僕たちのこじれた関係

柏葉 結月

文字の大きさ
44 / 54
僕と君のリング

2.温度差

しおりを挟む
 side M

 ヨングに押し倒されれば、Tシャツは魔法みたいに脱がされてしまう。肌と肌の間を遮る物がなくなれば、僕たちの本能は直ぐに首をもたげる。

 ヨングは自分の唇をペロッっと舐めて、僕の唇を荒々しく塞いだ。差し込まれる舌には、有無を言わさない乱暴さ。かと思えば次の瞬間、優しく唇を挟むように喰んでくるから、胸がドキドキして苦しい。

「待って、あ……っ!」

 昨夜の余韻が残る僕の身体は、気持ちとは裏腹にヨングに従順だ。
 乳首を摘まみ上げられれば直ぐに硬く勃ち、下半身に手を伸ばされればお腹の奥が疼き始める。

「あなたが僕の…、だって証明したいだけなんです」
「ふ…、あ、あっ」

 大事な話を、してたのに。
 証明?ってなに。僕の身体がこんなになって、ヨングだけを受け入れて。
 僕が心も身体もきみに愛を叫んでるのが、わからないの?



『ヨング!そこにミンジェもいる?2人とも携帯を確認して!!』

 打ち合わせが30分早まったと、部屋のドアをドンドンと叩く音が聞こえてこなければ、僕はまた、ヨングにピアスを揺らされるような事になっていただろう。
 身体のあちこちが、疼いて堪らなくなって。ヨングの名前を呼んで、愛してるって言いたくて仕方なくなったけど。

 ヨングが結婚という大事な話を自分の欲情に負けたからと、無かった事にして?みたいな流れに持っていったのは。
 僕には許せない出来事だった。

 携帯を見たら、マネージャーから時間変更の連絡が来ていた。けれど既読が付かないから、メンバーが部屋まで呼びに来てくれたんだろう。

 最悪。

「ヨング、仕事行くよ!」
「……なんでこのタイミング?」


 2人で散らばっていた服をかき集めて身に付けていると、ヨングが不意に僕の手を取り、ぎゅっと握りしめながらポツリと呟いた。

「ミンジェの言う距離を置くって、具体的にどうすればいいんですか?」
「……しばらく同じベッドで寝ない。僕もこの部屋に来ないから、ヨングも僕のベッドに来ないで」
「それっていつまで?期限がありますか?」
「わかんない。今決められない。一回部屋戻って着替えなきゃ」
「僕の服着てけばいいのに」
「やだ。ヨングの服大きいから」
「………そう」
「お粥美味しかった!ごちそうさま。僕片付けながら部屋戻るね。また後で」
「うん、………また、後で」

 ヨングの耳の垂れたウサギみたいな様子に胸が痛む。


 打ち合わせが終わって、次の仕事に取りかかる隙間時間に、僕はスヒョンにこっそり近づいた。
 囁くように内緒の話をする。

「ねぇ、スヒョン。 今夜からスヒョンのベッド 使っていい?」
「別にいいけど。俺は別の部屋に行くから好きに使っていいよ」
「ありがと……別の部屋って…え?ユギさん?」
「そうだけど?ヨングだって、様子おかしいし。何か有ったなってすぐに判るよ。ケンカでもした?」
「ん、そんなとこ。ごめんね、巻き込んで」
「いい口実になったから」
「……? そうなんだ…?」

 スヒョンが最近ユギに懐いてるのは知ってたけど、もしかして、付き合ってるのかな?

 仕事の間は、ヨングと自然としていられたと思う。
 チリチリとした視線が僕にまとわりつくけど、ヨングの方を見ると、"別に見てないよ"って態度なので僕も何も言わずにいた。

 僕は、考えなくちゃいけない。
 僕と君の未来を。


 朝、ヨングを突き放して夜ベッドに来ないでとは言ったけど、それを素直に守ってくれるか解らないから、スヒョンの部屋に避難してきた。

 スヒョンは、もうユギの部屋に行ったらしい。ほんとはヨングとちゃんと話した方がいいとは思うけど……。

 一人で眠るのはいつ振りだろう。
 練習生になる為に、ソウルに引っ越してきて、気が付けばスヒョンの部屋か、ヨングの部屋で眠るようになり、時々僕の部屋に二人のどちらかが来たりもした。

 最近はずっとヨングと眠っていたから、スヒョンのベッドの匂いはとても懐かしい感じがする。
 ベッドが広く感じられ、ヨングの温もりが隣に無いという事が正直なところ寂しい……。

 "ゆっくり考えるんだから、ちょうどいいじゃん"

 僕は、部屋の明かりをサイドランプだけにすると、携帯を持って韓国の同性婚について調べてみた。

 色々な記事を見て、予想道理。
 僕たちの結婚は色々な壁が有って、その一つ一つに立ち向かって行ったら、僕たちの関係がもしかしたら違うものになってしまいそう。

 僕はそれを望んでいなかった。
 ヨングと話し合おう。

 今すぐヨングの部屋に行く?そう思ったけど、身体が動かなかった。

 ……………眠い。



しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

『定時後の偶然が多すぎる』

こさ
BL
定時後に残業をするたび、 なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。 仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。 必要以上に踏み込まず、距離を保つ人―― それが、彼の上司だった。 ただの偶然。 そう思っていたはずなのに、 声をかけられる回数が増え、 視線が重なる時間が長くなっていく。 「無理はするな」 それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、 彼自身はまだ知らない。 これは、 気づかないふりをする上司と、 勘違いだと思い込もうとする部下が、 少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。 静かで、逃げ場のない溺愛が、 定時後から始まる。

処理中です...