異世界人にバレたらヤバい⁉︎魔女はタブレットを愛用する(タイトル変更しました)

文字の大きさ
6 / 14

そろそろ真剣に考える時が来たようだ。

しおりを挟む
 結界の境から見た光景は、さくらの脳裏に深く刻み込まれた。

 帰りは行きよりも足を早め、夕暮れには何とか自宅に辿り着くことができた。地図アプリ様々である。

 玄関のドアをくぐると荷物を投げ出し、自分もまた倒れ込む。

 「あ゛ぁ~、怖かったよぉ~」
 
 何とも情けない声が出てしまう。恐怖と疲れから体が動かず、さくらはハラハラと涙を溢す。

 自宅へと戻る道は、後ろから何かが迫ってくる様な恐怖の中にあり、長閑に見えた景色が恐ろしい場所へと変わっていた。

 異世界に来たことを理解したつもりだったが、結局は何も理解していなかったことを突きつけられ、本当の意味で孤独を感じたのだ。

 環境は整えられてはいるが、ただそれだけなのだ。1人で生きていくためには、きっと色々と問題が出てくるだろうし、その解決の為に結界の向こうへ出なければならない時がくるだろう。今すぐにと言うわけではないが、そう遠くない未来には覚悟を決めなくてはならない気がする。

 ぼーっと天井を見つめる。思考は停止状態で、ただ涙が溢れてくる。

 突然、何の前触れのないまま飛ばされた世界に1人。今朝までの彼女は、ここが異世界だと分かったつもりで、それでも与えられたものが日本にいる頃と差異がなかったために、この世界を純粋に楽しめば良いだけだと軽く考えていた。

 しかし、あの生物を見た途端、さくらは一気に現実を見たのだ。


 いつまでもこうしてはいられないと、涙を袖口で拭うと重い身体を起こし浴室へ向かう。

 ありがたいことに浴槽には常に湯が張られている。髪や体を洗うと浴槽に体を沈め、ホッと息を吐く。

 森を歩き続けた足を軽く揉み解す。子どもの体になって疲れにくいとは言ったものの、慣れない自然の中を歩けば足も浮腫んで痛みを感じるほどぼろぼろだった。

 「…はぁ…、とりあえず今から何をしたら良いか、きちんと考えないと…。まずは結界の強度がどれくらいか知りたいかな…。それにこの世界の常識も知っておかないと後々困ることになるだろうし…。何より、私がここに呼ばれていることの存在意義が何なのかだよね…」

 この世界の管理者は、私に『特別な使命はなく、ただ存在するだけで良い』のだと言っていたが、果たしてそんなことが可能だろうか。この世界にも人類、文明が存在するはずで、その均衡を保つために私が存在するなら、必ず接触をしてくる者が現れるだろう。
 
 今まで無視してきたことだが、何か決定的なことが起こる前に考えておいた方が良いことだけは確かだ。

 さくらは浴室から出ると、お気に入りの部屋着に着替えてキッチンへ向かう。この家の中は日本と変わらない。キッチンには十分な食料が詰まった冷蔵庫もレンジもコンロもあるし、キッチン横のパントリーにも冷蔵庫に入りきらない保存のきく野菜類や食品がぎっしりと蓄えられている。冷蔵庫から冷やしておいたハーブティーを取り出し、元の持ち主であるリーナが準備したのであろうレトロな雰囲気のある切子のグラスに注ぐと一気に飲み干す。時間は午後6時を指そうとしていた。そろそろ夕食の時間だが想像以上の疲労に食欲が沸かない。再びグラスにハーブティーを注ぎ、少しのクッキーを手にリビングへと移動する。センターテーブルにグラスとクッキーを乗せた皿を置くと、ソファーに体を沈める。

 柔らかく沈み込むソファーは、さくらの意識を一瞬で奪い取り、眠りへと誘い込む。彼女は抵抗することなく眠りに落ちる。

 「……明日から…いろいろ考えよ…」

 考えることは山積しているが、今はもう体を休めたかった。

 この日、さくらは夢を見ることも無いほど、深い眠りに落ちるのだった。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...