7 / 14
疲れた体は、簡単には回復しない。
しおりを挟む
さくらは強烈な空腹に襲われ目を覚ました。外はまだ暗く、手元の時計は午前4時を少し回ったところだった。センターテーブルに置いてあったクッキーは1度も手をつけられないままに湿気ってしまっていて、残念だが処分するしかなさそうだ。
クッキーとグラスをキッチンに運び、コンロに火を入れお湯を沸かし紅茶を淹れる。冷蔵庫からスライスしてあったレモンと蜂蜜を少し垂らし、少しづつ喉に流し込む。室内温度がコントロールされた快適な環境とはいえ、ソファーでそのまま眠ってしまった体は芯から冷えており、そんな体の細胞の隅々まで暖かさが染み渡る。ホッと息をつき、強張った体を伸ばそうとグッと背伸びをするが、思うように体が伸びず痛みさえ感じるほどだ。想像以上に体はダメージを受けていたようで、昨日の疲れが完全に癒えたとは言い難かった。
「ベッドで寝なかったのは失敗だったな…」
少し痛む喉に後悔を覚える。紅茶を飲み終えると昨日出かける前に作っていたスープを温め直す。
こちらに来てから何の疑問も持たずに生活していたが、食料品だってこのままだといつかは尽きてしまうのではないかと急に不安が押し寄せる。温めたスープとティーセットをダイニングテーブルに運ぶと椅子に腰掛ける。体の小さくなったさくらには全ての家具が大きめで、ダイニングチェアも座面が高いせいで座ることにほんの少し苦労してしまうのが難点だ。
「いただきます」
スープを口に運ぶ。朝と言うには早すぎる時間に食事をすることに躊躇いが無いわけではないが、空腹には勝てない。
さくら自身は気付いていないが、結界や室内にある家電(本当は魔道具)を動かす元となる魔力を常に供給し続けているので消費エネルギーも凄まじく、以前よりもはるかに多くの食事を必要とするのだ。さくら自身は「体が子供に戻ったからお腹が空きやすいのかな」くらいの感覚だが、この家に十分な食料がストックされていたのも、食事量が日本にいた頃よりも遥かに増加することを見越し、リーナによって準備されたものだった。
食事を終えると食器類を片付け、寝室でブランケットを手に取るとリビングへ向かう。ソファーに座りブランケットを体に巻きつけると、これからのことを考える。
「とりあえず、結界の強化の仕方と日用品を手に入れる方法を考えないといけないよね…。それと、あの生き物の名前は何なんだろう…。動物園で見た熊やライオンなんか比べ物にならないくらい大きいとか、恐怖でしかないんだけど…。」
そこで、さくらは以前もらったメールのことを思い出す。
「そういえば、ほとんどのことがタブレットで出来る感じだったよね。スマホとウォッチを同期させただけで満足してアプリの機能をほとんど確認していなかったけど、昨日の地図アプリの感じだと他のアプリも結構イケるんじゃないかな?」
そう考えると不安もいくらか解消され、大丈夫な様な気がするから不思議である。
さくらはウォッチに収納されていたタブレットを取り出すと早速設定画面を開く。
そして、最初に疑問に思った『結界』の部分をタップし詳細を確認すると、結界はその範囲だけでなく強さも選べる様で、今の結界の強さは『強』となっていた。
「凄い便利…。でも、『強』で大丈夫なのかな~。ここ数日、何もなかったことを考えると大丈夫な様な気がするけど、不安解消のためにも強くできるなら、出来るだけ強くしておきたいなぁ。」
そう言って、さくらは強さと書かれた画面をタップすると
『結界の強度を変更できます。
□結界を強くする。
※強くすると更に多くの魔力が必要となります。必要な魔力量を維持する場合は結界の範囲が狭くなります。
□結界を弱くする。
※弱くすると必要な魔力量が減ります。魔力量を維持したままだと結界の範囲が広がります。』
さくらは、もちろん結界の強度を現状維持のままにすることにし、アプリを閉じた。
「…まぁ、現状維持でも問題は起きてないし、しばらくはこのままで良いかな…。魔力のことが分からないままだし、下手に使うと必要なときに魔力不足になるのも困るしね。ましてや結界の範囲が狭くなるなんて怖すぎるって…。」
結界の強度が心配するほどではないと感じたさくらは、タブレットのアプリの確認作業に入る。
体が温まってきたせいか、先程まで感じていた喉の痛みも無くなったようだ。
そして、さくらがアプリの確認作業に夢中になっている頃、アヴェリタ大森林の周辺が慌ただしくなっていた。
管理者より、さくらの後見として相応しいと選ばれた者たちが、大森林の中心を目指すために集結した。
…さくらが異世界人と出会うまでもう少し…
クッキーとグラスをキッチンに運び、コンロに火を入れお湯を沸かし紅茶を淹れる。冷蔵庫からスライスしてあったレモンと蜂蜜を少し垂らし、少しづつ喉に流し込む。室内温度がコントロールされた快適な環境とはいえ、ソファーでそのまま眠ってしまった体は芯から冷えており、そんな体の細胞の隅々まで暖かさが染み渡る。ホッと息をつき、強張った体を伸ばそうとグッと背伸びをするが、思うように体が伸びず痛みさえ感じるほどだ。想像以上に体はダメージを受けていたようで、昨日の疲れが完全に癒えたとは言い難かった。
「ベッドで寝なかったのは失敗だったな…」
少し痛む喉に後悔を覚える。紅茶を飲み終えると昨日出かける前に作っていたスープを温め直す。
こちらに来てから何の疑問も持たずに生活していたが、食料品だってこのままだといつかは尽きてしまうのではないかと急に不安が押し寄せる。温めたスープとティーセットをダイニングテーブルに運ぶと椅子に腰掛ける。体の小さくなったさくらには全ての家具が大きめで、ダイニングチェアも座面が高いせいで座ることにほんの少し苦労してしまうのが難点だ。
「いただきます」
スープを口に運ぶ。朝と言うには早すぎる時間に食事をすることに躊躇いが無いわけではないが、空腹には勝てない。
さくら自身は気付いていないが、結界や室内にある家電(本当は魔道具)を動かす元となる魔力を常に供給し続けているので消費エネルギーも凄まじく、以前よりもはるかに多くの食事を必要とするのだ。さくら自身は「体が子供に戻ったからお腹が空きやすいのかな」くらいの感覚だが、この家に十分な食料がストックされていたのも、食事量が日本にいた頃よりも遥かに増加することを見越し、リーナによって準備されたものだった。
食事を終えると食器類を片付け、寝室でブランケットを手に取るとリビングへ向かう。ソファーに座りブランケットを体に巻きつけると、これからのことを考える。
「とりあえず、結界の強化の仕方と日用品を手に入れる方法を考えないといけないよね…。それと、あの生き物の名前は何なんだろう…。動物園で見た熊やライオンなんか比べ物にならないくらい大きいとか、恐怖でしかないんだけど…。」
そこで、さくらは以前もらったメールのことを思い出す。
「そういえば、ほとんどのことがタブレットで出来る感じだったよね。スマホとウォッチを同期させただけで満足してアプリの機能をほとんど確認していなかったけど、昨日の地図アプリの感じだと他のアプリも結構イケるんじゃないかな?」
そう考えると不安もいくらか解消され、大丈夫な様な気がするから不思議である。
さくらはウォッチに収納されていたタブレットを取り出すと早速設定画面を開く。
そして、最初に疑問に思った『結界』の部分をタップし詳細を確認すると、結界はその範囲だけでなく強さも選べる様で、今の結界の強さは『強』となっていた。
「凄い便利…。でも、『強』で大丈夫なのかな~。ここ数日、何もなかったことを考えると大丈夫な様な気がするけど、不安解消のためにも強くできるなら、出来るだけ強くしておきたいなぁ。」
そう言って、さくらは強さと書かれた画面をタップすると
『結界の強度を変更できます。
□結界を強くする。
※強くすると更に多くの魔力が必要となります。必要な魔力量を維持する場合は結界の範囲が狭くなります。
□結界を弱くする。
※弱くすると必要な魔力量が減ります。魔力量を維持したままだと結界の範囲が広がります。』
さくらは、もちろん結界の強度を現状維持のままにすることにし、アプリを閉じた。
「…まぁ、現状維持でも問題は起きてないし、しばらくはこのままで良いかな…。魔力のことが分からないままだし、下手に使うと必要なときに魔力不足になるのも困るしね。ましてや結界の範囲が狭くなるなんて怖すぎるって…。」
結界の強度が心配するほどではないと感じたさくらは、タブレットのアプリの確認作業に入る。
体が温まってきたせいか、先程まで感じていた喉の痛みも無くなったようだ。
そして、さくらがアプリの確認作業に夢中になっている頃、アヴェリタ大森林の周辺が慌ただしくなっていた。
管理者より、さくらの後見として相応しいと選ばれた者たちが、大森林の中心を目指すために集結した。
…さくらが異世界人と出会うまでもう少し…
20
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。
あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される
さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。
慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。
だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。
「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」
そう言って真剣な瞳で求婚してきて!?
王妃も兄王子たちも立ちはだかる。
「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる