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僕たちのこじれた関係①
10. side M ⑤
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宿舎に帰ると、慌てて出迎えてくれたスヒョンが、持ってきたタオルを僕の頭に被せ、ゴシゴシと擦った。
そのまま共同で使うダイニングに移動して、ヨングと練習室に二人きりになったものの、仲直りするどころか更に最悪な関係になった事を、涙ぐみながら話す。
スヒョンはとても心配していたし、親友で一番の理解者だから、包み隠さず打ち明ける事で僕はだんだん落ち着きを取り戻していった。
話している間、テーブルの上でずっとブルブルしている携帯電話をスヒョンが見下ろす。
「いい加減出てやれば?」
ヨングからの着信に本当は出たいけれど、僕は正直とても不安になっていた。
練習室でのヨングの態度は、怒っていて迷惑そうで…僕を拒絶していた。さらに電話で、何を言おうというのか。
ここ最近のやりとりだって、思い出すのも辛い程なのに、今日は決定的な言葉で僕の淡い恋心は打ち砕かれた。
着信が止まる時、それはヨングが僕と関わる事を、諦めた時なんだろう。
そう思うと悲しくなり、早く電話に出なければと思うのに、……恐い。
「俺が出ようか?何かあったのかも」
スヒョンが携帯に手を伸ばす。反射的に取り上げていた。
「だ、だめ!まだ心の準備出来てない…」
スヒョンはテーブルに頬杖をしたまま溜め息を吐いて、僕を見た。
ふふん、と悪戯を思いついた笑顔。
「なぁ、聞いて?あいつ、ヨングの携帯の写真のアプリさ…、『MJ』ってフォルダがあってさ、俺、面白がって見ちゃったんだよ」
「『MJ』って…まさか僕?」
「ほとんど盗撮かよってくらい、ピントが合ってなかったり、寝てる写真が多くて。それが多分お前らが出会った頃からなのかな?だから…何百枚もあって」
「……」
「『絶対にミンジェヒョンには言わないで!』って…、ははっ!あいつムキになってお願いしてくんの」
「……」
「それってさ。あいつお前の事が、前から好きだったってことなんじゃない?」
「ス、スヒョナ!」
僕はテーブルを回ってスヒョンに抱きついた。この親友が、出来心でヨングの携帯を見なければ、知り得なかった情報なのだ。
「どうしよう?まだ間に合うかな?」
僕は、震える手でヨングの電話番号を表示させた。その瞬間、ヨングから電話がかかってくる。
「もしもし!ヨング?」
『ミ、ミンジェヒョン~、ごめんなさ…い~!』
電話の向こうのヨングの声は、胸が締め付けられるような泣き声で、僕はもっと早く電話に出てあげれば良かったと後悔した。
「どうしたっ?大丈夫っ?!何で泣いてるの?」
『ミンジェヒョン今何処ですかぁ!僕、ずっと探してて~!』
「宿舎だよ!お前は?お前は何処にいるの?」
『………わからないんです~!』
「迎えに行くよ!何か目印無いの?」
『わからないよぉ!』
なんてことだろう。完全にパニック状態の迷子だ。電話の会話が聞こえていたスヒョンが、「タクシー使え!」と言ってきた。
「そっか!ヨング!もしもし?聞こえてる?」
『……ヒック、うん!聞こえてる』
「宿舎の住所はわかるだろ?タクシーつかまえて!タクシーで帰ってきて!」
『…やってみる』
そこで、通話は切れた。
「……も…う。何やってんの、あいつ……」
泣きそうになった僕を、スヒョンがハグしてくれた。
「仲直り出来そうじゃん?良かったな」
「わかんないよ。どうして迷子なんかに…。とりあえず、外まで迎えに行ってくる」
僕の足取りは、翔ぶように軽い。裸足でサンダルを引っ掛け、ヨングに会ったらなんて言おうか考えながら、雨の中彼の乗ったタクシーを待っていた……。
そのまま共同で使うダイニングに移動して、ヨングと練習室に二人きりになったものの、仲直りするどころか更に最悪な関係になった事を、涙ぐみながら話す。
スヒョンはとても心配していたし、親友で一番の理解者だから、包み隠さず打ち明ける事で僕はだんだん落ち着きを取り戻していった。
話している間、テーブルの上でずっとブルブルしている携帯電話をスヒョンが見下ろす。
「いい加減出てやれば?」
ヨングからの着信に本当は出たいけれど、僕は正直とても不安になっていた。
練習室でのヨングの態度は、怒っていて迷惑そうで…僕を拒絶していた。さらに電話で、何を言おうというのか。
ここ最近のやりとりだって、思い出すのも辛い程なのに、今日は決定的な言葉で僕の淡い恋心は打ち砕かれた。
着信が止まる時、それはヨングが僕と関わる事を、諦めた時なんだろう。
そう思うと悲しくなり、早く電話に出なければと思うのに、……恐い。
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「だ、だめ!まだ心の準備出来てない…」
スヒョンはテーブルに頬杖をしたまま溜め息を吐いて、僕を見た。
ふふん、と悪戯を思いついた笑顔。
「なぁ、聞いて?あいつ、ヨングの携帯の写真のアプリさ…、『MJ』ってフォルダがあってさ、俺、面白がって見ちゃったんだよ」
「『MJ』って…まさか僕?」
「ほとんど盗撮かよってくらい、ピントが合ってなかったり、寝てる写真が多くて。それが多分お前らが出会った頃からなのかな?だから…何百枚もあって」
「……」
「『絶対にミンジェヒョンには言わないで!』って…、ははっ!あいつムキになってお願いしてくんの」
「……」
「それってさ。あいつお前の事が、前から好きだったってことなんじゃない?」
「ス、スヒョナ!」
僕はテーブルを回ってスヒョンに抱きついた。この親友が、出来心でヨングの携帯を見なければ、知り得なかった情報なのだ。
「どうしよう?まだ間に合うかな?」
僕は、震える手でヨングの電話番号を表示させた。その瞬間、ヨングから電話がかかってくる。
「もしもし!ヨング?」
『ミ、ミンジェヒョン~、ごめんなさ…い~!』
電話の向こうのヨングの声は、胸が締め付けられるような泣き声で、僕はもっと早く電話に出てあげれば良かったと後悔した。
「どうしたっ?大丈夫っ?!何で泣いてるの?」
『ミンジェヒョン今何処ですかぁ!僕、ずっと探してて~!』
「宿舎だよ!お前は?お前は何処にいるの?」
『………わからないんです~!』
「迎えに行くよ!何か目印無いの?」
『わからないよぉ!』
なんてことだろう。完全にパニック状態の迷子だ。電話の会話が聞こえていたスヒョンが、「タクシー使え!」と言ってきた。
「そっか!ヨング!もしもし?聞こえてる?」
『……ヒック、うん!聞こえてる』
「宿舎の住所はわかるだろ?タクシーつかまえて!タクシーで帰ってきて!」
『…やってみる』
そこで、通話は切れた。
「……も…う。何やってんの、あいつ……」
泣きそうになった僕を、スヒョンがハグしてくれた。
「仲直り出来そうじゃん?良かったな」
「わかんないよ。どうして迷子なんかに…。とりあえず、外まで迎えに行ってくる」
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