僕たちのこじれた関係

柏葉 結月

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僕たちのこじれた関係&君のPerfume(Spin-off)

君のPerfume ❺

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(side スヒョン)

"今から部屋に行きます"

送ったメッセージに既読が付くのを、今か今かと凝視したまま待ち、しだいに困惑して首を傾げた。いつもなら、遅くても1分で既読が付いて返信だって来るはずなのに……。
ユギが帰ってきた時間は遅かったので、もしかして寝てしまったのだろうか。

この時はまだ、焦りも疑問もなかった。事務所で別れた時のユギの様子は普通だったし、ケンカになるような心当りも無い。
それが不審へと変化したのは、ユギの部屋の前まで来て電話をかけてからだ。

ユギが……、電話に出ないのだ。

何かあったのかと思いドアノブに手を掛けると、鍵がかかっている。その時になってメッセージに既読が付かない事と、電話に出ない事が意図的なものだったと気がついて、俺は混乱状態になった。

突如湧いてきた胸騒ぎが、杞憂であって欲しい。
ユギが自分を避ける理由?事務所に自分たちの関係がバレて警告されたとか、好きな人でも出来て……もう身体の関係を辞めたいとか!?
とりあえず話し合いたい。こんな風に一方的に拒絶されたら、どうしたらいいのかわからなくなる。


何度目かもわからないコール音に、俺はズルズルと崩折れた。こんなに不安になるなんて、予想もしていなかった。
自分とユギの関係は、『恋人』と呼べない不安定な関係。それでも一緒にいることが心地好くて、お互いをどう思っているのか決定的な言葉を交わしてもいないのに、心が寄り添っている気がしていた。

俺は不安定な関係を繋ぎ止めるために、何度もユギの身体を求めた。それが、自分に出来る最大限の愛情表現だったから。
同意して触れ合っていたはずなのに、俺だけがこの関係に溺れていたのか……?


『何で鍵かけてるの?』

『入れて下さい』

最後の望みをかけて打ったメッセージにも、既読が付く事はなかった。ユギの名を呼んで叫びだしたくなったが、こんな夜中に秘密の関係を大声で暴露して、今すぐ終止符を打つなんて馬鹿だ。

……もう、いいや。ここで寝よう。このままドアの前で寝ていたら、さすがに明日の朝には声をかけてもらえるだろう。
そう思って、いつの間にか床にうずくまったまま寝てしまった……。

どれくらいの時間が過ぎたのだろう。時間の感覚もなく無意識だったが、いつの間にか腕の中にはユギの温もりがあった。どうやら部屋に入れてもらえたらしい。
それとも夢か?夢なのか?すり抜けて行かないように、ユギをしっかりと抱き込んだ。

それに応えるように、おずおずと控えめに背中に回る腕は、夢とは思えなかった。

嬉しい……。ユギは、やっぱり優しい。

安心したせいか涙ぐんで、同時に悲しくなった。なんの理由もなく、こんな仕打ちをする人ではない。


「俺の事が、嫌になりましたか?」

「俺、貴方の事が好きなんです」

「ヒョンは、俺の事が好き?好きじゃなかったら何で抱かれた?誰にでもこんなに無防備ですか?誰にでも抱かれるんですか?」

眠気のせいで回らない頭のまま呟き始めると、俺にしては珍しく感情的になってきて止まらなくなった。
ところが、ユギから返ってきた答えは全く予想外だった。
何を気にしているかと思えば……。

「ミンジェとヨング。まだ付き合って、ないぞ」

「……え?」


ヒートアップしていた頭の熱が一気に冷めた。んん?そっち?ユギには見えていないだろうが、『鳩が豆鉄砲をくらった』を体感していた。

「まだお前にも、チャンスがあるかもしれない。俺の事は、もう……」

ユギは、その先を言わなかった。

忘れろ?放っとけ?諦めろ?

マイナスの言葉しか思い付かないが、俺のミンジェへの気持ちを尊重して身を引こうとしている?

『ミンジェとヨングが、まだ付き合っていない』

そんな事は、とっくに知っている。俺はミンジェの親友なのだ。相談なんて、毎日だ。

『ヨングと付き合うとしても、僕が成人してからかなぁ。色々責任とかあるし。まだデビューしたばかりだし……』

ミンジェはヨングを好きだ好きだと言いつつ、年上の立場でヨングの事をちゃんと考えている。

ユギは、そんな二人の関係を最近知ったのかもしれない。付き合っているはずのミンジェとヨングが恋人ではなかったら、俺とユギの関係が成立しなくなるとでも考えたのか。

きっかけは、俺がミンジェに親友を越えた恋心とも呼べる友愛を抱いていたところへ、ヨングの介入によって失恋のような状態に陥っていたせいだ。

ユギはそんな俺を慰めようとした。
そして俺は寂しさに負けて、ユギを求めた。ユギは『ミンジェの代わりになってやる』と言っていたが、決して代わりだなんて思った事は無い。


学校の友人たちもそうだが、彼らは彼女が出来ると途端に俺と一緒にいる時間が減った。ヨングは独占欲が強そうだから、二人が付き合い始めたら、きっと俺とミンジェの時間はほとんど無いだろう。

ユギとの時間は、心地好かった。ふと訪れる会話の間も、何か考えて目を伏せる表情も好きだ。自分たちの音楽の話や、何年か後の夢の物語り。

ユギと話していると、俺の中の世界が拡がっていった。ユギが語る夢と希望は優しい白い光となって俺を照らし、同じ道を進んで行くのだと信じて疑わなくなった。

俺に夢を与えてくれた彼が自ら、今度は愛を取り上げるなんて……。

「嫌です」

「やめ、とけって!」

俺は嫌がるユギに執拗くキスをした。

「あぅっ、あっあっ、スヒョ、ンッ!」

やがて抵抗を諦め、快楽を求めるまま舌が絡み合うと、ユギは蕩ける甘い吐息を切ない喘ぎに変えていった。

余計な判断を下される前に、ユギともっともっと繋がりたい。肉体的にも、精神的にも。お互いに愛を囁き合う『恋人』になりたい。ユギの『恋人』になりたい!

「ユギヒョンが、好きなんです。ミンジェではなく、ユギヒョンが!」

「……俺は、ミンジェみたいにセクシーでもないし、愛嬌だってないぞ。……ミンジェの事、本当にいいのか?」

「ミンジェはソウルメイトなので、今までと変わらない『親友』です。ミンジェの事はもういいんです。あいつの幸せを『親友』として応援していくだけで……。それよりもユギヒョン!愛してるって、俺を愛してるって、言って下さい!」

もしかして、ユギはミンジェにコンプレックスでも有るのだろうか。
それとも俺の好みが、セクシー&愛嬌だと思い込んでいるのだろうか。


「………急な話だな?」

「ほんとは俺の事愛してるのに、何で、言ってくれないんですか」

「な、何でって……、言えるわけないだろ!」

「……ヒョン。愛してるのは否定しない?」

「揚げ足取るなよ!」

俺が笑うと、ユギはむくれた。そうしてると年上なのに子どもっぽくて可愛いくて、充分愛嬌が溢れてるのに、本人にはわからないんだなぁ。

俺がユギに「ねえ、ねえ、言って」と執拗く催促すると、観念したのか目元を赤らめながら、真っ直ぐに俺の目を見た。


「スヒョン?愛してるよ。ミンジェの代わりなんかじゃなく俺を見て……」

不安そうに揺れるユギの瞳を見つめながら、深くキスをした。『ミンジェの代わり』ではない事は、ゆっくりたっぷり理解してもらうしかない。





「……そうだ。スヒョン、俺が寝てる間に首の後ろに跡付けるのやめろ」

え。何でバレたんだろ?






*Fin*




*スヒョン×ユギ 編 終わりです。
読んで下さってありがとうございました。
。:+((*´艸`))+:。

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