。
「今までの…全部、嘘…だったの?」
ミンジェを、…信じたい。
僕を、『好きだ』と言ってくれる言葉、急に絡まってくるしなやかな腕、糸目の優しい笑顔、時おり押しあてられる、柔らかい口唇。
内気な僕を、陽のあたる場所へ連れ出してくれるその意思。
仕組まれた事だなんて、信じられない!
「ヨングゥ~!一緒に練習しよっ!」
「………。」
抱きつかれそうになった腕を、反射的に叩いてしまって、顔が強張る。ミンジェは呆然としながらも、瞳が揺れ出した。
「え?」
こんな疑心暗鬼の弱い心では、今ミンジェの隣に立つことは出来ない。
「練習、ひとりでやって下さい。僕も、課題があるので。来週テストだし、しばらくは無理です」
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