僕たちのこじれた関係

柏葉 結月

文字の大きさ
13 / 54
僕たちのこじれた関係①

13. side M ⑧

しおりを挟む
宿舎までの帰り道も繋いだ手はそのままで、自然と口ずさんだのは練習中の新曲だった。
2人で交互に歌うサビのパート、僕の高音は喉の調子が悪いと掠れる。でもヨングは、それがセクシーだと言ってくれた。

宿舎に着くと、ヨングがラーメンを作り、朝長兄ソクが作っておいてくれたサラダと一緒に食べた。今週の歌番組で1位を獲ったグループの話や、ヨングの学校の話などしながら。

つまりは、昨日お互い告白しあったはずなのに、あえてその事には触れない。
でも僕はいいんだ。こうして、いつもと同じ他愛ない話をしていられる事が嬉しいから。

さっき練習室でキスされたことだって、なんて事ない、通常運転だよと冷静に考える。頬やおでこにしていた行為が、口唇になっただけ。

思い起こせば、ヨングの頬にキスしていたのはいつも僕の方からだった。それがヨングからだっただけだし、さらに言えば口唇だったからといって、それが出来る関係性になっただけ。僕たちの関係は、以前とそんなに変わらない、はず…。

変わらないはず、だったのに。


約束通り、ヨングは僕の部屋にやってきた。疲れていて、お腹も一杯なヨングは昨日と同じように、すぐに寝てしまうと思ったけれど。
僕は今、寝返りをうったヨングに、ベッドの端に追い詰められ、たじたじとなっていた。

さっきから、もじもじと視線を合わせては逸らし、合わせては逸らしを繰り返す僕ら。
でも、最終的にヨングは眼を逸らさなくなり……。思いきったように呟いたのだ。


「キスしても、いいですか?」

「…う、うん…」

二人して顔が赤くなる。
いつもなら勢いで、ちゅっと出来るのに。
なんでベッドの上だとこんなに……。

「は、恥ずかしいから、布団被ろ?」

僕はお互いの顔が見えなければと、布団を頭の上まで引っ張り上げた。それが、どういう結果を招くことになるとも知らず……。

閉鎖的な空間に、ヨングの呼吸する音が聴こえ、吐息が頬にかかる。

“ ち、近……///”

と思った時には、布団の端を握って万歳したままの僕にのし掛かったヨングが、頬より少し下に鼻先を押しあててきて…。少しでも顔をずらせば、口唇が触れあってしまう。

ドキドキして、固まる僕の頬を鼻先がすべり、一度離れたと思ったら、今度は正確に僕の口唇にヨングの口唇が押しあてられた…。

ゆっくりと後頭部に差し込まれた大きな手が、僕の頭を固定し、何度も塞がれ苦しくなって口を開けば、入ってくる濡れた柔らかくて熱いもの。こ、これって舌?

「ん……ョ、…グ?…待っ…、」

たどたどしく、遠慮がちに僕の舌に触れてくる。決して強引に絡めてくる訳ではないのに、抗えない。

何度か繰り返されるうちに息が上がり、僕の身体はくったりとしてしまい、こういう行為に全く免疫がないことを証明してしまった。
もっとも、布団の中でこんなことをしていれば、酸欠になっても不思議ではない。

ヨングがガバッと布団を剥がし、僕たちは起き上がって新鮮な空気を吸い込んだ。

「ミンジェヒョン…。付き合って、くれませんか?」

「へ?付き合うって?」

「『恋人』になってくれませんか?」

「……僕は成人したばかりで…ヨングはまだ高校生なのに『恋人』にはなれないよ」


僕は朝、ソクとスヒョンに言われた事を思い出し、そういうことか!と納得した。それが常識なんだと思ったのに、ヨングはきょとんとした。それから、なんだか大人っぽく微笑みながら、僕を覗き込んでくる。すごく照れ臭くて、眼を逸らした。すると、ヨングは僕をぎゅっと抱き締め、再びベッドに転がった。

「ミンジェヒョン、好き」

“ うわわ! て、手がっ…”

囁かれる言葉に驚く。背中側のTシャツの裾から入ったヨングの手は、いつものマッサージなら上へといくはずなのに、何故か下へとすべり腰を撫でる…。

僕は耐えきれず、ヨングの胸を押した。

「嫌、ですか?」

「ヨ、ヨングは、あの、男の人が?」

「はい?」

「僕は女の子じゃないし、何をする気?」

「僕は男の人が好きって訳ではないです。でも、ミンジェヒョンを見ているとこうしたくなって…。キスも沢山したくて…。ミンジェヒョンに、触りたいと思ってます…」

「!!」

「嫌…ですか?」


もう一度訊かれて、考える。
嫌ではない。嫌ではないけれど…。
ヒョンとしてのプライドなのか、恥ずかしいだけなのか。

「もしかしてミンジェヒョン。僕を抱きたいですか?」

「!!!!」

“ 抱く?!抱くってどういうこと?!”

「ご、ごめんヨングゥ!僕、ヒョンなのにまだコドモみたい!お前とのキスは、嫌ではないから沢山してもいいけど、その先は…まだよくわかんないし、なんだか怖いよ」

「ふ、ふふっ」

「なに?何が可笑しいの?」

真面目な話をしていたはずなのに、ヨングがニコニコしてるので…僕もつられて笑った。

「ミンジェヒョン、可愛い。 少しずつ進んでいきましょ?」

ここで「進むってどこに?」って訊くほどお子さまではない。

ヨングって、押しが強かったんだね。
再びキスしてくるヨングに、負けない!と年上としてのプライドで積極的に応じてしまい、

「僕たち、こんなキスしてたら…もう『恋人』ですよね?日付が変わったから…8日か。今日が、僕たちの最初の記念日?」

ぼんやりする頭で頷き、ソクやスヒョンに内緒にしなきゃと考え、ふわふわとする余韻とヨングの温もりに包まれ…眠りに就いた。





しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

『定時後の偶然が多すぎる』

こさ
BL
定時後に残業をするたび、 なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。 仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。 必要以上に踏み込まず、距離を保つ人―― それが、彼の上司だった。 ただの偶然。 そう思っていたはずなのに、 声をかけられる回数が増え、 視線が重なる時間が長くなっていく。 「無理はするな」 それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、 彼自身はまだ知らない。 これは、 気づかないふりをする上司と、 勘違いだと思い込もうとする部下が、 少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。 静かで、逃げ場のない溺愛が、 定時後から始まる。

処理中です...