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都合が良すぎない?
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「うー、どうしよぉ…。
はぁ、薬草採取は次の機会にして、真っ直ぐ歩けば良かったかなぁ」
さくらは決して方向音痴ではない。と、思っていたが、それは街中での話。
目印も何もない森の中では、知識や経験がなければ生き抜くことは困難だ。もちろん、ただ真っ直ぐ歩くことでさえ出来ないだろう。ましてやここは異世界。この森は結界で守られているから危険生物に遭遇することはないが、この結界から出てしまえば話は別である。
よくよく考えたら、どうして結界の境目まで見てみようなどと考えたのか。
家の中には充分な食べ物もあるし、娯楽として使えるタブレットだってある。しばらくは、のんびりだらだらと生活していても何ら問題はないのだ。にも拘らず、大した準備もせずに森の中に出ていくなど、自分の軽率さに嫌気がさすが、今は帰る方法をなんとか見つけるしかない。
腕時計時間を確認すると、丁度、正午を指すところだった。
「お昼かぁ~。お腹が空くわけだよ。……まぁ今更、慌てたところで早々に解決方法が見つかる訳でもないし、ご飯を食べながら考えようかな」
さくらはそう独り言を呟き、収納から少し厚みのあるマットと出かける前に作ったサンドウィッチや飲み物を取り出す。マットは誰も使っていない部屋のクローゼットから出てきたものだ。レジャーシートの様に薄手で運びやすいとは言い難いが、さくらは収納ができるので重さや大きさを気にする必要はないし、こんな森の中では地面も均しているはずもないのだから、多少は厚みがないと体が辛い。
マットに腰を下ろし、早速サンドウィッチを頬張る。
「うん、おいしい。」
陽が高いせいか、森の中であっても適度に明るく、時折り抜ける風が心地よい。
こんな非常事態だからこそ空腹は避けなくてはならないことを、さくらは経験から学んでいた。脳が正常に働くなり、的確な判断が出来なくなる。食事は大切だ。それなら美味しく食べたい。側からは能天気に見えるかもしれないが、日々の糧に感謝を示すには、やっぱり美味しくいただくことだし、何よりも体に良い気がするのだ。
サンドウィッチを食べ終え、水筒からハーブティーをカップに注ぐ。温かい…。ホッと息をつき、これからのことを思案する。
「家からは、そう離れていないとは思うんだよね~」
スマホを取り出し、マットに寝転ぶ。少し寝心地は悪いが、疲れた体を回復させるには問題ない程度である。
ゴロゴロしながらスマホの大量のアプリを見ていく。
「役立ちそうなのあるかなぁ。」
さくらは、とりあえず「面白そう!」「便利そう!」と思ったら、片っ端からアプリをダウンロードするタイプで、入れてはみたものの使ったことのないものもかなりの数あるため、「これ何のアプリ?」と首を傾げることも少なくない。その上、アプリの整理が出来ておらず、それが何系のアプリかも予想できない。
何となく役立ちそうなアプリを開いていく。
「ゲームに料理…。おっ!ナビゲーションアプリと地図アプリがある!……でもなぁ、システムの仕組みを考えたら使えないような気がするけど…」
無理は承知でアプリを起動する。
「……やっばい……、使えるんですけど…」
地図には自分のいる現在地が青、自宅が赤に点滅していた。
「いやいや、設定が無茶苦茶ですよ?それとも、こっちの世界でも常識なの?」
試しに、ナビゲーションアプリも使ってみることにした。出発点を現在地、目的地を自宅に設定する。こちらもやはり問題なく使えるようだ。
「何だかなぁ~。ありがたいけど、ありがたいけど腑に落ちない…。」
さくらは、のっそりと体を起こす。
「地図から計算すると、足元の悪さを考えても10分も歩けば家に帰れそうなんだよなぁ。どれだけ薬草採取してたんだか…。直線距離だと家から結界まで500メートル、だいたい大人の足で10分弱の距離だから、ここから結界まで、そんなに時間はかからないはず…。200メートルあるかないかだとすると、寄り道さえしなければ5分くらい?……だとすれば、行くしかないよね。また出直すとか面倒だし」
そうと決まれば次の行動までは早い。マットなどを収納にしまうと、グッと背伸びをし、気合いをいれて足を踏み出す。
とりあえず、早く目的を果たしたい!
さくらは黙々と歩いた。森の中で真っ直ぐ進める訳もなく、倒木を避けたり、小川の浅い所を探して渡ったりと、何とか結界まで辿りついた時には1時間も経っていた。
結界の境は、薄い膜のような物で隔てられており、さくらにもその存在がはっきりと目に見えた。
そして、さくらは結界の先にある世界を見て恐怖した。
見た事もない巨大で凶悪であろう生物がそこにいた。
結界がなければ、あっと言う間に襲われていたに違いない。
さくらは、初めて異世界に来たことを実感したのだった。
はぁ、薬草採取は次の機会にして、真っ直ぐ歩けば良かったかなぁ」
さくらは決して方向音痴ではない。と、思っていたが、それは街中での話。
目印も何もない森の中では、知識や経験がなければ生き抜くことは困難だ。もちろん、ただ真っ直ぐ歩くことでさえ出来ないだろう。ましてやここは異世界。この森は結界で守られているから危険生物に遭遇することはないが、この結界から出てしまえば話は別である。
よくよく考えたら、どうして結界の境目まで見てみようなどと考えたのか。
家の中には充分な食べ物もあるし、娯楽として使えるタブレットだってある。しばらくは、のんびりだらだらと生活していても何ら問題はないのだ。にも拘らず、大した準備もせずに森の中に出ていくなど、自分の軽率さに嫌気がさすが、今は帰る方法をなんとか見つけるしかない。
腕時計時間を確認すると、丁度、正午を指すところだった。
「お昼かぁ~。お腹が空くわけだよ。……まぁ今更、慌てたところで早々に解決方法が見つかる訳でもないし、ご飯を食べながら考えようかな」
さくらはそう独り言を呟き、収納から少し厚みのあるマットと出かける前に作ったサンドウィッチや飲み物を取り出す。マットは誰も使っていない部屋のクローゼットから出てきたものだ。レジャーシートの様に薄手で運びやすいとは言い難いが、さくらは収納ができるので重さや大きさを気にする必要はないし、こんな森の中では地面も均しているはずもないのだから、多少は厚みがないと体が辛い。
マットに腰を下ろし、早速サンドウィッチを頬張る。
「うん、おいしい。」
陽が高いせいか、森の中であっても適度に明るく、時折り抜ける風が心地よい。
こんな非常事態だからこそ空腹は避けなくてはならないことを、さくらは経験から学んでいた。脳が正常に働くなり、的確な判断が出来なくなる。食事は大切だ。それなら美味しく食べたい。側からは能天気に見えるかもしれないが、日々の糧に感謝を示すには、やっぱり美味しくいただくことだし、何よりも体に良い気がするのだ。
サンドウィッチを食べ終え、水筒からハーブティーをカップに注ぐ。温かい…。ホッと息をつき、これからのことを思案する。
「家からは、そう離れていないとは思うんだよね~」
スマホを取り出し、マットに寝転ぶ。少し寝心地は悪いが、疲れた体を回復させるには問題ない程度である。
ゴロゴロしながらスマホの大量のアプリを見ていく。
「役立ちそうなのあるかなぁ。」
さくらは、とりあえず「面白そう!」「便利そう!」と思ったら、片っ端からアプリをダウンロードするタイプで、入れてはみたものの使ったことのないものもかなりの数あるため、「これ何のアプリ?」と首を傾げることも少なくない。その上、アプリの整理が出来ておらず、それが何系のアプリかも予想できない。
何となく役立ちそうなアプリを開いていく。
「ゲームに料理…。おっ!ナビゲーションアプリと地図アプリがある!……でもなぁ、システムの仕組みを考えたら使えないような気がするけど…」
無理は承知でアプリを起動する。
「……やっばい……、使えるんですけど…」
地図には自分のいる現在地が青、自宅が赤に点滅していた。
「いやいや、設定が無茶苦茶ですよ?それとも、こっちの世界でも常識なの?」
試しに、ナビゲーションアプリも使ってみることにした。出発点を現在地、目的地を自宅に設定する。こちらもやはり問題なく使えるようだ。
「何だかなぁ~。ありがたいけど、ありがたいけど腑に落ちない…。」
さくらは、のっそりと体を起こす。
「地図から計算すると、足元の悪さを考えても10分も歩けば家に帰れそうなんだよなぁ。どれだけ薬草採取してたんだか…。直線距離だと家から結界まで500メートル、だいたい大人の足で10分弱の距離だから、ここから結界まで、そんなに時間はかからないはず…。200メートルあるかないかだとすると、寄り道さえしなければ5分くらい?……だとすれば、行くしかないよね。また出直すとか面倒だし」
そうと決まれば次の行動までは早い。マットなどを収納にしまうと、グッと背伸びをし、気合いをいれて足を踏み出す。
とりあえず、早く目的を果たしたい!
さくらは黙々と歩いた。森の中で真っ直ぐ進める訳もなく、倒木を避けたり、小川の浅い所を探して渡ったりと、何とか結界まで辿りついた時には1時間も経っていた。
結界の境は、薄い膜のような物で隔てられており、さくらにもその存在がはっきりと目に見えた。
そして、さくらは結界の先にある世界を見て恐怖した。
見た事もない巨大で凶悪であろう生物がそこにいた。
結界がなければ、あっと言う間に襲われていたに違いない。
さくらは、初めて異世界に来たことを実感したのだった。
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