僕たちのこじれた関係

柏葉 結月

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僕と君の蜜月旅行

2.持ち物確認

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 " ヨング……寝ちゃった? "

 ほんの数分前まで、僕の身体を抱き締めるようにして触れていたヨングの腕の力が、緩やかに無くなったから寝落ちしたのだろう。

 敏感な場所を弄られていた僕は、期待と拒絶の狭間で揺れて……安堵したような残念な気持ちになった。

 そうっと振り返って見たヨングの寝顔。
 ちょっと口が開いてて、あどけなくて可愛くて。

 " ヨング…おやすみ "

 ヨングは眠ってしまったけど、僕はさっき聞いた話にドキドキして眠れなかった。

 半分仕事で、半分はプライベート。
 スタッフの同行は一人のみで、基本僕とヨングの二人だけで、

 "  日本へ旅行 !"

 これがテンション上げずにいられる?
 ううん、いられない!!



 今日のスケジュールを終えて、宿舎まで送ってもらう車の中で、ヨングが話し始めた内容は衝撃的だった。

「え?ヨング……ほんとに?ほんとに二人だけで…?」

「そうです」

「…え?……え?…ウソ、どうしよ?嬉し過ぎて、よくわかんない!」

 僕は頭を抱えたり、両手で顔を覆ったりなんとか感情の逃げ場を探す。

「一応オフで、ミンジェと僕で仲良く日本に行きましたっていう設定なんだけど」

「設定でもいいよ!こんなこと今まで無かったじゃん!」

 僕は嬉しくて嬉しくて、ヨングの手を握ったままぶんぶん振った。きっと今の僕の顔は糸目になってニッコニコ。

 いつ出発するんだろう!楽しみ!でも、頭の中に直近のスケジュールを思い出したら、いったいどのタイミングで日本に行くのか見当もつかない。

「え?いつ……行くの?」

「明後日出発です」

「あ、明後日っ?」

 どうやらここ1週間は曖昧にダンス練習となっていたスケジュール。メンバー皆好きなタイミングで休みを取るらしく、僕はまだ申請してなかった。間に合うのか?と思ったら。
 ヨングが日本に行くために、もう二人分の休みを申請していたんだって!全然知らなかった!

「もう飛行機もホテルも予約済みです。けれど急だったので飛行機は早い便なんですが…」

 何を申し訳なさそうにしているのだろう。その分早く行動出来て、楽しいことが早くやって来るのに。

「今日と明日は早く寝て、明後日に備えなきゃ!」

 体調管理が仕事の僕たちは、突発で入った仕事にも全力だから常に対応出来るようにしておかなければならない。

「一泊だし、着替えの準備は問題ないと思います。忘れても向こうでなんとかなるし」

「10月の日本はまだ暖かいの?何着よう」

「明後日東京は少し天気が悪いみたい。でも、ソウル程寒くはないですね」

 ヨングが天気を調べていたり、何を着て行くか考えるのは本当に気分が良くて。
 そして、夜の車内でも光を放つ、僕の左手薬指に嵌まってるリング。

 今までもその指に指輪をしてた事は何度もあるのに、ヨングが嵌めてくれたっていうだけで特別な指輪になっている。
 ヨングはサイズを計りたくてって言ってたけど、ぴったりだった。

 そう、東京へ行く僕たちの目的は。
 結婚指輪を買いに行くこと。






 明日の飛行機の便が早いので、ヨングと僕はいつもより早く帰ることになった。

 メンバーの皆が、お土産よろしく!だとか楽しんでこいよ~、気をつけて~と声を掛けてくれるから嬉しいけど…。

 なんとなく違和感があって。

 そうだ…。飛行機乗って海外行くのはいつもメンバー皆一緒だったからだ。
 隣のヨングを見上げたら、やっぱりキョトンとしている。

「なんか、二人だけって不思議な感じだねっ!」

「そうですね」

 事務所で借りる撮影用機材や、忘れ物がないか確認して宿舎に送って貰い、それぞれの部屋で荷造りする。
 僕はもう部屋には戻らなくても良いように、荷物を持ってヨングの部屋に行った。

「ヨング~、何か足りない物ある?」

「…………」

 ベッドに座って、持って行く物を並べていたヨングが無言で僕を見た。

「え。なに?」

「…………」

「なんなの?言ってよ」

「……ゴム、足らないかもしれません」

「……っ!」

「付けなくてもいい?それか向こうで……」

「わぁあーっ!」

 わざわざ東京まで行って、ドラッグストアでゴムを買ってとか!そんなこと、ムリ!

「コンビニ行って来るから!他に何かある?」

「待って下さい。行くなら僕も一緒に!」

 二人きりでホテル泊まるんだし、エッチしないとかは考えられない。よっぽど喧嘩したとかじゃなければ、いつもみたいに……。
 つまり、エッチするんだってわかってるけれど、だからってそれを……それを、ゴムが足りないとか!
 とにかく、恥ずかしい!

「ミンジェ、顔赤いですよ?」

「誰の所為なんだよ」

 ヨングのパーカーを羽織って、コンビニまでの道を歩いた。
 もう、二人で数えきれない程この道を歩いて、ほとんど日課みたいなささやかなデート。
 途中の暗い路地のある場所が危ないからと、僕がコンビニへ行く素振りを見せると、ヨングは絶対についてきた。

 武道をしていた経験があって、少し前まで僕の方が強かったのに、いつの間にかヨングに力では勝てなくなった。

 可愛くて大好きな弟は、成長して僕を守ろうと必死に頑張って。
 僕を愛してくれるようになった。

「ヨング、寒いからコンビニまでおんぶして」

「いいですよ」

 僕はヨングの背中に飛び乗った。
 ぎゅっと抱きつくと、胸とお腹がぴったりくっついて凄くあったかい。

「あったかいですか?」

「…うん。重くなったら降ろして?」

「重くないですよ」

「そう?ヨング~、明日楽しみだね!」

「そうですね」

 僕は冷たくなった鼻先を、ヨングの髪に埋めた。










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