37 / 54
僕と君のピアス
1.控え室での僕たちは
しおりを挟む
(side M)
眠い。欠伸をしかけて、メイクさんに叱られる。え?眉毛が曲がったって?
でも……、眠いんだもん。昨日は宿舎に帰るの遅かったんだもん。
瞼が落ちて、視界は何度も暗くなる。
僕の周りを忙しく動いている、大勢のスタッフのザワザワとした喧騒が遠くなる。
白昼夢のように、昨夜の出来事が脳裏に浮かんだ。
一人でダンスの練習をしていると、一緒に帰ろうとヨングが入ってきて、ヨングが……、ヨングに……。
(思い出したら駄目だ……)
胸の奥がキュッとなって、少し目が覚めた。ここは、スタジオの控え室だ。こんな所で、仕事中なのに変な気分になるなんて絶対に駄目だ。何か別の事を考えないと!
僕たちはこれからインタビューの動画や雑誌のスチールを撮影するため、順番にメイクをしてもらっている。今は僕の番で、椅子に座ってヘアメイクをしてるのだけど……。ドライヤーとかアイロンを使って髪型をセットされていると、ポカポカして気持ちいいったらない。眠くなって船を漕いでも仕方ないでしょ。
時々目を開けると、鏡越しにソファーに座ってるヨングが見える。
ヨングは、何かイライラしてるみたい。どうしたんだろう?
メイクが終わってヨングの所へ行ってみると、どうやらピアスが耳朶に上手く挿さらないらしい。見かねた僕は、ピアスを持つヨングの手をそっと押さえた。
「あ、ミンジェ終わりました?」
「何してんの。耳たぶ、真っ赤になってるよ?」
「うん、ちょっと、新しいピアスを」
「……拡張かぁ。痛そ。ちょっと貸して?」
僕はヨングが持っている、拡張ピアスを取り上げた。
「やってあげる。どうやって挿すの?」
「え?いいですよ」
「やだ、やりたい」
最近ヨングのピアスは太くなってきて、密かにカッコいいなと思っていたのだ。
取り上げたピアスをヨングが取り返そうとするので、その手をやんわり叩き。唇を突き出して見つめると、ヨングは笑って少し顔を傾けた。
僕に、耳朶をみせるように。
「自分でやってみたけど、入りにくいのでゆっくり挿して下さいね?」
「わかった」
僕はヨングの耳朶に手を添えて、ピアスを穴にあてた。ゆっくりと押し込むようにしてみるが、なかなか挿さらない。
「これ、太さ的にまだ無理なんじゃない?」
早々に諦めた、フリをした。
顔を傾けたせいで、ヨングの顎から首筋があらわになって、そのラインに幼いながらも色気を感じ取ってしまいドキッとしたからだ。
ヨングの、顎から首すじのラインが好きだ。なめらかな肌に誘われて、ついキスしたくなる。
彼の長めの前髪に指を絡めた後、素早く頬にキスを落とした。
ヨングは、くすぐったそうにニコッと笑って、それから僕に甘々な流し目を送ってきた。
「じゃあ、ミンジェが拡張してみますか?」
「えっ?!」
いたずらを思いついた子どものように、早く早くと僕の腕を引いてソファーに座らせる。ポケットからいくつかのピアスを出し、
「これなら入るかも」
差し出されたサイズは、僕が今まで着けていたものより少しだけ太い。
「ちょっと、じっとしてて下さい」
「僕、するって言ってないじゃん」
そう言いつつもヨングの方へ耳を向けてしまった。
指が、そっと耳朶に触れる……。
今着けてるピアスを丁寧に外して、僕の手に握らせ、拡張用のピアスが耳朶に当てられた。
緊張して火照った肌に、金属のわずかな冷たさ。それが、小さな穴を、押し拡げていく。
「…んっ」
思わず声が出てしまった。その瞬間の感触に、何故かぞくりとしてしまったのだ。
ヤバい。
そぉっとヨングの方を横目で見ると、嬉しそうなとろけた笑顔を張りつけている。
「な、なんか恥ずかしいんだけど …」
僕は両手で顔を覆ってしまった。耳とか首が赤くなっていくのが、自分でもわかる。
「ミンジェ?通りましたよ」
拡張ピアスは、ほんの少しの痛みと共に僕の耳朶に取り付けられた。
僕がほっとしかけた次の瞬間、ヨングが身を寄せてくる気配がした。反応する隙もなく、はむっと耳朶が食べられていた。
「え。」
ピアスごと咥内に含まれ、濡れた舌を這わされる。クチュっとした音と、ヨングの熱い吐息がフワッと耳にかけられて我に返った。
「ヨン、グ?!」
「さっきのキスのお返しですよ?」
僕は飛ぶようにソファーから立ち上がった。身体の奥から、かぁっと熱が込み上げてきてしまうが、ヨングは無邪気に白い歯を見せて笑うだけだ。
そんな様子を見ていると、自分の反応が過剰なのかと疑ってしまう。胸がドキドキして、しんどいにも程がある。
僕がやり場のない怒りと恥ずかしさにぷるぷるしながらヨングを睨みつけていると、彼は一旦俯いた後、立ったままの僕の小指を引いて内緒話をするような仕草で手招きしてきた。
「今日撮影が早く終わったら……シませんか?」
ウサギみたいに無垢でキラキラした瞳をしながら僕の顔を覗き込んで言った事は、捕食者の告知のようだ。ウサギの皮を被った狼だ。本当は、断られる事も考えて無いはず。
(うぅ……抗えない!僕だってほんとはシたいけど)
僕がもじもじと返事を出来ずにいると、トドメとばかりに言われた。
「さっきピアスを挿した時、感じたでしょ」
「なっ、なんのこと?!」
「可愛いミンジェを見たら、抱きたくなっちゃった」
「や、やめっ。仕事中なんだからそういうこと言うな!わかったよ、撮影が早く終わったらね!」
スタッフが僕を呼びに来たのに便乗して、その場を逃げ出した。
眠い。欠伸をしかけて、メイクさんに叱られる。え?眉毛が曲がったって?
でも……、眠いんだもん。昨日は宿舎に帰るの遅かったんだもん。
瞼が落ちて、視界は何度も暗くなる。
僕の周りを忙しく動いている、大勢のスタッフのザワザワとした喧騒が遠くなる。
白昼夢のように、昨夜の出来事が脳裏に浮かんだ。
一人でダンスの練習をしていると、一緒に帰ろうとヨングが入ってきて、ヨングが……、ヨングに……。
(思い出したら駄目だ……)
胸の奥がキュッとなって、少し目が覚めた。ここは、スタジオの控え室だ。こんな所で、仕事中なのに変な気分になるなんて絶対に駄目だ。何か別の事を考えないと!
僕たちはこれからインタビューの動画や雑誌のスチールを撮影するため、順番にメイクをしてもらっている。今は僕の番で、椅子に座ってヘアメイクをしてるのだけど……。ドライヤーとかアイロンを使って髪型をセットされていると、ポカポカして気持ちいいったらない。眠くなって船を漕いでも仕方ないでしょ。
時々目を開けると、鏡越しにソファーに座ってるヨングが見える。
ヨングは、何かイライラしてるみたい。どうしたんだろう?
メイクが終わってヨングの所へ行ってみると、どうやらピアスが耳朶に上手く挿さらないらしい。見かねた僕は、ピアスを持つヨングの手をそっと押さえた。
「あ、ミンジェ終わりました?」
「何してんの。耳たぶ、真っ赤になってるよ?」
「うん、ちょっと、新しいピアスを」
「……拡張かぁ。痛そ。ちょっと貸して?」
僕はヨングが持っている、拡張ピアスを取り上げた。
「やってあげる。どうやって挿すの?」
「え?いいですよ」
「やだ、やりたい」
最近ヨングのピアスは太くなってきて、密かにカッコいいなと思っていたのだ。
取り上げたピアスをヨングが取り返そうとするので、その手をやんわり叩き。唇を突き出して見つめると、ヨングは笑って少し顔を傾けた。
僕に、耳朶をみせるように。
「自分でやってみたけど、入りにくいのでゆっくり挿して下さいね?」
「わかった」
僕はヨングの耳朶に手を添えて、ピアスを穴にあてた。ゆっくりと押し込むようにしてみるが、なかなか挿さらない。
「これ、太さ的にまだ無理なんじゃない?」
早々に諦めた、フリをした。
顔を傾けたせいで、ヨングの顎から首筋があらわになって、そのラインに幼いながらも色気を感じ取ってしまいドキッとしたからだ。
ヨングの、顎から首すじのラインが好きだ。なめらかな肌に誘われて、ついキスしたくなる。
彼の長めの前髪に指を絡めた後、素早く頬にキスを落とした。
ヨングは、くすぐったそうにニコッと笑って、それから僕に甘々な流し目を送ってきた。
「じゃあ、ミンジェが拡張してみますか?」
「えっ?!」
いたずらを思いついた子どものように、早く早くと僕の腕を引いてソファーに座らせる。ポケットからいくつかのピアスを出し、
「これなら入るかも」
差し出されたサイズは、僕が今まで着けていたものより少しだけ太い。
「ちょっと、じっとしてて下さい」
「僕、するって言ってないじゃん」
そう言いつつもヨングの方へ耳を向けてしまった。
指が、そっと耳朶に触れる……。
今着けてるピアスを丁寧に外して、僕の手に握らせ、拡張用のピアスが耳朶に当てられた。
緊張して火照った肌に、金属のわずかな冷たさ。それが、小さな穴を、押し拡げていく。
「…んっ」
思わず声が出てしまった。その瞬間の感触に、何故かぞくりとしてしまったのだ。
ヤバい。
そぉっとヨングの方を横目で見ると、嬉しそうなとろけた笑顔を張りつけている。
「な、なんか恥ずかしいんだけど …」
僕は両手で顔を覆ってしまった。耳とか首が赤くなっていくのが、自分でもわかる。
「ミンジェ?通りましたよ」
拡張ピアスは、ほんの少しの痛みと共に僕の耳朶に取り付けられた。
僕がほっとしかけた次の瞬間、ヨングが身を寄せてくる気配がした。反応する隙もなく、はむっと耳朶が食べられていた。
「え。」
ピアスごと咥内に含まれ、濡れた舌を這わされる。クチュっとした音と、ヨングの熱い吐息がフワッと耳にかけられて我に返った。
「ヨン、グ?!」
「さっきのキスのお返しですよ?」
僕は飛ぶようにソファーから立ち上がった。身体の奥から、かぁっと熱が込み上げてきてしまうが、ヨングは無邪気に白い歯を見せて笑うだけだ。
そんな様子を見ていると、自分の反応が過剰なのかと疑ってしまう。胸がドキドキして、しんどいにも程がある。
僕がやり場のない怒りと恥ずかしさにぷるぷるしながらヨングを睨みつけていると、彼は一旦俯いた後、立ったままの僕の小指を引いて内緒話をするような仕草で手招きしてきた。
「今日撮影が早く終わったら……シませんか?」
ウサギみたいに無垢でキラキラした瞳をしながら僕の顔を覗き込んで言った事は、捕食者の告知のようだ。ウサギの皮を被った狼だ。本当は、断られる事も考えて無いはず。
(うぅ……抗えない!僕だってほんとはシたいけど)
僕がもじもじと返事を出来ずにいると、トドメとばかりに言われた。
「さっきピアスを挿した時、感じたでしょ」
「なっ、なんのこと?!」
「可愛いミンジェを見たら、抱きたくなっちゃった」
「や、やめっ。仕事中なんだからそういうこと言うな!わかったよ、撮影が早く終わったらね!」
スタッフが僕を呼びに来たのに便乗して、その場を逃げ出した。
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる