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僕たちのこじれた関係&君のPerfume(Spin-off)
白い想い人 ・後
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(side ユギ)
俺はスヒョンの長い睫毛からぽたっと落ちた涙を見ながら、今の状況に少し後悔していた。
いや、後悔という程でもない。どちらかというと、しまった!とか、マズイ……くらいの。
作業部屋にスヒョンを誘って、何か飲みながら話を聞こうと思った。年下組のこじれた関係は、傍で見ていると心配で堪らなくなってくる。
ミンジェが練習していたであろう部屋から、一人で俯きがちに出てきたスヒョン。
何処か虚ろで、何かを溜め込んでしまったかのような様子。
でも声をかけたら、いつもの飄々とした返しが来たし、踏み込んでしまって良いのかわからなかった。
でも、このタイミングを逃したら、スヒョンの影がもっと濃くなっていく気がして、
「ちょっと、付き合えよ」
軽く、構えなんていらないように、ただ誘ったのだ。
作業部屋まで大人しく着いて来たスヒョンをソファーに座らせ、あ、コイツまだ未成年で酒飲めないじゃん!と気が付き、ミネラルウォーターを渡す。
「で?…どしたの?ミンジェと何かあった?」
軽く訊いたつもりだったが、スヒョンは無言のまま泣き出した。
「……何も、……何もなかったんです」
「うわわ」
俺は慌ててスヒョンの隣に座り、肩に手を置いた。
「何もって感じじゃないけど?」
スヒョンが俺の肩口に顔を埋めるのと、俺が抱き寄せるのは同時だった。
泣きたいなら胸を貸すくらいの気持ちで、受け止めて背中を擦った。
「……俺は、随分前から片想いでした。ユギヒョンも気付いてましたよね?ミンジェは、ヨングの事が好きなんです。でも、俺はソウルメイトで、親友で。関係は切れるわけもないし、彼らを見守る事しか出来ませんでした」
涙と感情が落ち着いて、スヒョンは淡々と話し始めた。
「俺が新しい恋を見つけられたら、もっと楽だったでしょうか」
「そんなの俺にわかる訳ない。それでもお前はミンジェの事を大切に想うだろうし、お前にとってそれはどうにもならないだろ」
視線を彷徨わせるスヒョンを、どうしたら慰めてやれるのか。
そして、俺は思い付いた考えを言ってしまった。スヒョンの『影』を、取り除きたかった。
「俺をミンジェだと思って、シてみるか?ミンジェみたいにセクシーでもないし、愛嬌もないけど」
言ってしまってから、急速に熱を持つ頬。そんな、思春期でもないのに?
表情の変わらないスヒョンの綺麗な顔を見ていたら、自分がとても恥ずかしくなってきた。俺は、なんて俗物的な誘いを申し出たのだろうか。
ソクヒョン、ナムに何て言う?
スヒョンと関係を持ちました?
言える訳がない!
「や、やっぱ今の無し!」
そう言ってるのに、スヒョンの顔はもう俺に影を射す程に近くて、吃驚して固まる俺の薄い唇に、スヒョンの唇が押し当てられた。
「ユギヒョン……。ユギヒョンはユギヒョンです」
そこで、スヒョンは立ち上がった。見下ろされた時に、何故か背中がぞくりとした。
「話聞いてくれて、ありがとうございました。また、ここに来てもいいですか?」
「う、うん」
「じゃぁ、先に宿舎へ帰ります」
「あ?ああ……気をつけて帰れよ」
そしてスヒョンは部屋を出て行った。
顔が赤くなった俺を残して。
俺はスヒョンの長い睫毛からぽたっと落ちた涙を見ながら、今の状況に少し後悔していた。
いや、後悔という程でもない。どちらかというと、しまった!とか、マズイ……くらいの。
作業部屋にスヒョンを誘って、何か飲みながら話を聞こうと思った。年下組のこじれた関係は、傍で見ていると心配で堪らなくなってくる。
ミンジェが練習していたであろう部屋から、一人で俯きがちに出てきたスヒョン。
何処か虚ろで、何かを溜め込んでしまったかのような様子。
でも声をかけたら、いつもの飄々とした返しが来たし、踏み込んでしまって良いのかわからなかった。
でも、このタイミングを逃したら、スヒョンの影がもっと濃くなっていく気がして、
「ちょっと、付き合えよ」
軽く、構えなんていらないように、ただ誘ったのだ。
作業部屋まで大人しく着いて来たスヒョンをソファーに座らせ、あ、コイツまだ未成年で酒飲めないじゃん!と気が付き、ミネラルウォーターを渡す。
「で?…どしたの?ミンジェと何かあった?」
軽く訊いたつもりだったが、スヒョンは無言のまま泣き出した。
「……何も、……何もなかったんです」
「うわわ」
俺は慌ててスヒョンの隣に座り、肩に手を置いた。
「何もって感じじゃないけど?」
スヒョンが俺の肩口に顔を埋めるのと、俺が抱き寄せるのは同時だった。
泣きたいなら胸を貸すくらいの気持ちで、受け止めて背中を擦った。
「……俺は、随分前から片想いでした。ユギヒョンも気付いてましたよね?ミンジェは、ヨングの事が好きなんです。でも、俺はソウルメイトで、親友で。関係は切れるわけもないし、彼らを見守る事しか出来ませんでした」
涙と感情が落ち着いて、スヒョンは淡々と話し始めた。
「俺が新しい恋を見つけられたら、もっと楽だったでしょうか」
「そんなの俺にわかる訳ない。それでもお前はミンジェの事を大切に想うだろうし、お前にとってそれはどうにもならないだろ」
視線を彷徨わせるスヒョンを、どうしたら慰めてやれるのか。
そして、俺は思い付いた考えを言ってしまった。スヒョンの『影』を、取り除きたかった。
「俺をミンジェだと思って、シてみるか?ミンジェみたいにセクシーでもないし、愛嬌もないけど」
言ってしまってから、急速に熱を持つ頬。そんな、思春期でもないのに?
表情の変わらないスヒョンの綺麗な顔を見ていたら、自分がとても恥ずかしくなってきた。俺は、なんて俗物的な誘いを申し出たのだろうか。
ソクヒョン、ナムに何て言う?
スヒョンと関係を持ちました?
言える訳がない!
「や、やっぱ今の無し!」
そう言ってるのに、スヒョンの顔はもう俺に影を射す程に近くて、吃驚して固まる俺の薄い唇に、スヒョンの唇が押し当てられた。
「ユギヒョン……。ユギヒョンはユギヒョンです」
そこで、スヒョンは立ち上がった。見下ろされた時に、何故か背中がぞくりとした。
「話聞いてくれて、ありがとうございました。また、ここに来てもいいですか?」
「う、うん」
「じゃぁ、先に宿舎へ帰ります」
「あ?ああ……気をつけて帰れよ」
そしてスヒョンは部屋を出て行った。
顔が赤くなった俺を残して。
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