ぽっちゃり?令嬢は可愛がられる

紫乃

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賢君フェンディ・アポロディアス・フローレス国王の嘆き

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舞踏会前日。

賢君と呼ばれ穏やかな治世を敷くフェンディ・アポロディアス・フローレス国王は沈痛な面持ちで、
歴代の王に伝わる執務室の椅子に腰掛け、嘆いていた。

やってしまった。姉上は怒るだろうな。
静かに怒るのだ。どんなお仕置きを受けるか。

幼い頃から刷り込まれた姉の怖さを思うとやってしまったこととはいえ後悔しかない。







数年前悪魔の手を取って契約してしまった。
だってしょうがなかったのだ。
我が国の北方にある帝国がこちらに手を出そうとしていた。自分の力だけではどうにもならなかった。
姉上を頼ろうかとも思ったのだ。しかし、姉は女神の見た目をした大魔王だ。恩を受けてしまったらどのような無茶な代償を求められるか。

そう思ったら躊躇してしまう。
そんな時天の助けならぬ悪魔の甘言が響いた。
お母様の代わりに私が叔父上を助けて差し上げましょうか?と。

大事なことなので、持ち帰って大臣達と検討しますとちゃんと言ったのだ。


けど、母親譲りの強い力で押さえ込まれてしまった。
玉座の上に座ったまま動けなくされて、
悪魔は囁くのだ。去年の夏はこの国は涼しくて過ごしやすかったですね、と。
我が国より北方の帝国は冷夏と長雨で小麦の育ちが悪かったとか。可哀想に飢えた民を抑えきれない帝国はこちらの豊かな土地と蓄えられた小麦や米が欲しくてしょうがないみたい。

向こうの国の人々は気が荒いわ。それに飢えて子どもが死んでいく冬を迎える前にやってくるでしょうね。

ブランシェットはこの国の最南端。
関係のないことだけど、叔父上と帝国の民はとっても可哀想。助けてあげたいわと思って田舎からわざわざやってきて差し上げたの。

どうされますか?お母様に頼りますの?それならお母様に私の口からお願いしてもよろしいのですけれど。
と微笑む。

前門の悪魔、後門の大魔王。
大魔王に頼るか、その娘の悪魔に頼るか天秤は悪魔に傾いた。


それから数年。時折無茶なお願いをしに可愛い姪は私を訪ねて王宮までやってくるのだ。


そもそも姉は狡いのだ。王族は月の女神と太陽神の血を引き、神の力ともいうべき膨大な力を持っている。その中でも姉は歴代最強の力を持ち、口にしただけで相手を操ってしまったりすらする。炎などの事象に魔力を変換させることは魔力を持つものは皆できるが多すぎる魔力自体を具現化するなんて聞いたこともない。できることの全てを知っているわけではないが、魔力を使って様々なことを成し遂げてきたことは知っている。
この姪は姉の全てを引き継いだ。本当に帝国を引き止めることができるのだろう。

お願いしますと。王として告げるしかなかった。





賢君フェンディ王は明日の舞踏会が怖くて仕方がなかった。むしろ中止にしてしまいたいと思うくらいに。
姉オリアーナが溺愛する姪レイラが社交界デビューする。

息子である王子は昔は私の跡を継いで王になるのだと素直な子だったが、歳を重ねるごとに瞳は曇りアウラと比べて劣等感に苛まれているようだったのだ。
その瞳に光が戻ったと思ったら、レイラを妻にしたいいうのだ。

姉が王家にレイラを渡すわけがない。諦めなさいと何度も何度も言ったのだ。
絶対にお勧めはしないし、祝福も応援もしないが、どうしてもブランシェット家の娘がいいのなら、長女アウラにしておきなさいとも伝えた。

しかし、息子はどうしてもレイラがいいのです。
と譲らない。その目には覚悟と共に瞳の奥に焔が浮かぶ。

自分も王族だから分かるが、息子は神の血が強すぎる。規格外の親娘を除けば息子は最強の王だったのだろう。強い力の代償である愛する者への執着が強すぎる。

月の女神も太陽神も慈悲深くも何ともないのだ。
月の女神は自己愛が強くてわがままで性格が悪い。
太陽神は愛する者への執着。

周りからしたらなんともはた迷惑な2人の力と性格を王族は引き継ぐ。

息子はレイラを愛する者として認識してしまった。死んでも離れようとはしないだろう。
レイラが住むのは魔王城だ。大魔王率いる悪魔達に守られている。あそこの守りは王城より固い。
なんとかお前が無事で済んでいるのは恐らくブランシェット家の唯一の良心である辺境伯の取り成しのおかげだぞとも伝えたが、

それでも自分はレイラが自分の腕の中以外で生きることは許せないのだという息子を止めることはできなかった。


先々月姉への招待状を泣く泣く書いた。
先週姪への招待状も泣く泣く書いた。


フェンディ王の嘆きは深い。


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